ビジネスを加速させるワークスタイル(第15回)
似ているようで違う、法人向け光回線の選び方
公開日:2019.03.27
2018年12月21日、2019年度の税制改正の大綱が閣議決定されました。その目玉の1つが中小企業の事業承継に関する円滑化対策です。具体的には「個人版事業承継税制」の創設が盛り込まれたのです。その具体化のために財務省は2019年2月5日、個人事業者の事業承継税制の法律案を国会へ提出しました。
法律案が可決されれば、2018年の税制改正により拡充された法人版事業承継税制の特例制度と同様に10年間限定ですが、個人事業者の事業用資産にかかる贈与税または相続税の全額が納税猶予されることとなります。納税猶予とは、一定の要件を充足する場合において、本来納付すべき贈与税または相続税の納付を猶予されるものです。
現在、政府は中小企業の廃業増加に非常に危機感を持っています。その対策として、平成30年の税制改正において、以前からあった法人版事業承継税制を拡充する特例措置を創設しました。これによって、前年まで年間400件程度だった認定申請が年間4000件に迫る件数になりました。このように効果が上がったことから、2019年度税制改正では、その適用範囲を個人事業者に広げることにしたのです。今回は、この個人版事業者版事業承継税制の概要について説明します。
個人版事業者版事業承継税制は、2019年1月1日から2028年12月31の間に贈与または相続により個人事業者の事業用資産の全てを取得した事業承継者が、担保の提供を条件に、その者の事業用資産にかかる贈与税または相続税の全額を納税猶予することで事業承継を支援するものです。
現行制度には、個人事業者の事業承継を支援するものとして、事業用小規模宅地等の特例措置があります。これは、相続により事業用の宅地等を取得した事業承継者の相続税の負担を軽減する制度です。
新しく創設される個人版事業者版事業承継税制は、土地以外の事業用資産も対象とされています。また、生前贈与などにより事業用資産を取得した事業承継者の贈与税も納税猶予制度の対象とされます。この対象資産の範囲の拡充と贈与による承継も適用対象となったことが、個人事業者の事業承継を大きく支援しているところです(「事業用小規模宅地等の特例措置」との併用はできず、どちらかを選択する必要があります)
贈与税・相続税の納税猶予制度の対象となる事業用資産とは、贈与者または被相続人の青色決算書の貸借対照表に記載されている事業に使用された資産のことで、次のものをいいます。
・ 土地(面積400平方メートルまでの部分)
・ 建物(床面積800平方メートルまでの部分)
・ 固定資産税の対象となっている減価償却資産
・ 自動車税または軽自動車税の課税対象となっている営業用の車両等
・ 上記に準ずる減価償却資産で財務省令で定めるもの
この個人版事業者の事業承継税制の法律案が可決すれば、工作機械や診療機器、乳牛や果樹、無形固定資産である特許権などの多種多様な事業用資産が対象となるのです。宅地等以外の事業資産を多く有する個人事業者にとって、円滑な事業承継を支援するものと期待されています。
ただ今回、不動産貸付業は適用対象から外されていますから注意しましょう。
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執筆=山岡 美葉
税理士、株式会社アールテロワール代表(https://rody-t.jp/)。
会計事務所勤務を経て2018年1月に税理士登録。現在、千代田区平河町にて開業し、法人税・資産税を中心に税理士業務に取り組んでいる。
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