税理士が語る、経営者が知るべき経理・総務のツボ(第100回)まだ間に合う、3月決算法人の決算対策

業務課題 経営全般 資金・経費

公開日:2024.03.18

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 3月も半ばを過ぎ、3月決算法人の経営者および経理担当の皆さんは決算対策(=節税対策)で頭を痛めておられるのではないかと思います。脱税はともかく、税法などで認められている各種方法の実行により納税額を減らすことは、納税者に認められた当然の権利といえるでしょう。

 本稿では、中小企業向けの主な決算対策を紹介します。併せて課税当局目線でのチェックポイントもお伝えします。

決算賞与の支給

 決算対策としてまず頭に浮かぶのが、決算賞与の支給(未払い金計上も可)でしょう。費用として計上できる金額も大きい上に従業員からも喜ばれます。ただし、期中に支給した場合はともかく、資金繰りの関係などから未払い金に計上した場合には、債務として具体的に確定しているかが調査時のチェックポイントとなります。

 法人税基本通達(以下、法基通といいます)9-2-43では、決算日後1カ月以内の支給や全使用人に各人別に支給額を通知するなどの要件が定められており、特に後者の要件の充足を巡って問題となるケースが多いため、しっかりと記録を残しておく必要があります。

分掌変更による役員退職金の支給

 退職金は退職の事実があって初めて損金に算入できますが、退職の事実がなくても同様の事情にあると認められる場合には、特別に退職金の損金算入が認められる制度があります。それが、「分掌変更による役員退職金の支給」であり、分掌変更とは役員の職務の変更や仕事の分担が大きく変更することをいいます。

 例えば常勤役員が非常勤役員になったり、取締役が監査役になったりした場合が典型とされていますが、分掌変更の判断に際しては実質が重視されます。分掌変更に伴って給与が大幅に減額されるなどしても、引き続き経営上の主要な地位を占めているような場合には、役員退職金として損金算入はできないこととなります(法基通9-2-32)。

短期前払費用の活用

 会計上、前払費用は支出時には資産計上し、役務提供時に損金に計上していくのが原則的な取扱いです。税務において一定の要件に該当する場合は、「短期前払費用」として支出時の損金算入が認められています(地代家賃、リース料、賃借料、保険料など)。

《短期前払費用となる要件(法基通2-2-14)》

①支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものであること

②支払った金額を継続して支払った日の属する事業年度の損金の額に算入していること

 上記要件をクリアするためには、利益が出たから当期だけ1年分支払うというような場合は調査で利益調整と認定される恐れがあり、継続的に年払いとする必要があります。

 また、3月決算の場合、3月に4月分~翌年3月分を支払えば適用できますが、3月に5月分~翌年4月分を支払った場合は①の要件に当てはまらず、適用できませんので注意が必要です。

少額減価償却資産の購入…

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