ビジネスを加速させるワークスタイル(第15回)
似ているようで違う、法人向け光回線の選び方
公開日:2022.02.16
最近耳にする「デジタルツイン」、IoTなどで物理空間の情報を集め、サイバー空間内にリアル空間をまるごと再現し、将来を予測する新しい技術のことだ。言葉が生まれたのは1990年代だが、現実空間とデジタル空間を対にして扱うこと自体はさらに古く、1970年のNASAのアポロ計画に遡る。飛行中に酸素タンクが爆発する事故に見舞われたアポロ13号の生還は、地球上でスタッフが行ったシミュレーションのおかげという。
現実世界の環境を仮想空間にコピーした、鏡に映したもう1つの世界のようなイメージで「デジタルツイン(デジタルの双子)」と呼ぶ。背景にはIoT、AI、通信技術、クラウドなどの進化があり、IoTで取得したさまざまなデータがクラウド上のサーバーにリアルタイムに集められ、AIが分析、処理を行ってよりリアルな物理空間が再現される。
デジタルツインは近年、主に製造業で活用されている。例えば工場設備の摩擦状況や稼働状況をリアルタイムなデータで把握、シミュレーションで破損や故障、タイミングを予測し、予期せぬダウンタイムの発生を防止するほか、必要なタイミングで必要な部分をメンテナンスし、効率化やコスト削減が図れる。とある工場では、人員の稼働や業務負荷の状況をリアルタイムで収集・分析、最適なスケジュールや人員配置で効率化を図っている。
デジタルツインは現実世界の状態を継続的に感知するセンサー、データを送る通信ネットワーク、データを集約・管理・活用する情報基盤、という3つの要素で構成される。近年のIoT、AI、5G、クラウド、携帯端末、3Dモデリングなど技術の発展により、ビジネス分野を含め広く活用されるようになってきた。
さらに、デジタルツインがトレンドワードに選ばれたり、新型コロナウイルスの感染拡大シミュレーションに使われたりして知名度も上がってきた。米Deloitte社の調査によれば、デジタルツインの世界市場は年率38%で成長、2023年には160億ドルに達するという。
疑問として挙がりがちなのが、「デジタルツインとシミュレーションは何が違うの?」という点だ。デジタルツインはもちろんシミュレーションの一種であり、シミュレーションの技術の1つでもある。従来のシミュレーションとの違いはリアルタイム性と、現実にある機器と仮想空間内のデータが常に同期して、現実も仮想空間も発展し続ける点だ。まさに仲良く育つ双子のようだ。
最近では現実世界のセンサーのほか、仮想世界にバーチャルセンサーを置き、双方からデータを集めることも行われる。これにより現実のセンサーの数を減らせて効率化につながったりもする。そのほか、従来現実で行ってきた実証実験を仮想世界で行ったり、プロトタイプを仮想世界上で作ったりすることもできる。このように現実をある程度仮想でカバーできれば、経費節減や効率化以外にも、危険予測による事故のリスク回避などの利点は多い。なお、デジタルツインの仮想空間に集まって共同作業が行えるのも、このご時世では有用だろう。
小売業ならショッピングセンターや街中での人の流れをモデル化すれば、効率的な通路の設計や商品の配置が見えてくる。医療では、手術や治療のシミュレーションを仮想空間で行っておけば、より安全で速やかな治療が実現する。
さらに都市まるごとを3Dデジタルマップで作成し、街中に取り付けたセンサーのデータや民間の情報と共に、自動運転、配達ロボットなど先端技術の導入や災害対策、ネットワークの輻輳対策、街づくり、生活インフラの供給などに総合的に役立てる構想も盛んだ。
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執筆=青木 恵美
長野県松本市在住。独学で始めたDTPがきっかけでIT関連の執筆を始める。書籍は「Windows手取り足取りトラブル解決」「自分流ブログ入門」など数十冊。Web媒体はBiz Clip、日経XTECHなど。XTECHの「信州ITラプソディ」は、10年以上にわたって長期連載された人気コラム(バックナンバーあり)。紙媒体は日経PC21、日経パソコン、日本経済新聞など。現在は、日経PC21「青木恵美のIT生活羅針盤」、Biz Clip「IT時事ネタキーワード これが気になる!」「知って得する!話題のトレンドワード」を好評連載中。
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