仕事やプライベートに欠かせない「Microsoft Office」。ワードやエクセル、パワーポイントなど総合的なオフィスツールとして親しんでいる人も多いだろう。各種アプリが一式そろったスイートパッケージの他、パーソナル、ホーム&ビジネス、プロフェッショナルなど、用途に応じた組み合わせも用意されている。
1990年にリリースされたMicrosoft Office。パソコンが一般普及し始めた90年代後半、ビジネス向けのソフトとしては、ワープロ機能は「一太郎」が、表計算機能には「Lotus 1-2-3」などがよく使われていた。その後、Windowsがパソコン用のOSとして普及するにつれ、Microsoft Officeの人気が高まり、オフィスツールのデファクトスタンダードとして認知されていった。
「Microsoft 365」へのリブランド発表
2009年になると、クラウド上にドキュメントを作成、編集、共有できるオンラインアプリ「Microsoft Office Web App」(Web用ワード、エクセル、パワーポイント)の提供を開始。2011年には、サブスクで提供されるクラウド環境ベースの「Office 365」を企業向けに開始し、2013年には個人向けにも開始された(Office 365は2020年4月、「Microsoft 365」に名称変更)。
そして、2022年10月、MicrosoftはワードやエクセルなどのOffice製品を従来のMicrosoft Officeから「Microsoft 365」に変更すると発表。長年親しんだMicrosoft Officeという名称がなくなるとして、大きく話題を呼んだ。
その詳細については「OfficeはMicrosoft 365になります」を参照しよう。ワードやエクセル、パワーポイントなど個々のアプリは引き続き存在するものの、アプリ一式がそろったパッケージとしての「Office」ブランド名は廃止し、「Microsoft 365」ブランドに置き換えられる。
Office.comでの変更のロールアウトは11月から開始され、Windows版 OfficeアプリとOfficeモバイルアプリでの変更のロールアウトは2023年1月に開始を予定している。変更は自動で行われ、既存のアカウントやプロファイル、サブスクリプション、ファイルなどへの影響はないとされている。更新後には「Microsoft 365」という名称と新しいロゴに変わる。
買い切り版の「Office 2021」も発売。どんなもの?…
Microsoftは「新しいMicrosoft 365アプリをご紹介します」内の「よく寄せられる質問」にある「Officeは完全になくなってしまうのですか?」という質問に、「いいえ。Microsoft 365の一部として、今後もワード、エクセル、パワーポイント、アウトルックなどのアプリにアクセスできます。また、今後もこれらのアプリの1回限りの購入版がコンシューマーと法人向けにOffice 2021およびOffice LTSCプランとして提供されます」と答えている。
この「Office 2021」は、Windows 11と同タイミングの2021年10月に発売された。詳しくは「モダンになった Office」が参考になる。ラインナップについては「Office 製品ラインナップ」から参照可能で、購入については、ダウンロード版もしくはカードタイプのPOSA版か、Office 2021搭載のパソコン購入で入手できる。
リリースでは「Office 2021は、パッケージ版としても販売されています。これは、1台のコンピューターにOfficeアプリを取得するために、前払いコストを1回支払うことを意味します。ただし、アップグレードオプションはありません。次のメジャーリリースにアップグレードすることを計画している場合は、正規の価格で購入する必要があることを意味します」とある。つまり今後、Officeを利用するには、「Microsoft 365」に加入するか、あるいは、買い切り版(Office 2021)を購入するかの2択になると思われる。
「Microsoft 365」か買い切り版か。メリットやデメリットは?
サブスクか、買い切りのOffice 2021か、という選択については、「Microsoft 365」の購入ページにある「Microsoft 365とOfficeとの比較」が分かりやすい。
サブスク版は同時に最大5台まで利用できるので、あらゆる端末に入れ、いつでも好きな端末で使う、などの柔軟な使い方ができる。いつでも最新版を使い続けられ、1TBのクラウドストレージ、Microsoft Teamsなど多くのツールやサービスが利用できる。ただ、基本的にネット環境が必要な点と、使い続ける間は料金支払いが必要となる点はデメリットともいえる。
Office 2021は、一定期間使い続ければ、サブスクよりも低コストとなる点がメリットだろう。例えば、「Office Personal 2021」の購入であれば、サブスク約2年分で元が取れる計算だ。月・年払い料金が不要で、気楽に使えるメリットは大きい。ただし、1TBのクラウドストレージなどMicrosoft 365の付属サービスが基本的に使えない点はデメリットでもある。
そして、Office 2021のライセンスで同時利用できる端末は2台まで(プリインストールパソコンは1台)。基本的にインストールしたパソコンでのみで使うローカルな仕様は、オフライン環境である程度の作業が可能というメリットはあるものの、クラウド・テレワーク時代にはやや柔軟性に欠けると感じる部分もある。また、Office 2021のサポート期間はメインストリームサポートのみの5年間(2026年10月13日まで)と、従来よりも短く設定されている。この点にも注意が必要だ。
変わりゆくビジネス環境をとらえ、柔軟に変化
筆者の場合、パソコン3台に異なるバージョンのOfficeが入っている。それぞれ勝手が違い、かつストレージやメモリを多く消費するといった状況なので、サブスクへの切り替えを思案中だ。
Office 2021は「2年で元がとれる」といえど、サポート期間が従来よりも短い。ライセンスは永続するものの、サポート切れとなる可能性のあるアプリを使い続けるリスクは安全上避けたいところ。そう考えると、思ったより使える時間は少ないともいえる。さらに、次のバージョンの購入まで想定すると、サブスクのほうがお得なのでは、とも思える。
サブスクなら、端末内にインストールされたローカルなアプリやストレージ内のデータに縛られることなく、手持ちのあらゆる端末からいつでもどこでも利用でき、時代に合ったスマートなスタイルで使える。クラウドストレージやコミュニケーション、共有ツールなど、時代の流れに合った付属の機能も有用だ。
こう考えてくると、Microsoftとしては個別パソコンにインストールして使うローカルアプリである「Office」のイメージを脱ぎ捨て、時代に合ったスタイルの「Microsoft 365」にリブランドしたのではないか、と思える。今後、こうした変化はさまざまな場面で起こるのではないだろうか。変わりゆくビジネススタイルなど全体的に見据え、最適なITとの向き合い方や使い方を考えてゆきたい。
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