いよいよ年の瀬、寒さが身に染みてくると、やっぱり温かいものが食べたくなります。パッと頭に思い浮かぶ「おでん」、熱々でおいしいおでんが食べられる店はないかと小伝馬町・大伝馬町の繊維街を歩いていると「静岡おでん」の看板を見つけました。
日比谷線「小伝馬町駅」から徒歩で約2分、JR総武本線「新日本橋駅」からも徒歩5分、江戸通りから1本入った細い裏路地にあった店の名は「季節料理と静岡おでん しんば」です。書き文字に並ぶテークアウトの弁当も魅力的でしたが、外からのぞける店内の暖かみに引かれて店内へ。それでは、この店で、今年最後のおひとり様グルメとまいりましょう。
路地裏に立つ「静岡おでん」の看板に、期待が高まります
ランチメニューには、魅力満載なセットがずらり
刺身盛りや煮込みハンバーグ、天丼にしらす丼と、それぞれ魅力的な文字がランチメニューに並びます。メイン2種、または3種で構成されたセットメニューで、金額はオール1000円。かなり迷いましたが、ここは初心貫徹で「静岡おでん5種盛と“はがつお”のタタキ」(1000円・味噌汁・漬物付き)を選択しました。
温かいおでんと角の立った刺し身のランチセット
静岡(しぞーか)おでん五ヶ条とは?
最近では、全国区で認知されてきた静岡市民のソウルフード「静岡おでん」ですが、他地域のおでんと何が違うのでしょうか。「静岡おでんの会」という有志が集まる会のホームページにある「静岡おでん五ヶ条」を引用します。
その1:黒はんぺんが入っている。
その2:黒いスープ。
その3:串に刺してある。
その4:青海苔、だし粉をかける。
その5:駄菓子屋にもある。
運ばれてきた、しんばのおでんを見てみましょう。黒はんぺん、黒だし、串刺し、青のりにだし粉、と4つの条件を満たしているようです。店主の榛葉(しんば)さんによると、おでんの味は静岡県牧之原市のご実家近くの駄菓子屋で食べていた「思い出の味」を再現しているとのこと。ということで、5つ目の駄菓子屋にもあるという条件もクリアといえるでしょう。
しんばのおでんは店主が子どもの頃に食べていた懐かしの味
「黒はんぺん」からうま味がジュワッと
運ばれてきたお膳のおでん種は、黒はんぺん、大根、じゃがいも、こんにゃく、豚バラ肉の5つ。ここはもちろん、黒はんぺんから実食しましょう。静岡おでん五ヶ条の“その1”に掲げられているように、静岡おでんには黒はんぺんが欠かせません。「この黒はんぺんで、静岡おでんならではの独特の味が出てくるんですよ」と店主。サバやイワシなどの青魚を原料とする黒はんぺんは、白身魚のはんぺんよりもうま味が濃厚で栄養素も豊富だといいます。
静岡おでんのイメージといえば黒々としたスープが染みて、見た目から濃いのが特長ですが、しんばのおでんは、黒さ控えめ、あっさりと食べやすい味わいです。店主に理由を聞くと「だしは鶏ガラ、かつお、こんぶ、もつ、から取っています。それと具材の黒はんぺんからもだしに欠かせない味が出ます。静岡おでんを看板にしている店は牛すじを使う所も多いですが、うちでは牛すじは使いません。それで独特の黒い色ではなく、私独自のだしの色なのです」と答えてくれました。
長年和食の店で修行し、7年前にこの店を開いたという店主ならではのこだわりがプラスされ、味はよく染みていながら、色は濃過ぎず親しみやすい「しんばの味」となっているようです。
一口食べて、静岡おでんはご飯のお供によい!と思いました
おでんだけじゃない、魚も絶品!…
旬の魚が食べられるのも、この店の特長です。運ばれたランチセットの2つ目のメイン“はがつお”は、夏から秋が旬の魚です。もう旬から外れるのでは?と再び、店主に質問してみました。
「温暖化の影響かもしれないのですが、いつもより魚の旬が遅れていて。そのため、例年では10月頃の戻りカツオが、海水温が高いために今頃まで捕れていて、不思議ですよね。まだ身に脂がのっていておいしいですよ」とのこと。
