プロ野球に学ぶ、ミスターと呼ばれし者の流儀(第5回)ミスを成功に結び付けた”ムッシュ”吉田義男の失敗学

人材活用

公開日:2016.09.28

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 野球の醍醐味といえば、豪快なホームランや、胸がすくような三振。注目は、打撃や投球に集まる。これまでの連載で取り上げてきた「ミスター・タイガース」の面々も、4番打者やエースに与えられてきた称号である。

 しかし「オレは守備を磨いて観客にアピールしよう」と守備でファンを沸かせ、現役時代に2度のリーグ優勝、監督として初の日本一という、歴代のミスター・タイガースですら成し得なかった偉業を達成した男がいた。阪神タイガースの永久欠番23番、吉田義男氏である。

 守備の人にもかかわらず、彼はなぜ歴代のミスター・タイガースをも超える貢献を成すことができたのだろうか。その理由を探っていこう。

失策王を名手に変えた「人は失敗して覚える」

 吉田氏は、何も初めから守備の名人だったわけではない。入団時から才能を見いだされ、レギュラーに抜てきされるも、1年目の失策は38、2年目も30と、むしろ“失策王”だった。

 しかし、当時の松木謙治郎監督が辛抱強く使い続けた。松木監督は「人は失敗して覚える」が口癖で、失策してしょげる吉田氏に「もう1つエラーしてみろ」と叱りながらも起用し続けた。吉田氏は「プロで最初に巡り合った監督がこの人でなければ、以後の自分はなかった」と振り返る。

 入団3年目のオフ、米大リーグのニューヨーク・ヤンキースが来日して、日本チームと16試合を行った。吉田氏も日本チームの一員として参加したが、15敗1分けと圧倒的な力の差を見せつけられた。そんな中、ヤンキースの選手が選んだ「日本で最も傑出した選手」で、吉田氏が選ばれた。

 「ああ、こんな自分でも、やれるんだ!」

 守備を磨くという自分の考えが、間違えていなかったと知り、吉田氏は意を強くした。

 当時の阪神のウリといえば、遊撃手の吉田氏の他、三塁手の三宅秀史氏、日本で初めてバックトスを取り入れた二塁手の鎌田実氏らを擁する「黄金の内野陣」だった。その守りの要が吉田氏であり、その華麗な守備から「牛若丸」と呼ばれるほどだった。

 吉田氏はやがて、守備以外でも活躍するようになった。例えば盗塁では通算350回に成功しており、これは2009年に赤星選手が更新するまでの球団記録である。打撃も、優勝した64年に打率3割超えをマーク、この年は179打席連続無三振という当時の日本プロ野球記録を達成した。また、通算264犠打は、今でも阪神タイガースの球団記録である。吉田氏は、もはや守備の人ではなくなった。

天国と地獄を味わった監督時代…

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執筆=峯 英一郎studio woofoo

ライター・キャリア&ITコンサルタント。IT企業から独立後、キャリア開発のセミナーやコンサルティング、さまざまな分野・ポジションで活躍するビジネス・パーソンや企業を取材・執筆するなどメディア制作を行う。IT分野のコンサルティングや執筆にも注力している。

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