2020年12月3日、ドコモは月間のデータ容量20ギガが月2980円で利用できる新プラン「ahamo(アハモ)」を21年3月に提供開始すると発表し、話題を呼んだ。
キャリア(MVO、自社で回線をもつ通信業者。ドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイル)が提供するプランは、一般的に月10ギガ以上のタイプだと月1万円近くの出費となる。一方、いわゆる「格安SIM」を提供する事業者(MVNO)や、UQモバイル、Y!mobileなどキャリアのサブブランドを使うと、半額もしくはそれ以下でモバイル通信を使える。
仕事柄複数の端末が必要な筆者は、格安SIMを黎明(れいめい)期から使っている。手持ちの3台と家族の通信料を合わせても、友人のドコモ1台より安価で驚いたこともある。ただ、混雑するイベント会場や山間部、過疎地などでは、ドコモのほうが電波や電話のつながりが良かった覚えがある。
格安SIMは月に1ギガ、3ギガなど、少容量の通信が得意で月数百円から使えるものもある。小容量の契約でも、家ではブロードバンド回線+Wi-Fiで賄うなどすればおおむね間に合う。ところが自宅に回線を引かず、すべてモバイルで賄う人も増えてきた。そうなると、そこそこ大容量で通話品質が良いサービスが必要だ。そんな流れでのahamoの発表である。まさに時代が必要とするプランと感じた。
日本の携帯料金は高過ぎ?政府の提示する見直しの方向とは
「海外に比べ日本の携帯料金は高過ぎる」。9月に発足した菅政権は、携帯料金値下げを看板政策の1つに掲げる。総務省は十数年にわたり携帯電話料金に対して、検討会を繰り返し、ガイドラインや方針を打ち出し、法改正を行ってきた。
20年12月21日には総務省のサイト「携帯電話ポータルサイト(暫定版)」で「この機会に確認しましょう!あなたの携帯電話の契約」という記事が公開された。これによれば、大手携帯会社4社のサービスの利用者のうち、40%以上の人が月20ギガ以上のプランを契約しているものの、実際に20ギガ以上をコンスタントに使う人は約10%しかいないという。
自分に合った容量のプランに変えるだけでも、料金を下げられる。筆者も容量の少ないプランに変更したら月1000円以上の節約に成功した。月ではわずかでも、年単位で考えればそれなりの金額となる。
容量の他にも、端末を替えずに乗り換える、中古端末の検討、格安スマホや格安SIMの検討など、携帯料金を安く抑える情報がまとめてある。この機会に見直してみるのもよいだろう。なお総務省は、公平な立場でスマートフォンの乗り換えを指南する「スマホ乗り換え相談所」事業の準備も進めているという。
ahamoの内容とそれに続く各社の動き、サブブランドやMVNOも…
ahamoは契約を実店舗ではなく、オンラインで受け付けるのが大きな特徴だ。契約後も専用アプリで利用量や料金の確認、手続きなどを行う。容量は月20ギガ、超過後は1MbpsとなるがSNSなどのやり取りなどには十分使える。必要に応じて容量も追加でき、音声電話は5分までの国内通話が何度でもかけられる。1000円追加でかけ放題にもなる。ネットワークは4Gだけでなく5Gにも対応し、月2980円とは驚きだ。
ちなみにキャリア、サブブランド、MVNOにかかわらず、SIMカードのみの契約も可能なのを覚えておくとよい。手持ちの端末や中古で入手した端末で(端末を新しいものに替えずに)SIMだけ交換して乗り換えれば、さらにコストを抑えられる。
話は戻って、5Gも使えて月2980円と聞いて、思い浮かぶのが楽天モバイルだ。楽天モバイルは第4のキャリアとして、昨年からサービスをスタート。メインの使い放題プランは先着300万名まで1年間無料というユニークなサービスも行っている。
残り2社のキャリアもahamoに続く方針を示す。ソフトバンクは、20年12月22日、容量20ギガで月2980円の新プランを2021年3月以降に提供すると発表。4Gと5Gが利用でき、5分までの国内通話、超過後の通信速度、容量追加やかけ放題への対応、手続きはオンラインなどahamoと同様の内容だ。オンライン専用ブランド「SoftBank on LINE」からの提供で、LINEのデータ通信量は無料(カウントフリー)、手続きはLINEでも行えるのが特徴的だ。
KDDIは21年1月13日、「povo(ポヴォ)」というオンライン専用ブランドを3月から開始すると発表。月2480円で使える容量20ギガのプランをベースに、「データ使い放題 24時間」(200円/24時間)など、さまざまな“追加トッピング”を選択できるシステムで提供する。基本プランでは電話は従量課金(20円/30秒)、音声通話をSNSアプリなどで賄う若者のニーズに応える。なお、5分までの国内通話を付けるとahamoと同様の内容となる。5Gには2021年夏に対応予定だ。
そのほか、UQ mobileとY!mobileも割安な大容量プランを発表、オンラインと店頭で受け付ける。MVNOの日本通信は「ドコモへの対抗プラン、堂々登場」というコピーと共に、月20ギガ(開始時は16ギガ、ahamoの開始日に20ギガに増量)、月70分の国内通話付きで1980円という「合理的20GBプラン」を始めた。サブブランドとMVNOのahamo対抗プランは今後増えていくと思われる。
混み合う場所、山間部・過疎地でのキャリアの強みは否めない。これに安さが伴えば、対抗するサブブランドやMVNOは、データ繰り越し・分け合いやカウントフリー(特定のSNSやゲーム、音楽などの通信を無料にするサービス)、無料公衆Wi-Fiなど、ユニークなメリットを加える戦略が期待される。
今後の動向および対策。5Gや今後の生活スタイルも加味したい
ドコモのahamoをはじめとした新プランに関しては、デメリットもある。各社が出す新プランは、基本的にオンラインのみのやり取りを想定している。今までカウンターで担当者に直接相談したり、実機を手に取って教えてもらったりなどの対面サービスがなくなる。チャットでのやり取りはできるが、ITリテラシーの度合いによっては厳しい面もある。端末の選定や入手、SIMなどのセッティング、設定や使い方など、ある程度のスキルをもって自前で行わなくてはならない。
家族割引や長期利用割引がなくなるのも大きい。キャリアの通常プランでも、家族でまとまる、容量を分け合うなどで、新プランの人数分よりコスパ良く使える場合もあり検討の余地はある。
なお、これまでキャリアを使っていた人は、ahamo、SoftBank on LINE、povoおよびMVNOへの変更で、キャリアメールが使えなくなる点にも注意だ。特に、ドコモの既存プランからahamoの場合など、同じキャリア内でも同様なので気を付けよう。新プランへの変更の際は情報をよく確認し、自己責任で行う必要がある。
ahamo開始の3月までには時間がある。それまでに見直しを行い、情報収集を行っておこう。ちなみにahamoには、キャンペーンサイトから有利な先行エントリーもある。
なお、総務省の「モバイル市場の公正な競争環境の整備に向けたアクション・プラン」では、公正な競争環境やユーザーが気軽に乗り換えられる環境整備とともに、「利用者が、多様な事業者及びその提供する料金プランやサービスの中から、自身にとって必要かつ適切なものを理解・選択し、できるだけ手軽に乗り換えることができるようにするための取り組みを進めていくことが必要である」という政府の意向をうかがい知ることができる。ユーザーとして心に刺さる言葉だ。