新型コロナウイルスの感染拡大が企業経営に悪影響を及ぼしています。中でも「借入金の返済が危ない」「日々の運転資金が底を突きそう」「手形や買掛金の決済日が不安」など、資金繰りに悩む経営者は少なくないでしょう。追加で借り入れをすれば一時的に資金繰りは楽になるかもしれませんが、利息の支払いが増えることで、将来的には資金繰りがより苦しくなる可能性があります。
本当に資金繰りに苦しんでいる場合、まず借入先である金融機関などに相談し、リスケジュールを打診してみる手があります。今回は、リスケジュールのメリット・デメリットのほか、リスケジュールを行うための大まかなフローを紹介します。
リスケジュールのメリット・デメリット
リスケジュールとは、資金繰りに困っているときに、借入金の利息額を減額してもらったり、返済を一定期間猶予してもらったりするなど、借入金の返済の諸条件を見直すことをいいます。一般的に「リスケ」と略して呼ばれています。
リスケは返済条件を変更してもらうだけなので、直接的に財務状態が改善されるわけではありません。しかし、それによって資金繰りが改善される点は大きなメリットです。例えば、毎月10万円の返済をしている企業が、1年間返済を猶予してもらった場合、10万円×12カ月=120万円の支払いがなくなったと考えることができ、そのお金を他の用途に回すことができます。
また、担保の差し押さえなどが回避できるのもリスケのメリットの1つです。借り入れの返済が延滞すれば、金融機関によっては担保の差し押さえや、競売などの対応を行う可能性があるからです。
では、リスケのデメリットにはどのようなものがあるでしょう。まず挙げられるのは、リスケ後の返済条件での返済が終わるまでは、追加融資を受けにくくなる点です。また、リスケの条件として、早急な経営改善が求められ、思い切った経営改革が必要になることもあります。場合によっては、役員報酬の削減や従業員のリストラを行うことが、金融機関がリスケを承諾する条件になることもあり得ます。
リスケをしていることが取引先や他の金融機関に知られると、信用が低下する可能性があります。例えば取引先の場合、代金支払いが遅れることを懸念して、取引停止を通告されてしまうこともあり得ます。さらに従業員に知られた場合でも、倒産を危惧して、必要な人材に退社されてしまうことが考えられます。こうしたメリットとデメリットを十分に理解したうえで、リスケを検討しましょう。
実際にリスケジュールを行う際の流れ…
リスケジュールを申請する際、最初に行うべきことは「経営改善計画書」の作成です。経営改善計画書とは、その名のとおり経営改善のための計画を、具体的な数値で示した書類のことで、リスケを申し込む際に最も重要な書類といえます。経営改善計画書は、リスケの実行により資金繰りが改善し、一定期間経過後は問題なく返済することができる、という説得力のある内容にしなければなりません。
経営改善計画が独りよがりの実現不可能な机上の空論では金融機関を説得できません。税理士などの第三者のサポートを受けて、客観的にも納得できる計画を作成することをお勧めします。
経営改善計画書が作成できたら、金融機関との交渉をします。リスケはあくまでも、金融機関への「お願い」です。それを受け入れてもらうには、以下のような内容を経営改善計画書や補足資料に盛り込むことが重要です。
・資金繰りの悪化の理由(あくまで一時的な資金繰りの悪化であることを説明)
・リスケ後の返済条件は十分守れること
・役員報酬の削減や遊休資産の売却といった資金繰り改善策はすべて行っていること
・リスケ以外のキャッシュフロー改善の具体的な計画(不良在庫の処分など)
上記内容について、分かりやすく説明することが大切です。「一時的にリスケをすることで、将来にわたって融資額の回収はより確実になる」ということが伝わるようにしましょう。
新型コロナ特例リスケジュール計画策定支援なども
各都道府県に設置された中小企業再生支援協議会では、2020年4月1日、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた中小企業の資金繰りを支援するために、「新型コロナウイルス感染症特例リスケジュール実施要領」を制定しました。
要領に盛り込まれた、既往債務の負担軽減支援は2つ。1つは新型コロナウイルス感染症の影響を受け、既往債務の支払いに悩む中小企業のために、協議会が中小企業に代わり、一括して元金返済猶予の要請を実施することです。具体的には、1年間の新型コロナウイルス感染症特例リスケジュール計画を創設し、中小企業の既往債務の負担軽減を行います。
もう1つは、新型コロナウイルス感染症特例リスケジュール計画において、中小企業が金融機関と作成する1年間の資金繰り計画策定を、協議会が支援することです。政府からの配慮要請や資金繰り支援策はあるものの、つなぎ融資のための金融機関調整が難しい中小企業のために、協議会が代わりに金融機関調整を行い、政府系金融機関および民間金融機関からのニューマネーの調達を後押ししてくれます。
このような支援があるのですから、新型コロナウイルス感染拡大によって資金繰りに悩む経営者は、まずは中小企業再生支援協議会に相談してみるといいでしょう。
中小企業がリスケを申し込む際には、経営者自ら金融機関を回り、お願いすることが不可欠です。リスケに成功した後も、経営改善に全力で取り組み、経営を再建しなければなりません。こうした仕事は、相当なストレスとなる可能性がありますが、健康に注意して取り組んで、少しでも早く正常な経営状態にも戻すように力を尽くしましょう。
※掲載している情報は、記事執筆時点(2020年12月3日)のものです。