2024年もすでに10月。今年も残すところ約2カ月となりました。この時期になると、お歳暮選びが年の瀬の恒例行事の方も多いのではないでしょうか。会社なら、お歳暮を贈ったらすべて経費で落とせると思っている人も少なくないと思いますが、経費として落とすにはいくつかの条件があります。
「交際費」で落とすためには
会社で支出するお歳暮にかかる費用は、運送代を含め原則「交際費」として扱います。税務上の交際費は、「得意先や仕入れ先その他事業に関係のある者に対し、接待、供応、慰安、贈答などの行為のために支出する費用」であり、会社の規模により一定額以上、もしくはすべてを経費として落とすことはできません(損金不算入)。つまり税法上の交際費は、「仕事上で付き合いのある人に対するおもてなし」といった意味合いになります。
交際費を損金算入できる額は、企業規模で異なります。会社の規模は①資本金が1億円以下の法人、②資本金が1億円超100億円以下の法人、③資本金が100億円超の法人、と資本金額で分けられ、それぞれの区分によりどこまでを経費に計上できるかが定められています(詳細は「個人事業主、小さな会社の納税入門(第27回)」参照)。
お歳暮は消費税の課税対象
さて、購入したお歳暮ですが、その消費税は原則課税対象です。しかし、商品券やプリペイドカードなどを購入し、お中元・お歳暮として贈った場合は、消費税が非課税となります。消費税は8%、10%の複数税率ですが、お歳暮で飲食関係の物を贈った場合、軽減税率制度が適用されるのでしょうか?
軽減税率は、通常の消費税率は10%ですが飲食料品などに限って8%になる仕組みです。ただし、アルコールは軽減税率の対象ではありません。お歳暮でビールとおつまみのセット商品を購入したとすると、消費税率はどのようになるのでしょうか。
ビールは酒類なので税率10%、おつまみは食品なので軽減税率8%です。酒類とは酒税法で定められているアルコール分1度以上の飲料をさします。飲食料品とは、食品表示法で定められている「食品」をさします。食品衛生法に規定する「添加物」も含まれますが、「医薬品」「医薬部外品」「再生医療等製品」は除きます。つまり、ナッツやピーナツのおつまみ、その他すべての食品は軽減税率の対象となります。
では、酒類と食品がセットで販売されているお歳暮の消費税はどのように計算されるのでしょうか。
「一体資産」か否かが判断ポイント…
税法上は、セット販売されているものに基準を設け、その基準を満たしていれば軽減税率の対象、満たしていなければ10%となります。セット販売で軽減税率の対象となるものを「一体資産」と言います。「一体資産」と判断されるには、次の2つの条件を満たさなければいけません。
1 一体資産の税抜き価格が1万円以下であること
2 一体資産の価額のうち、食品の価額の占める割合を合理的に計算した結果、3分の2以上であること
例えば価格3000円のお歳暮で、このうちおつまみ部分の価額が1000円であれば3分の1であるため、一体資産に該当しません。つまり、消費税は10%になります。
ケーキや冷凍食品などを購入する際に保冷剤が付く場合がありますが、保冷剤は飲食料品には該当しないため、軽減税率の対象外です。ただ、食品を提供するために必要なものは食品と合わせて1つのものとして扱います。また、インターネットなどの通信販売を利用してお歳暮を購入した場合でも、お酒を除き、飲食料品であれば軽減税率の対象になります。軽減税率対象外の商品と一緒に購入した場合は、それぞれの税率で消費税額が計算されます。
通信販売の軽減税率で気を付けなければいけないもう1つは「送料」です。送料は食品を運ぶ目的であっても、飲食料品の譲渡対価、つまり食品の軽減税率の対象ではありません。よって消費税は10%となります。
近年はカタログギフトを贈る場合もありますが、カタログギフトも同じような取り扱いなのでしょうか? 実は、カタログギフトの場合は、その商品が飲食料品でも10%が適用されます。カタログギフトの利用は「商品の購入」ではなく、「サービスの購入」とみなされるからです。
消費税率を考えてお歳暮を選ぶ人はほとんどいないと思いますが、“税金”についてもっと知識を深めれば、自分がどれだけ税金を納めているのか、国はそれをどのように使っているのかなど、今よりも政治を注視する目も違ってくると思います。
執筆=一般社団法人租税調査研究会
一般社団法人租税調査研究会(https://zeimusoudan.biz/about)
法人税、源泉所得税、所得税、消費税、印紙税、資産税、酒税・揮発油税、関税、国際税務、公益法人、査察、事務訴訟などの各税務分野の国税出身税理士を招集し、会計事務所向けに相談・教育等を手がける団体。現在、在籍する研究員・主任研究員は55人。会員会計事務所は約100会計事務所。
主な著書に『一冊ですべてわかる!暗号資産の税務処理と調査対応のポイント』(第一法規)、『国税OB税理士による 税務調査のすべて』(大蔵財務協会)、『加算税の最新実務と税務調査対応Q&A判決・裁決・事例で解説』(大蔵財務協会)、『税目別ケースで読み解く!国際課税の税務調査対応マニュアル』(ぎょうせい)など多数。
監修・編集=宮口貴志
一般社団法人租税調査研究会専務理事・事務局長。株式会社ZEIKENメディアプラス代表取締役、TAXジャーナリスト、会計事務所ウオッチャーとして活動。元税金専門紙・税理士業界紙の編集長。