[caption id="attachment_37407" align="aligncenter" width="400"] 海育ちの私でも「コレハッ」とうなる“はがつお”のタタキ[/caption]
ほどよいあぶりで皮目が香ばしく、振り塩がよいアクセントでかつおのうま味を味わえます。臭みがなく新鮮な味わいに、これがランチの刺し身?と、驚きを隠しきれませんでした。店では、築地や豊洲から朝、店主が目利きして仕入れた新鮮な魚を使って、その日のメニューを毎日決めているといいます。毎日、仕入れた魚に合わせての提供となるため、ランチも夜もメニューは日替わり。手書きのメニュー表がそれを教えてくれます。
魚に合う日本酒の種類も豊富。カウンター席限定やテーブル席限定などさまざまに楽しめる地酒メニューが整えられていて、時にはうれしいレア酒が登場することもあるそうです。昼飲みにも対応しています。
持ち帰りできる静岡おでん弁当
静岡おでんは弁当販売もあり、価格はうれしいワンコインの500円です。弁当におでんとは珍しく感じるかもしれませんが、串に刺さった静岡おでんは食べやすく、時間を置いても味が染みたおでん種は弁当にぴったりです。
[caption id="attachment_37408" align="aligncenter" width="400"] おでん種が6つの「静岡おでん弁当」。たまごは人気の種[/caption]
[caption id="attachment_37409" align="aligncenter" width="300"] 「静岡おでん弁当」のほかにも、手作り弁当がメニューに並ぶ[/caption]
「店のフードメニューは、すべてテークアウトできます。夕飯のおかずを買いに来るご近所の常連さんも多くて、ついついオマケしちゃいます」と優しい笑顔で話す店主。初めて訪れた人でも気楽に過ごせる温かな雰囲気、これもこの店の魅力だと思いました。
自宅で味わう「しんばのおでん」
年末年始の宅飲みのつまみに良さそうな「しんばのおでん」ですが、お客さまの声に応えて12月末からお取り寄せにも対応しました。しんばの注文専用サイトでは、自慢のおでん以外にも、店主の地元・静岡県特産のかんきつ類「だいだい」や「じゃばら」をブレンドした自家製ポン酢や、静岡で有名なとろろ専門店でも使われている牧之原市産の「自然薯とろろ」など、地元で評判の味を自宅から取り寄せできるようになっています。
この冬は、ほっこり優しい「しんばのおでん」とうまい酒で温かいひとときを過ごしてみてはいかがでしようか。
[caption id="attachment_37410" align="aligncenter" width="400"] 2階席もあって、気楽に過ごせる「しんば」の店内[/caption]
※文中にある金額はすべて税込み価格です
※掲載している情報は、記事執筆時点(2020年12月)のものです
[ 季節料理と静岡おでん しんば ]
東京都中央区日本橋大伝馬町3-4
03-3669-8911
◆東京メトロ日比谷線『小伝馬町』駅 徒歩2分、
JR総武本線(横須賀線)「新日本橋」駅から徒歩5分
◆営業時間
[月〜金]ランチ11:30〜14:00 ディナー 17:00〜23:00(LO.22:30)
[土]ディナーのみ 17:00〜22:00 (LO.21:00)
★11/28〜来年1/11まで都からの短縮要請のため 〜22:00(LO.21:30)
・定休日/日曜・祝日、お盆休み、お正月休み(12/30〜1/4)
◆Webサイト:http://www.shinba-oden.com/
◆お取り寄せのNEWサイト:https://www.shinba-odenshop.com/
**外部リンク
・静岡おでんの会
http://shizuokaoden.sakura.ne.jp/