住宅ローン控除は、正式には「住宅借入金等特別控除」といい、マイホームを購入・リフォームするために金融機関などから住宅ローンを借りた人が受けられる税優遇制度だ。この住宅ローン控除を受ける際の手続きが見直された。
これまでは住宅ローン控除を受けるために、お金を借りた金融機関などから借入金の年末残高証明書を受け取り、それを税務署に提出する必要があった。会社に勤めている人なら、1年目は確定申告により税務署へ提出、2年目以降は年末調整の際に会社に提出すれば控除を受けられた。この手続きを「証明書方式」という。
2024年1月以降はこの手続きが「調書方式」という方式に変更になっている。「調書方式」とは、金融機関等が税務署に「住宅取得資金に係る借入金等の年末残高調書」を提出し、納税者には税務署から住宅ローンの年末残高情報を提供される方式のこと。これにより、住宅ローン控除を適用した給与所得者は、確定申告や年末調整の際に年末残高証明書の提出が不要となる。
「調書方式」では、納税者はマイナンバー等を記載した「住宅ローン控除の適用申請書」を金融機関等に提出する。この時点で納税者がマイナンバーを保有していない場合、金融機関等はマイナンバーの代わりに、e-Taxの利用者識別番号を記載する方式(併用方式)を選択できる。
税務当局はマイナポータル等を通じて納税者に年末残高等の情報を通知する。マイナポータルから情報を受け取れない場合、納税者は返済計画表等の書類から年末残高を確認し、確定申告書に入力・記載する必要がある。マイナンバーカードでマイナポータルにログインすると、e-Tax用の利用者識別番号と暗証番号を入力することなくe-Taxにログインでき、メッセージボックスの情報の確認もできる。
ただし、これらは金融機関等が調書方式に移行している場合に限る。金融機関等のシステム対応が遅れ、「調書方式」に移行できていない場合は、2024年以後の居住者であっても、従前の「証明書方式」での対応となる。
なお、「証明書方式」から「調書方式」に変更が完了した金融機関は、国税庁ホームページに公表される。
2024年からの「住宅ローン控除」はココが変更に…
さて、この住宅ローン控除だが、税制改正により2023年までと、2024年以降では控除額等が違うので注意したい。
住宅ローン控除は残高の0.7%を最大13年間、所得税から控除できる。所得税から控除しきれない場合には、翌年の住民税から控除される。2024年以降の住宅ローン控除は、2023年までの住宅ローン控除と比較して借入限度額の上限が縮小しているほか、省エネ基準等を満たさない新築・買取再販住宅は対象外となっている。
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(出所:国税庁ホームページをベースに筆者が作成)[/caption]
上記図表の「その他の住宅」とは、長期優良住宅、認定低炭素住宅、ZEH水準省エネ住宅、省エネ基準適合住宅に該当しない、その他の一般住宅だ。 マンションや戸建てを購入・建築する住宅が「その他の住宅」に該当すれば、2024年以降は住宅ローン控除が、
・「2023年12月31日までに建築確認を受けている」か「2024年6月30日までに建築されたもの」のみ対象
・限度額が3000万円から2000万円に引き下げ
・控除期間が13年から10年へ
となる。特に注意すべきが適用要件。建築確認が2024年以降になる、あるいは2024年6月30日以降の建築になると、住宅ローン減税そのものが対象外だ。
子育て世代、若者夫婦を優遇
一方で、2024年以降においては、「子育て世帯と若者夫婦世帯を対象に借入限度額を優遇」「床面積の要件緩和を延長」が大きな特徴だ。
具体的には、「子育て世帯と若者夫婦世帯」が2024年に入居する場合、住宅ローンの借入限度額は2022年~2023年の入居水準が維持される。「子育て世帯」とは18歳以下の子どもがいる世帯、「若者夫婦世帯」は、夫婦のどちらかが39歳以下の世帯だ。
床面積要件の緩和延長は、すべての世帯が対象となる。具体的には床面積50㎡以上が適用対象だが、新築住宅に限り床面積要件を40㎡以上に緩和している。当初予定では、2023年12月31日までの期限を設けていたが、緩和措置が2024年12月31日まで延長された。ただし、合計所得額が1000万円以下という所得要件がある。
執筆=一般社団法人租税調査研究会
一般社団法人租税調査研究会(https://zeimusoudan.biz/about)
法人税、源泉所得税、所得税、消費税、印紙税、資産税、酒税・揮発油税、関税、国際税務、公益法人、査察、事務訴訟などの各税務分野の国税出身税理士を招集し、会計事務所向けに相談・教育などを手掛ける団体。現在、在籍する研究員・主任研究員は55名。会員会計事務所は約100会計事務所。
主な著書に『一冊ですべてわかる! 暗号資産の税務処理と調査対応のポイント』(第一法規)、『国税OB税理士による 税務調査のすべて』(大蔵財務協会)、『加算税の最新実務と税務調査対応Q&A 判決・裁決・事例で解説』(大蔵財務協会)、『税目別ケースで読み解く!国際課税の税務調査対応マニュアル』(ぎょうせい)など多数。
監修・編集=宮口貴志
一般社団法人租税調査研究会専務理事・事務局長。株式会社ZEIKENメディアプラス代表取締役、TAXジャーナリスト、会計事務所ウオッチャーとして活動。元税金専門紙・税理士業界紙の編集長。