キャッシュレス決済については、このコラムでも何回か触れてきた。筆者がキャッシュレス決済を使い始めたのは2018年末に行われたPayPayの「100億円あげちゃうキャンペーン」がきっかけだ。当時は利用者も店側も慣れておらず、大変だったことを覚えている。
それによれば、わが国は少子高齢化や人口減少に伴う労働者人口減少の時代を迎え、生産性向上が課題となっている。キャッシュレス決済を推し進める背景として、実店舗等の無人化や省力化、不透明な現金資産の見える化、流動性向上と不透明な現金流通の抑止による税収向上、支払いデータの利活用による消費の利便性向上、消費の活性化などが挙げられる。キャッシュレスを推進して国力強化につなげよう、という考えだ。
2019年10月の消費税率引き上げに伴い、需要平準化対策として引き上げ後の9カ月間、中小・小規模事業者によるキャッシュレス手段を使ったポイント還元を支援する「キャッシュレス・消費者還元事業」が行われたのはまだ記憶に新しい。この事業によって多くの消費者がキャッシュレス決済を始めた、もしくは支払い手段を増やしたという。
キャッシュレス推進協議会の「キャッシュレス・ロードマップ2021」の「世界主要国におけるキャッシュレス決済状況(2018年)」によれば、韓国、中国、カナダ、英国、米国、フランスなど世界主要国のキャッシュレス決済比率は約50~95%と高い比率を示している。
外国でキャッシュレス比率が高い理由は、人手不足や現金輸送が困難、現金の強盗など犯罪が多いなど、さまざまな事情がある。また、経済産業省の「キャッシュレスの現状及び意義」によるとコロナ禍以前、日本でのインバウンド拡大時に訪日外国人の約7割が、クレジットカードなどが利用できる場所が今より多かったら「もっと多くお金を使った(おそらくを含む)」と回答したという。
キャッシュレス決済の普及には、コロナ禍も大きく影響している。例えば、キャッシュレス決済はレジにおける接触時間の短縮や現金を介する感染を防ぐなど、感染症対策にも効果的だ。加えて外出自粛、巣ごもり生活が求められ、ECサイトやデリバリーサービスの利用が増えたのも一因とされる。なお、昨年の金融機関の硬貨取り扱い有料化も、キャッシュレス化の流れで行われたものの1つだ。
キャッシュレス決済の種類
経済産業省の「キャッシュレス決済のいろは」によれば、キャッシュレス決済の手段は4つに分けられる。おさらいしてみよう。
1つ目はクレジットカード。日本国内の中で最も利用されているキャッシュレス決済の方法だろう。商品やサービスの代金はカード会社が立て替える方式で、後から支払い請求が来る後払い式の決済手段だ。一般的にカードを作るには与信審査が必要となる。
2つ目はデビットカード。商品やサービスの購入時に使用すると、代金が銀行口座から即時に引き落とされる即時払い式の決済手段だ。クレジットカードと違い、カードを作る際の与信審査は不要となる。
3つ目は電子マネー・プリペイドカード。カードやスマートフォンに事前に金額をチャージ(入金)し、商品やサービス購入時にチャージ額から支払う前払い式の決済手段だ。お店の窓口や券売機などでカードを入手し、入金は専用の機械を使う。あるいは、レジで現金を渡してチャージしてもらう、などの形式が多い。
そして、4つ目はスマートフォン決済。スマートフォンにアプリをインストールし、カード番号、電子マネーのID、銀行口座などの情報を登録する。前述の電子マネー・プリペイドカードと同じようにATM残高をチャージできるサービスもある。支払い方法は、店が表示するQRコードを読み取る、アプリに表示されたコードをお店の人が読み取る、専用端末をスマートフォンでタッチする、などの方法がある。スマートフォンの普及と世の中の流れにより、いわゆるスマホ決済はますます加速していくだろう。
キャッシュレス決済の今後は?
今後、いずれ訪れるであろうコロナ禍の収束により、インバウンド受け入れの再開・拡大が予測される。2025年の大阪万博をはじめとする、国際的イベントの予定もある。今後の国力強化や国民の生活向上のためにも、先を見越して早めに、グローバルな視野でキャッシュレス決済を整備したい。
キャッシュレス決済には、冒頭で触れたPayPayはもちろん各社のクレジットカードやデビットカード、Suica、楽天Edyなど多くのサービスがあるものの、店ごとに使える・使えないがあり煩雑でもある。複数サービスを使い分けるとポイントが分散してしまい、使う側としてはできるだけ絞りたい。
現状、日本人はもちろん訪日外国人にとっても、ストレスなくキャッシュレス決済を利用できることが当面の目標となるだろう。国によって利用する決済サービスが異なるのはもちろん、取引のほぼすべてをキャッシュレスで賄っている場合もあり、現金決済のみでは大きな機会損失があるかもしれない。
そこで注目されているのが、キャッシュレス決済サービスを一本化し、インバウンド利用にも対応した総合決済サービスだ。三井住友カードの「stera(ステラ)」やNTTデータの「CAFIS(キャフィス)」などが挙げられる。利用者にとっても、提供側にとっても、気軽にストレスなく使えて安全・便利なサービスを期待したい。今後の状況に注目だ。