税理士が語る、経営者が知るべき経理・総務のツボ(第90回)消費税の「課税」「非課税」「不課税」判断ポイント

業務課題 経営全般 資金・経費

公開日:2023.10.31

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 国税当局では「消費税は預り金的性格」という表現をします。というのも、消費税は商品を購入した消費者の代わりに事業者が納める税金だからです。

 事業者は、お客さまへの売り上げに対する消費税から、仕入れなどにかかった消費税を引いた(仕入れ税額控除)残りの金額を国に納めます。例えば10万円の商品を販売したとすると、消費税率10%なら1万円の消費税をお客さまから預かることになります。もし仕入れなどの支払いがない場合は、その1万円を国に納めます。卸売業者から商品を仕入れて、その代金が7万円であれば、その商品に対して7000円の消費税を納めていますので、税務署に納付する金額は1万円(売り上げの消費税)-7000円(仕入れの消費税)=3000円の消費税を納めることになります(図)。

 卸売業者に関しては、7万円の売り上げに対して7000円の消費税がかかっていますが、その仕入れが5万円であれば5000円の消費税を納めていますので、7000円-5000円=2000円の消費税を納めます。この商品の製造業者においても5万円で販売した物に5000円の消費税がかかっており、仕入れはないことから5000円の消費税を納めています。つまり、5000円+2000円+3000円、全体で1万円の消費税を納めているわけです。

消費税および地方消費税の負担と納付の流れ

国税庁パンフレットより

 

「預り金的性格」だから厳しくチェック

 消費者から預かった税金ですから、事業者にきちんと納めてもらわなければ国税当局も困ります。そのため国税当局では、事業者が適正に消費税を納めているかを厳しくチェックしています。意図的に不正処理をしていないか、意図的ではないが誤った処理をしていないか――。ここでは、国税当局がどこをチェックしているかに焦点を当て、消費税処理で注意すべきポイントを挙げます。

 消費税の税務調査は課税・非課税、不課税区分の判定が正しく行われているかどうかを見ています。以下の4つの条件をすべて満たす取引が消費税の課税対象です。

①国内で行われる取引

②事業者が事業として行う取引(法人は全取引。個人事業は事業として行う取引(反復・継続・対価))

③対価を得て行われる取引

④資産譲渡、貸付または役務の提供取引、外国貨物の輸入

「外注費」でも「給与」のケース

 上記の判定において誤りやすいのが「外注費」です。外注費に計上している費用が「給与」に該当する場合も少なくなく、この区分は税務調査でも指摘されます。本来の外注費とは、いわゆる「業務委託費用」です。「給与」と「業務委託費用」の違いは、

給与=事業主の管理下にある従業員に対して支払われるもので、契約形態は「雇用契約」。
業務委託費用=他の法人や個人事業主からの請求書を元に支払われるもので、契約形態は「業務請負契約」。

 「給与」に該当する場合の消費税課税区分は「非課税」なので、たとえ科目が外注費だったとしても「課税」できません。

 支払先が法人であればまず外注費で間違いないのですが、個人名の場合は注意が必要です。例えば、社長からAさんは「とび職人」、Bさんは「補助」と聞いていたとしたら、Aさんへの支払いはあくまで個人となりますので、請求書を発行してもらわないと「業務委託費用」と決定できません。

 Bさんへの支払いは一見アルバイト代かと思われますが、もしかしたら「何でも屋」のような形態で個人事業を営んでいるのかもしれません。そのため、外注費か給与かの判断をするには、「業務委託費用」なら相手方に請求書を発行してもらう、「給与」なら給与計算をしておく必要があります。

 この論点の怖いところは、外注費で消費税「課税」としていたものが、給与として「非課税」扱いになった場合、源泉所得税の徴収漏れにもなってしまうところです。源泉所得税が発生する金額の給与を誤って外注費で「課税」扱いにしてしまうと、消費税と所得税のダブルで申告漏れになるということです。

購入した商品券などの「交際費」の判断…

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