何ごとも自分の価値観で評価するのがゆとり世代です。この場合も、どこと比べて具体的にどのくらい給料が安いのか、客観的な数字に基づいて言っているわけではありません。「自分が思うに、安いはずだ」「もっともらっていいはずだ」という気持ちを口にしているだけです。
たいていの場合は、「自分はこれだけ会社のために頑張っているのに……」という気持ちがあっても、「会社が自分のためにこれだけのことをしてくれている」という気持ちがありません。
実際には、オフィス環境を整えることをはじめ、仮に仕事に失敗しても叱られこそすれ、クビになったりしない寛容さや、何度でもやり直しがきくなど、組織が社員を守っています。しかしゆとり世代には、こうした周囲からの恩恵は「してもらって当たり前のことで、感謝するようなことではない」という思考があります。
まずは、新入社員の頃から、会社がどれだけの経営資源をかけて一人前に育て、仕事をする環境を与えてきたかを理解させましょう。
また、「周囲からどう見られているかが大切」という意識を持たせたいところです。「周りの人が『君の給料は(働きぶりからしたら)安いね』と言ってくれたら本当に評価されていることなんだよ」と。
給料の高い安いは自分が決めることではなく、周囲が認めてくれて初めて決まるものだという価値観を持たせましょう。
【対処法のポイント】
周りから評価されて初めて、給料の高い安いは決まる。
Q 「上司から目の敵にされています」。先日、新人のフォローアップ研修があり、そこでうちの部の新入社員が人事部にこう訴えたそうです。鍛えれば伸びる、と目をかけてきたつもりなのですが……。
A 「叱られる」ことに慣れていないため、「嫌われている」と思っています。期待しているから指導していることを伝えましょう。
自分では部下を鍛えているつもりなのに、部下からは「嫌われているに違いない」と思われてしまう。こうした気持ちのすれ違いは、ゆとり世代の部下との間ではとても起きやすいことです。
それはまず、「叱られる」ことに慣れていないからです。「褒めて伸ばす」教育の弊害かもしれません。叱られたり、自分の悪いところを指摘されたりすることに対する免疫力が低いため、「そんなことを言うのは、きっと僕が嫌いだからだ」と考えてしまうのです。本当に嫌いなら、教えたり、叱ったりすらしなくなるはずなのですが、そこまでは思い至りません。
ましてや「お前は同期の○○と比べて、××が足りんなぁ」などと相対評価をしたら、そのときの落ち込みようは尋常ではありません。「この上司は○○のことが好きで、僕のことは嫌いなんだ」と思ってしまいます。指摘された悪いところを反省するよりも、周囲に責任や原因を押し付けることのほうが得意だからです。そして、その上司の下では、あからさまにふて腐れた態度が表に出てきます。
「叱ることは期待の裏返しなんだ」「育てたいという愛情があるから叱るんだ」「叱られて腐っていたら、成長しないから自分が損だ」など。
直接伝えるには気恥ずかしいセリフばかりですが、こうしたことを教えていかなければなりません。自分以外の先輩社員をうまく利用して伝えるなど、叱ることの意味を考えるように、ゆとり世代を誘導してください。
【対処法のポイント】
「叱られるのは期待されているから」という気持ちを持たせる。
日経トップリーダー/柘植智幸(じんざい社)