ビジネスを加速させるワークスタイル(第15回)
似ているようで違う、法人向け光回線の選び方
公開日:2018.04.09
インターネット経由でさまざまな食材を首都圏の飲食店に販売する八面六臂(東京・中央)。「料理人向けのEC」というモデルで資金調達に成功し、一時は社員数が50人を超えるまでに急拡大した。しかし急拡大により、食材流通の現場に立たず、本社で現場をよく理解せずに仕事をする社員が急増して問題が続出。松田雅也社長はどうやって組織を立て直したのか、その経緯を聞いた(聞き手は、デロイト トーマツ ベンチャーサポート事業統括本部長、斎藤祐馬氏)。
斎藤: ベンチャーキャピタルなどから、5億円近い資金調達を実現したものの、その資金の使い方がまずかったと。今振り返るとどこに問題があったのですか。
松田:調達した資金で集めた人材の多くは活躍してくれるどころか、結局何もできなかった。そもそも食品流通という仕事の現場にあまり興味がなく、数字を見てビジネスを考えるばかりで現場に一切行こうとしないのです。お客さまに会って話を聞くわけでもありません。
また、我々の仕事は午前2時まで注文を受けますから、深夜勤務があることはやむを得ない面があります。注文を受けるため社員は午前2時まで待機しなければなりません。午前2時になると次はバイヤーチームが出勤し、買い付けを行う。一般の社員やアルバイトも朝6時出社で、商品のピッキングや梱包をスピーディーに行わなければなりません。そうしないと、午後3時までにお客さまへの配送が終わらないからです。
斎藤:食品流通を変えるという使命感がないと、そうした出勤時間を続けるのは大変ですね。
松田:そうなんです。だんだん会社に対して不満を持つ社員が増えてきて、会社全体が変な方向に曲がり出しました。あるとき、午前2時という締め切り時間をわずか10秒ほど過ぎた時に注文が入ったのですが、そのときの担当者が、もう締め切りを過ぎていると判断して注文を断ってしまったのです。それは創業当時から支えてもらっている大得意先からの注文でした。
慌てて謝りにいくと、「こんな仕事をしていたら会社をつぶすことになるぞ」と言われました。その言葉を聞いて「うちはなんてダメな会社になってしまったのか」とハッキリ分かったのです。
斎藤:会社を建て直すために、どんな手を打ったのですか。
松田:役職にかかわらず全員を、鮮魚などを扱う現場にも行かせることにしたのです。その時点で、現場を嫌う者は次々と辞めていきました。
大事なお客さまを怒らせてしまったようなミスが起きないよう、受注のプロセスを徹底して見直しました。その上で、より少ない人数で受注作業ができるように不要なプロセスの排除も進め、その分、素早い配送や品ぞろえの充実のために人材を振り向けるようにしました。
同時に、受注システムも全面的に見直しました。実際の現場を見ずにエンジニアが頭の中で組み立てていたシステムを改め、食材の受注から倉庫でのピッキング、物流まですべてのシステムをゼロから作り直しました。これで、責任者を含めて従来のエンジニアは全員が辞めました。
斎藤:どのようなシステムになったのですか。
松田:先ほど申し上げたように、属人的な部分を極力取り除き、誰がやってもミスをしないような仕組みに作り替えたのです。例えば、紙の伝票を基に計量していたときは、伝票の見間違いで注文と違う計量をしてしまうミスがありましたが、伝票を電子化することで伝票の数字と計量結果が違うときは警告を出すといった仕組みを用意しました。
また、ドライバーも勤務態度がよくない人には辞めてもらい、配送完了時には必ず報告するなど、手順を明確にして作業ミスを減らすことを徹底しました。もちろん本社も現在の場所に引っ越し、物流倉庫の一角をオフィスにしています。
こうして、社員数は大幅に減り、正社員が12人だけになりました。あとはアルバイトとドライバーが30~40人ほどです。かなり身軽になって組織は筋肉質になりましたね。販売管理費は従来の3分の1以下になりました。
\ かんたん入力で登録完了 /
斎藤 祐馬
トーマツ ベンチャーサポート事業統括本部長 1983年愛媛県生まれ。慶應義塾大学を卒業後、2006年にトーマツに入社。2010年にトーマツ ベンチャーサポートを事実上立ち上げた。公認会計士でもある。
※トーマツ ベンチャーサポートは、2017年9月1日より「デロイト トーマツ ベンチャーサポート」に社名変更しました。
【T】
注目を集める地方発のベンチャー