南京町かいわいで目立つのは、もちろん中国料理店。おいそれと敷居をまたぐのがはばかられる高級店もあれば、点心と呼ばれる中国風ファストフードやスイーツを店頭で、気軽に味わえる店もあります。
ランチ時に目立つのはやはり観光客。彼らを逃すまいと、店頭からはにぎやかな呼び込みの声が。中には「寅さん」ばりの名口上で集まった人をドッと沸かせる店もあり、見て回るだけでも楽しめます。気が付くと、右手に小籠包(ショウロンポー、豚まん)、左手には刈包(クワパウ、豚角煮サンド)、手首には、焼き豚や豚足のお土産をぶら下げているという事態にも。とにかく買う気、食べる気にさせてくれる雰囲気を街全体から感じます。
街の中心地・南京町広場から少し西へ入った路地の奥にあるのが、お目当ての店。神戸アジアン食堂バル「SALA」です。オープンは、2016年7月。中国や台湾のみならず、タイやフィリピンなども含めたアジア料理の数々を提供しています。
店名のSALA(サラ)は、タイ語もフィリピン語でも「休憩できる場所」という意味があります。13坪ほどの店内に、カウンター5席とテーブル27席があります。どちらかといえば落ち着いた雰囲気の店が少ない南京町には珍しく、こちらは静けさが漂い、ゆったりとした時間を過ごせます。観光客の姿も少なく、地元に根差した店づくりをめざしているようです。
アジアの「お母さん」が務める日替わりシェフ
SALAの特徴は、神戸やその周辺で暮らすアジア人の主婦が日替わりで厨房(ちゅうぼう)に立つところ。これぞまさに多国籍です。日本へ移り住んだり滞在している「アジアのお母さん」たちに働く場所を提供したいと、店主の黒田尚子さんのアイデアで店を開きました。
「おひとり様の来店も多いですね」と黒田さん。メニュー表にも大皿料理は少なめです。アジアのお母さんによる、愛情のこもった昼食や夕食、サッと飲みを少人数で楽しめる中皿・小皿料理が並びます。
テーブルにつき、まず注文するなら酒に合いそうな前菜の数々を。前菜盛り合わせプレート(1280円)や野菜たっぷり生春巻き(480円)、モリモリ食べられるパクチーたっぷりサラダ(580円)などがあります。
昼食なら、850円のランチメニューがオススメ。鶏肉のスープで炊いたライスに鶏肉を乗せたタイ風「カオマンガイ」や、甘辛く煮込んだ豚肉が白ご飯の上に乗る「ルーローファン」、爽やかな辛みの「グリーンカレー」などが人気です。
同じ850円で味わえるランチには、その日のシェフを務めるお母さんならではの「TODAY’S SPECIAL」も。伝統的な料理ではなく、シェフの家族に伝わる正真正銘の家庭料理を味わうことができます。
お母さんの手料理と合わせて楽しみたいお酒もいろいろあります。生ビール(450円)や世界各国のビール(600円)、ハイボール(550円)やカクテル各種(550円)のほか、グラスを受ける升へあふれるまで注いでもらえるスパークリング(650円)などもオススメ。
「日替わりならぬ『シェフ替わり』で用意するメニューは、担当のお母さんの意見を取り入れながら、工夫を凝らしています。どんなメニューが味わえるかは、来店してからのお楽しみといったところでしょうか。陽気なお母さんとの会話も楽しんでほしいですね」と、黒田さんはほほ笑みを浮かべます。
先入観で「観光客が遊びにいくところ」「円卓を囲む中国料理店が多く、おひとり様は歓迎されない」と思い込んでいた南京町に、家庭のダイニングキッチンを思わせる店を見つけられたのはうれしいところ。早じまいの店が多い南京町で、22時までのオープンも使い勝手が良さそうです。
神戸アジアン食堂バル「SALA」
[Facebookページ]https://www.facebook.com/kobeasiansala/
神戸市中央区元町通2-3-16 食堂館 1階
JR・阪神「元町」西口より徒歩5分
11:00~22:00
※土曜・日曜・祝前日は17:00~
078-599-9624