日本時間の2020年10月14日のアップルのオンラインイベントで、待望のiPhone12が12/12 Pro/12 mini/12 Pro Maxの4つのラインアップで発表された。続いて12/12 Proは10月16日に、12 miniと12 Pro Maxは11月6日に発売された。
iPhone12シリーズは外観のほか、ハードウエアももちろんバージョンアップされた。一番の違いは、iPhoneとして初めて5G(第5世代移動通信システム)に対応したことだ。先日のイベントでは、バックに大きい「5G」の文字と共に、熱く語るティム・クックCEOの姿が印象的だった。
ちなみに、これまで5G対応の携帯端末は、XperiaやGalaxy、Google PixelシリーズなどAndroid端末に限られていた。世界でのiPhoneのシェア率は3割を切るものの、iPhoneシェア率の高い日本は6割強。新型が出たら買い替える愛好家も多い日本では、iPhone12の発売が5Gの普及につながりそうだ。
もちろん5Gを使うには、対応端末のほか5G対応の基地局と5Gが使えるプラン契約も必要だ。今のところエリアは限られているが徐々に拡大しつつあり、将来的な利用を考えると端末が手元にあるに越したことはないといえる。
最近のICTの状況は、インバウンドの増加や東京オリンピックに向けて、キャッシュレス・多言語翻訳・顔認証などの新たな技術の導入、変革の機会が訪れていた。コロナ禍以降は、テレワークの導入やオンライン教育の実施、オンライン診療の規制緩和など、さまざまなジャンルにデジタル化の波が押し寄せた。仕事も生活もコロナ前と全く異なる状況を実感している人も多いだろう。
従来の4Gまでの移動体通信は、最大限の処理能力の確保とより高速・大容量な通信の提供をめざした一元的なシステムだった。トラフィックが高まれば速度が落ちる。ところが5Gは最新技術を駆使し、超高速大容量、超低遅延、多数同時接続という3つのシナリオで、目的や用途に応じた機能や品質を必要に応じて提供する多元的なサービスを実現する。
テレワークやエンタメは超高速・大容量で快適になる。膨大な数のセンサーや機器を常時動作させるIoTでは多数接続が可能に。病院の専門医がヘリ内の医師に指示を出す場合は、超低遅延で即時性が実現するだろう。
【Before CoronaとWith Corona】
[caption id="attachment_36670" align="aligncenter" width="600"] 出所:令和2年版情報通信白書「新型コロナウイルス感染症の収束後の社会に向けて」より[/caption]
総務省の統計によると、5Gへの企業の関心はおしなべて高い。特に製造業の関心が高いという。5Gにより家畜や畑、工場、店舗などのリアルなモニタリング、ドローンでの見守り、高精細映像で死角を確認しつつの安全作業など、あらゆる分野で業務の効率化や新たな付加価値がもたらされ、アイデアしだいで大きなビジネスチャンスにつながる。キャリアのほか、各企業が「ローカル5G」の開発実証も行っている。
楽天の激安5Gが話題。主流はドコモか。「ミリ波」「sub6」とは?
20年3月にドコモ、au、ソフトバンクが、9月30日に楽天モバイルが5Gのサービスを開始した。最大の関心はやはり超高速・大容量。NTTドコモの5Gページには、「受信時最大4.1Gbps、送信時最大480Mbps」とうたわれている。
5Gなら8Kや360度映像などのリッチなコンテンツがいつでもどこでも楽しめる。世界中の仲間とゲームしたり、プレーヤーや監督目線でスポーツ観戦したりとオンラインでの楽しみが広がる。高速通信が実現すれば、低セキュリティな公衆Wi-Fiのリスクにおびえずに、快適なテレワークが実施できる。
5Gの高速通信の実現には、従来未使用の高い周波数帯「ミリ波」と「sub6」(サブシックス)で、広い帯域を確保する。この2つは互いのメリットデメリットを補い合う。超高速通信を実現するミリ波は、環境が整いづらく電波の範囲も狭い。一方、速度と同時接続ではミリ波に劣るsub6は、従来の技術が転用できて環境が早く整ううえ、電波が広域に届く。さらに、Massive MIMO技術により、電波をユーザーごとに絞り、より確実な高速通信を実現する。
先日、楽天が従来の料金そのままで5Gプランに移行できると発表し話題を呼んだ。対応端末さえあれば対象エリアで5Gが使える、というフレコミだ。ドコモは2021年3月までに500都市、2021年6月末までに1万局、2022年3月末までに2万局(人口カバー率55%)、2023年3月末までに3万2000局(人口カバー率70%)を開設する見込みだ。今年12月にはSub6の2つの周波数帯を束ねる「Sub6-CA」で国内最速を実現する。auとソフトバンクは、4G周波数の5G転用で、より早期なエリア拡大をめざす。
購入時期はいつが賢い?
5G対応端末は、それぞれ対応周波数帯が異なるため、選択は慎重に行う必要がある。安価に済ますなら、ミドルレンジにも選択肢のあるAndroid端末から選択するとよい。
自分の利用スタイルや活動範囲を踏まえ、サービスエリア・内容・料金を確認してサービスやプランを検討しよう。人口の少ない地域での使用なら、ドコモの人口カバー率が半数を超える2022年あたりが導入の目安ではないかと思う。
サービスエリアは、周波数帯(ミリ波、sub6、転用エリア)別に確認しよう。転用エリアはトラフィックにより速度が低下する可能性もあり優先度が低い。ドコモのエリアマップには、ミリ波対応スポットが表示されている。auのマップはミリ波、sub6別の表示がうれしい。
まだ歩き始めたばかりだが、大きなイベントや時代・環境の変化で5Gは一気に普及する可能性もある。新しい生活やビジネススタイル、エンタメを実現する5G。より快適で幸せな社会の実現が楽しみでならない。