Web3.0の代表的なサービスとして、仮想通貨・暗号通貨に代表される「DeFi(Decentralized Finance、分散型金融サービス)」や「NFT(Non-Fungible Token、非代替性トークン)」「Play to Earn(ゲームプレイで報酬を得るなど、「遊んで稼ぐ」サービス)」「DAO(ブロックチェーンを応用した自律分散型のビジネス組織)」などが挙げられる。
「Web2.0」は2005~2020年までをさす。Twitter、FacebookなどのSNSが生み出され、双方向のコミュニケーションが可能になり、ユーザーが自由に発信できる時代となった。これらを加速させたのが、AppleのiPhoneに代表されるスマートフォンだ。他方で巨大なプラットフォーマーに個人データが集中する仕組みが主流となり、GAFAなど一部の企業に利益が集中することとなった。
そして今、私たちはWeb3.0という新しい時代の始まりにいる。Web3.0は主要なプラットフォーマーのサービスを介さずに通貨や情報、唯一無二の価値などを扱える。デバイスはVRゴーグルやHMD(ヘッドマウントディスプレイ)。データは特定の企業やサーバーに置かれず、P2P(Peer to Peer、ピアトゥピア)の分散型で管理され、利益も分散する。では、こうした新しい波にどのように乗っていったらいいのだろう。
7月、経済産業省は「省内横断組織として『大臣官房Web3.0政策推進室』を設置しました」というリリースを出した。「資金調達・税制・事業体などの事業環境担当課室やコンテンツ・スポーツ・ファッション・アートなどの業種担当課室が一体で、デジタル庁等の関係省庁と協働し、ブロックチェーンを基盤としたWeb3.0に関連する事業環境課題を検討する体制を強化」するとしている。
この報道発表では「まずそのポテンシャルとリスクを正確に捉える必要があり、Web3.0関連ビジネスを行う起業家が国外に流出している状況も踏まえれば、日本国内の事業環境整備について検討スピードを上げる必要がある」「経済産業省としても省内各局に分散しているWeb3.0関係課室等が一体で政策立案を行うチームを発足」させ、新しい技術を積極的に研究、検討、推進していくとの姿勢を示している。
Web3.0で実現できること
その特徴は、「サーバーやサービス業者などの仲介組織を介さずに自由に取引ができること」「ブロックチェーンによるセキュリティの向上」「人種や国境を超えてサービスを利用できること」の3つ。
Web3.0では、所有権と管理は分散化され、ユーザーとビルダーは、代替不可能(NFT)と代替可能の両方のトークンで、インターネットの一部を所有できる。NFTによりアート、写真、コード、音楽、テキスト、ゲームオブジェクト、資格情報、ガバナンス権、アクセスパスなどのオブジェクト、代替可能なトークンでは通貨を所有できる。
話題によく出てくるのは、メタバースやオンラインゲームなど、インターネット上のバーチャル空間だ。フェイスブック社から社名変更したメタ社はメタバース「ホライゾンワールド」を拡大、その他マイクロソフト社はじめ、各社が参入しようとしている。
メタバースの世界でユーザーはアバターを通して自由に歩き回り、人と語り合う。ゲームやイベントに参加する、モノづくりや共同作業も行える。オフィスで仕事や会議もできるし、自宅や自室でくつろげる。どこへでも一瞬でワープし、何でも実現可能な世界だ。この世界では、前述のごとく通貨と価値あるオブジェクトを扱える。つまりこの二者により、取引やビジネスも成立する。なかなか面白い時代がやって来そうだ。
今後の予測。傾向と対策
以前、メタバースの記事にも書いたが、Web3.0は自由に国境を超えてコミュニケーションやビジネスが可能という夢のような話の一方、ルールや法律の整備、何かあったときの相談や通報をどこに行うかなど、さまざまな疑問がわいてくる。簡単に現在の動向を整理していこう。
デジタル庁「デジタル社会の実現に向けた重点計画」(2022年6月)は、「Web3.0の推進」をテーマの1つに掲げ、「デジタル資産の応用へ向けたルール整備や国際標準化が進展しつつある中で、政府として最先端の動向を把握し、研究開発と利活用ルール整備で世界をリードし、国際的な協調を図ることを通じて、誰一人取り残されない安全な利用環境と、技術者や起業家、事業者にとって魅力的な事業環境とを両立しつつ、デジタル資産が創出する新たな経済へのアクセスを確保して、人材の流出や規制の空洞化を防ぎ、経済成長に繋げることを目指す」としている。
また、3月に自民党から出された「NFTホワイトペーパー(案)」には「Web3.0時代の到来は日本にとって大きなチャンス。しかし今のままでは必ず乗り遅れる」とあり、Web3.0時代の責任あるイノベーションをけん引していくための姿勢を、6つのテーマで課題と提言を整理し、続いて岸田総理に概要を説明。翌月にはホワイトペーパーの内容を盛り込んだ自民党「デジタル・ニッポン2022」が政調審議会で了承された。
世界各国に比べてDX化の遅れやデジタルアレルギーを抱えるわが国においては、まず社会全体、国民一人ひとりの「DX化」への足固めが必要と思う。