「Z世代」という言葉を聞いたことがあるだろうか。詳しい定義は後から述べるが、「1990年半ば~2010年代生まれの世代」を指すとされる。この世代は、「デジタルネイティブ」「SNSネイティブ」とも呼ばれ、生まれた頃からインターネットやデジタルデバイスが身近にあり、コミュニケーションはSNS中心で、情報の主な仕入れ元はネットという傾向が強い。また、テレビ視聴よりもネット利用時間が長いといった特徴もある(総務省「令和3年度メディアの利用時間」)。
Z世代との付き合い方に悩む経営世代が増えているという。特にIT関連では経営世代は学生時代以降にデジタル黎明(れいめい)期を迎え、ワープロやパソコン、ガラケー、スマホと、常に未知のものとして触れ、「デジタルアレルギー」を抱える経営世代もいる。この点、デジタルを大人になって取り入れ学んできた世代と、幼少期から親しんできた世代の間にギャップがある、という悩みを持ち、Z世代に対し「何を考えているかわからない」「どう接していいかわからない」という経営世代の声をよく聞くのもうなずける。
例えば、終身雇用が社会的に一般的であった時代を過ごしてきた経営世代からすると、難関を乗り越えて就職したのに、自身の自己実現に向けて気後れせずさらっと離職するケースも見受けられるZ世代を「理解しがたい」と思うのも無理はない。経営世代が従来のスタイルで接しようとしても、適切な伝え方に至らず、うまく本音を伝えられない、ということもあるだろう。
この「Z世代」とは、国際的な用語で、各国において1990年代中盤頃から2010年代序盤までに生まれた世代を指している。「X世代(1960年代~1980年までに誕生)」「Y世代(ミレニアル世代とも呼ぶ。1980年代~1990年代半ばまでに誕生)」に続くことから“Z”の名が付いた。日本ではおおむね1995年頃から2011年頃までに生まれた世代を意味している。
Z世代は、生まれながらにしてデジタルネイティブである初の世代とされ、最初からスマホなどのデジタルデバイスに触れてきた。基本的にスマホで各種のコミュニケーションはもちろん、調べ物や買い物、読書、ゲーム、仕事、就活などをこなす。パソコンは学校教育などで使い方を学ぶものの、自己所有しないことも多い。
経済が低成長の兆しを示す時代に育った彼らの特徴は、「チル(Chill、まったりゆったり)」と「ミー(Me、自己承認欲求)」という二つのキーワードで一般的に表されるという。例えば、自分の時間やペースを大切に居心地よく過ごすことを好む。また、幼いころからSNSや動画共有サービスなどに親しみ、炎上例も多数見てきてプライベートやセキュリティに敏感な反面、情報発信して「いいね!」をもらいたい、など自己承認欲求が強い傾向もあるとされる。
Z世代との意思疎通において、留意しなければならないのは、彼らは「Z世代」としてひとくくりにされることに反発心を抱く点だろう。多様性が時代のキーワードともなりつつある昨今、一人ひとりの個性や特性を認め、伸ばしていく姿勢と寛容さが必要だ。
意識差の解消には「理解」と「共感」がカギ
今後の経済成長のカギを握るDX推進が社会機運として高まる現在、デジタルに対する世代間の意識差は、デジタルアレルギーと同様にその進展に水を差しかねない。意識差というギャップがあることで、コミュニケーションに時間がかかることや、思い違いによってスムーズな意思疎通が図れず、不愉快な気持ちやストレスを抱えてしまうこともある。Z世代ならこうした状況が社内で続くと、他の居場所を探し始めてしまうかもしれない。
DX推進への適応力は、ともするとデジタルネイティブな若い世代のほうが得意で効率的なケースもある。何とか双方がうまくコミュニケーションを図り、DX化を推進していきたいところだ。筆者としては、昭和世代は何事も「しなくてはならない」と思って「頑張る」癖があるが、肩の力を抜いて楽しくいかなければ、長続きは望めないと思っている。
経営世代は、まず、さまざまな先入観を捨ててZ世代一人ひとりの個性や大切にしている思いを理解するように心がけよう。「よいところを10個挙げる」とよくいうが、心静かによいところに注目、本質が見えてきたら、見つけたよいところをどのように生かせるかをよく考えて適所に配置し、たまのアドバイスとともに温かく見守ろう。その際は、ビジネスの基本を忘れずに今後の計画を立てていくこととも大切だ。既存のプロセスや方法の見直しに業務の新規開拓、改善点や要望の実現など、効率化を進めていくことも忘れずに行いたい。
Z世代の「接し方」と「伸ばし方」。共にDX化を推進するには?
最近、若い世代が古いものに興味を持つ傾向が各種報道で取り上げられている。例えば、「レコードやカセットテープは音がまろやかで癒やされる」ということで、探し求める若い世代が増えているなどだ。
上記は一例だが、誰しも好きなものやスタイルを持っている。共通の話題や共感を突破口に、Z世代の心を開くとよいだろう。得意とするSNSに参加するのも一つの手だ。一人ひとりの個性や特性を認め、出来事や気持ちは「いいね!」で共感し、出した結果は正当に評価する。こうした幅広い視野と本音で接し、居心地のよい場所と人間関係を作っていけば、驚くほどの成長を見せてくれるだろう。そして、たまに共通の趣味やスポーツなどを一緒に楽しめればなおよい。
Z世代は、すでに労働人口の20%を占めるともいわれる。常識にとらわれず「気のいい」一面もあり、一度離れても、何かの機会に遊びに来たり、戻ったり、力を貸したりなども抵抗なく行える面もあるという。経営層としては、Z世代の持つ多様な可能性を引き出すためにも誠実な姿勢で向き合っていこう。その先に、DXがさらに進展した活気ある未来があるはずだ。
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