ビジネスを加速させるワークスタイル(第15回)
似ているようで違う、法人向け光回線の選び方
公開日:2021.11.12
令和3年(2021年)度税制改正で行われた「電子帳簿保存法」の大幅見直しをご存じだろうか。事前申請の廃止やタイムスタンプ・検索要件の緩和はありがたいが、2022年1月1日以降、電子取引は電子による保存が義務化される。これは、事業規模にかかわらず企業・個人事業主すべてが対象となる。切り替えの準備はお済みだろうか?
そもそも電子帳簿保存法(正式名称「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」)は、国税に関する帳簿や書類(国税関連帳簿書類)を電磁的記録(電子データ)で保存するのを認め、その方法を定めた法律だ。紙からデータに移行することで、紙を印刷・保管するコストの削減、紙媒体の紛失(人による持ち出しや紛失、火災など災害による消失など)の防止、働き方改革の推進(紙が存在する場所でしか仕事ができない状況をなくす)という3つの目的を果たす。
コロナ禍でのテレワークやリモートワークの増加で、各種書類が紙でのやり取りからデータでのやり取りに変わるなど、今回の改正は時代に合ったものといえる。
今まで、データで送られてきた取引書類を印刷して、紙と同等の運用をしてきた企業は多い。ところが今回の改正で電子取引は電子による保存が義務化され、しかも施行が迫っている。国税庁の「令和3年度税制改正による電子帳簿等保存制度の見直しについて」ページから閲覧できる「電子帳簿保存法Q&A(一問一答)~令和4年1月1日以後に保存等を開始する方~」を見ても、項目は多数にわたり頭を抱えてしまいそうだ。
そのうえ、保存要件を満たさない電子保存の場合は、青色申告の承認取り消しの可能性がある、と聞くとさらに青ざめる。決算が3月の会社でも、来年1月1日分から新しい電子帳簿保存法での保存が義務付けられ、うかうかしてはいられない。
今回の改正について、国税庁の「電子帳簿保存法が改正されました」というパンフレットは分かりやすい。詳しくは「令和3年7月9日付課総10-10ほか7課共同「『電子帳簿保存法取扱通達の制定について』の一部改正について」(法令解釈通達)等の趣旨説明について」の変更箇所下線ありの全体版を参考に。
今回の改正ポイントは3つ。1つ目は「事前承認制度の廃止」だ。これまで、電子的に作成した国税関係帳簿を電磁的記録で保存する場合は、事前に税務署長の承認が必要だった。事業者の事務負担を軽減するため不要とされた。
2つ目は、タイムスタンプ・検索要件の緩和。タイムスタンプの付与期間が「遅延なく」から「最長2か月とおおむね7営業日以内」に延長された。それに加え、訂正や削除の事実と内容、入力期間内のデータ保存が確認できる場合にはタイムスタンプが不要となった。検索要件は、取引年月日、取引金額、取引先の3項目に減らされた。なお、記録のダウンロードの求めに応じる条件で、範囲指定や組み合わせでの検索機能の備えが不要となった。
3つ目は、申告所得税および法人税における電子取引の取引データについて、印刷された出力書面などの保存を電子保存に代えられなくなったことで、電子取引のデータは電子での保存が必須となった。しかも電子取引の取引情報に関して、隠蔽や仮装の事実があった場合には、その事実に関して生じた申告漏れなどに課される重加算税が10%加重されるようにもなった。
承認制度の廃止とタイムスタンプ・検索要件の緩和という好条件を掲げつつ、「電子取引は電子データで保存」を徹底させる“アメとムチ”政策の背景には、需要はあっても事前申請や定期検査の煩雑さから利用率が極端に低かった実態がある。
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執筆=青木 恵美
長野県松本市在住。独学で始めたDTPがきっかけでIT関連の執筆を始める。書籍は「Windows手取り足取りトラブル解決」「自分流ブログ入門」など数十冊。Web媒体はBiz Clip、日経XTECHなど。XTECHの「信州ITラプソディ」は、10年以上にわたって長期連載された人気コラム(バックナンバーあり)。紙媒体は日経PC21、日経パソコン、日本経済新聞など。現在は、日経PC21「青木恵美のIT生活羅針盤」、Biz Clip「IT時事ネタキーワード これが気になる!」「知って得する!話題のトレンドワード」を好評連載中。
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