ビジネスパーソンにとって出張先での食事は、普段とは違ったグルメを楽しめるイベントの1つです。とはいえ、いざ店を選ぶとなると、「どこに入れば?」「おひとり様で大丈夫?」と悩んでしまうことも多いはず。結局、無難な全国チェーンの飲食店を選んでしまうことも少なくありません。
本連載では大阪・神戸・京都を中心に、出張で訪れた際はもちろん、ちょっと気分を変えたい地元のビジネスパーソンが、1人でも気軽にランチや夜の1杯を楽しめる飲食店を紹介していきます。
第1回は、大阪屈指のビジネス街・本町にある天ぷら店「健菜天 佳川」ののれんをくぐってみましょう。出張ビジネスパーソンの懐と健康に気づかった、優しさにあふれた天ぷらで迎えてくれます。
大阪商業の中心地・船場
日本全国あちこちの都市で見られる「本町」という地名。多くは、行政・商業施設などが集まる中心市街地を指すことが多いようです。
大阪の本町は、商業エリアとして栄える船場地区のさらに中心にあり、その歴史は太閤・豊臣秀吉が開いた城下町の時代にまでさかのぼります。二大繁華街であるキタ・ミナミからは地下鉄で2駅ほど離れていますが、現在も大小の企業がオフィスを構えます。
整然と走る道路で碁盤目に区切られた街並みを足早に過ぎ去る人は、やはりビジネスパーソンが大半です。彼らの旺盛な食欲を満たす飲食店を、あちらこちらに見ることができます。今回のお目当ては、船場センタービル10号館地下飲食店街、その最奥にあります。
新装開店、老舗ビルの地下飲食店街…
「健菜天 佳川」が店を構えるのは、船場センタービル10号館の地下飲食店街。10棟あるセンタービルは、1970(昭和45)年開催の大阪万博に合わせて開通した中央大通の建設にともない、立ち退きを余儀なくされた繊維系の問屋や商店を収容する目的で作られました。
それだけに、入居している店舗は現在も「糸偏(いとへん)」関係、つまり衣料・服飾が主流です。地下飲食店街もまた、船場へ通い慣れた常連客に愛される店舗が数多くあります。
2008年に、10号館の地下飲食店街は「船場茶屋小路」「船場女将小路」としてリニューアルしました。健菜天 佳川は、2016年2月にオープンしたばかりのニューフェースです。
健康志向、旬を楽しむ「健菜天」
リニューアルしたとはいえ、小路は昭和ムード満点です。「佳川」は最も奥の区画で営業。居並ぶ居酒屋の雑然たるにぎわいの先にあり、店頭の長のれんがしっとりとした雰囲気で出迎えてくれます。
店を切り盛りするのは、店主の角川智之さん。9席あるカウンター内の厨房(ちゅうぼう)に立ち、目の前で揚がる天ぷらを一品ずつ提供してくれます。揚げ油には、米ぬかが原料の和歌山産「米油」を使用。サクッと軽い食感に揚がり、体内の抗酸化作用にも優れる油だといいます。
「席数が多くない店ですから、騒がしくなることは少ないですね。おひとり様でゆっくりと飲み食いを楽しんでいただけると思います」と話す角川さんの出身地は、大阪府内の泉佐野。大阪では一、二を争う漁獲量の漁港を抱える「魚どころ」として知られ、魚の目利きには自信をのぞかせます。
「天ぷらのタネは、魚にこだわるわけではありませんが」と謙遜しつつも、豪快な「穴子一本揚げ」(800円)は看板メニューの1つ。夜のコース「おまかせ天ぷら」(1500円)に加える「もう一品」として注文する客が多いとか。昼のランチは税込み880円の「天丼」で勝負。タレは自家製、白飯は「もち麦」入りと、こちらも健康志向です。
「夏を迎えるこれからは、鱧(ハモ)が旬を迎えます。泉佐野など泉州地域特産の『水ナス』も採り入れて、季節の味わいを提供できれば」と角川さん。「料理に合わせる酒もいろいろ。評判を聞きながら、地酒の取り寄せなどにも力を入れていきたいですね」と、美味への追求に意欲を見せます。なお店内は「全面禁煙」。船場かいわいの店では貴重な存在です。
健菜天 佳川(けんさいてん よしかわ)
大阪市中央区船場中央4-1-10 船場センタービル10号館地下1階
地下鉄御堂筋線「本町駅」隣接
06-6210-2539