税理士が語る、経営者が知るべき経理・総務のツボ(第87回)電帳法 新たな猶予措置の“適用要件”に注意

経営全般 資金・経費

公開日:2023.09.05

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 電子帳簿保存法(電帳法)の負担軽減措置として2021年1月から“宥恕措置(ゆうじょそち)”が適用されていますが、2023年12月末で期限切れとなります。そのため、令和5年度税制改正で、小規模事業者向けの負担軽減措置として新たに「猶予措置」が設けられました。

 この新たな猶予措置を適用できるのは、システム対応等が間に合わないなど「相当の理由」がある事業者とされていますが、国税庁は6月23日、電帳法取扱通達を一部改正し、「相当の理由」の意義などについて公表しました。「相当の理由」についてはこれまで、「どこまでが該当するのか分からない」という事業者の声も多かったため、国税当局が公開したものです。

新たな猶予措置は紙だけではNG

 新たな猶予措置について、現在の宥恕措置同様に「紙での保存」でもOKと誤解をしている人も少なくありません。2022年12月末までの宥恕措置に関しては、電子データを保存できない「やむを得ない理由」がある場合には、所轄税務署長に届け出するだけで、「紙での保存も構わない」とされてきました。しかし、令和5年度税制改正において創設される新たな猶予措置については、「電子取引」に関しては「電子データ」での保存が基本とされ、システム対応が間に合わないなど「相当の理由」がある場合に「新たな猶予措置」の適用を受けられるとしました(下図参照)。

 この点、改正された電帳法取扱通達には「この新たな猶予措置について、出力書面の保存をもって事実上その電磁的記録の保存をしているものと取り扱うとされていた従前の宥恕措置とは異なり、その適用を受ける場合には、電磁的記録自体を保存するとともに、その電磁的記録及びその出力書面について提示又は提出の求めに応じることができるようにしている必要があることを念のため明らかにしている」と示しています。

 つまり、新たな猶予措置の要件は、

・税務署長が「相当の理由がある」と認める場合(手続き不用)

・税務調査の際などにダウンロードの求めに応じることができる

・税務調査の際などに電子データを出力した書面(整然とした形式および明瞭な状態で出力されたものに限る)を提示・提出できる

の3つを満たしていることになります。

 さらに、令和5年度税制改正では、この新たな猶予措置について、「期間を区切らない」としており、恒久的な措置としました。

 こう見ていくと、国はまず「紙の保存」からの脱却を最優先と考え、中小企業や個人事業者においても、無理のないように電子データでの保存を推し進めていくものと推察されます。

「相当の理由」について…

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