ゆとり世代の叱り方・教え方を具体的なケースで学ぶ連載の第11回。飲みの席で場を読まずに最初からウーロン茶を頼む、派手な服装や髪形を個性と主張する場合の対処法です。
あなたが「最初はみんなお酒で乾杯し、飲めないなら口を付ける程度でいい」と思っていても、「何でそんな無駄なことをしなければならないんですか?」と反論するのがゆとり世代です。
まず、「自分だけのこと」を優先しても許される絶対評価で育ったことがそうした思考につながっています。良くいえば「自分のことは自分で決める」性格です。次に、周囲との関係を気にしませんから、自分が特別な行動を取ることで、同僚や上司からどう思われるかに気付いていません。場の空気を乱しているという認識がないのです。これが職場の仲間内だけならいいのですが、取引先との会合の席でも、同じように振る舞ってしまうから問題です。
仕事上の付き合いには、理屈では割り切れない「大人の付き合い方」があり、それが場の雰囲気を和やかに保つという面があります。こうした、集団の中での立ち振る舞い方をまず教えましょう。
また、職場の飲み会なら上司に、取引先との会合なら取引先の担当者にと、その場その場の雰囲気を決定する立場の人の嗜好にある程度は合わせることも必要になります。
「お酒が飲めないからウーロン茶を」というのは極めて正論ですが、それで気分を害する、理不尽な取引先もいます。「だから、最初くらいは相手の意向に合わせて、ビールにちょっとだけ口を付ければいい」と説明すれば、ゆとり世代も納得します。もともと、自分で決めることが当たり前なだけで、「ウーロン茶」にこだわっているわけではないからです。
●まとめ
場の雰囲気を乱さないことが大切。
Q 新人の服装や髪形が派手なので、直すよう注意しました。すると「おしゃれって個性ですよね」と言い張り、改める雰囲気がありません。取引先は製造業ばかりなので、どちらかといえば地味にしてほしいのですが……。
A 自己満足に過ぎません。自分の印象は自分で決めるのではなく、お客様が決めることだと認識させましょう。
音楽業界やファッション業界のように、茶髪にピアスといった派手目のファッションでもOKの場合もあるでしょう。しかし、派手さを好まない業界もあります。
確かに、学生時代までは「おしゃれは個性」で何の問題もなかったのでしょう。しかし、ビジネスにおけるマナーは一体誰が決めるのかと考えた場合、それは会社や上司ではなく、ましてや自分自身でもありません。お客様が決めるのです。
取引先企業や協力会社をはじめ、お客様が好むマナーに正しく従うことが、社会人の基本です。お客様が何を求めているかによってマナーが決まります。いくら自分が「派手ではない。普通」と思っていても、お客様からダメ出しされたら、それは普通ではありません。逆に、ファッション店の店員が地味なスーツ姿だったらそれも不自然です。
職場における服装は、ファッションの表現の場ではありません。表現は休日にすればいいのです。ゆとり世代が派手な服装や髪形をするのは、人に見てもらいたいからではなく、どちらかといえば自己満足です。「人からどう見られるか」という思考が希薄なゆとり世代だからです。
大切なのは、お客様に好感の持たれる服装・髪形かどうかを意識することだと理解させましょう。
●まとめ
自己満足から、お客様満足へ意識を変えさせよう。
日経トップリーダー/柘植智幸(じんざい社)