最近よく聞く無人店舗のニュース。無人店舗や無人販売といえは、シンプルなものは、お金を入れるだけで商品が出てくる自販機や、箱にお金を入れて好きな野菜を持ち帰れる農産物無人販売所などを想像するが、最近のものはスマホでの認証や決済など、ITを駆使した、高度なものも多いと聞く。
昨年、街中を散歩していて見つけた24時間営業の冷凍餃子の無人店舗。家に帰って公式サイトやニュースなどを調べたところ、2018年9月に無人店舗の1号店を誕生させ、約4年で全国430店舗を展開する、群馬に拠点をもつ「餃子の雪松」だとわかった。報道によるとコロナ禍で誰とも対面せずに購入できる点が喜ばれるなどで、全国的に展開していったのだという。公式サイトで利用方法を確認し、早速次の日、私も利用してみた。冷凍庫から商品を取って代金を箱に入れる。どちらかといえば先述の農産物無人直売所に近い方式だ。日々の支払いをほぼスマホ決済で済ましている筆者は、スマホ決済に対応してくれていれば、と思った。
入店すると、モニターで商品の買い方や餃子の焼き方を案内するビデオが自動で流れる。餃子を冷凍庫から、タレを冷蔵庫から取り出して(商品は餃子とタレの2つ)、箱に代金を入れ、無料分の保冷剤とともに商品を備え付けの袋に入れ、店を出る。帰り道、果たして利用法に間違いはなかったか、商品や現金の入った箱が無人で置かれていることから店舗が盗難にあうリスクなど、いろいろ考えた。ニュースによれば、開店に当たっては防犯上の観点から、社内からも反対があったというが、トラブルはほぼなく、全店で採算が取れているという。
最近ニュースを見ていて興味がわいた1つめの無人店舗は、東京都の溜池山王駅に9月26日オープンした「ほんたす」だ。「新しい本屋のカタチ」として、「入りやすく、使いやすく、選びやすく、買いやすい。無人でも安心して利用でき、ストレスフリーでスマートな本屋体験」を提供する。サイトを見ると、スマホでサイトもしくは店舗入り口にあるQRコードをスキャンしてLINEの友だちを追加して会員登録、LINEの会員証(QRコード)を入り口のリーダーにかざして店内に入り、欲しい本のバーコードをスマホで読み込み決済を行い、出口のリーダーにスマホをかざして店舗から出る、という流れ。
2つめに心引かれたニュースは、無人決済システムを導入した24時間営業の「シャトレーゼ西麻布店」。11時~20時までは、従来の店舗同様、店内で焼き上げるケーキ、焼きたての菓子などを有人で販売するが、その他の時間は無人決済システムに切り替わり、早朝や夜遅い時間のニーズにも提供するという(同社のニュースリリース参照)。シャトレーゼ西麻布店の無人決済システムは、天井に設置されたカメラなどの情報から、入店した客が手に取った商品をリアルタイムに認識。出口付近の端末に表示された購入商品と合計金額を確認し、決済すれば買い物が完了する。
先述の餃子の雪松の他、現在国内で展開する無人店舗は、国内で160店舗展開している肉専門の「おウチdeお肉」、東京都中野区で古着を無人販売する「ムジンノフクヤ」、東京都武蔵野市の無人販売古書店「BOOK ROAD」などさまざまなものがあり、成功例も増加しつつある。
一方で、無人店舗で料金を払うふりをして商品を持ち去る事件が相次いでいるという報道もある。こうした防犯問題ももちろんだが、商品を間違えた場合や汚れなどの不具合があったときの対応など、便利さの陰に、課題も多く存在しそうだ。
無人店舗の歴史と、そのメリットとデメリット
現代的な「無人店舗」を「IT技術を駆使し、入店から決済、退店まで人の手を介することなく商品を選定・購入でき、キャッシュレス決済を使用できる店舗」と定義すれば、意外と歴史は浅く、2016年に1号店を開店した中国の無人コンビニ「Bingo Box」が最初といわれる。その他、アメリカでは2018年にシアトルでAmazonが開店した「Amazon Go」がはじめといわれている。
無人店舗の方式は3つある。1つめは先述のシャトレーゼやBingo Box、Amazon Goなどのように、カメラ、センサー、AIなどのテクノロジーを駆使し、出し入れする商品やお店での顧客の行動を検出し、利用客がカートに入れた商品を自動で追跡、出口付近の端末で決済を行う「ジャストウォークアウト」と呼ばれる方式だ。ただしこの方式は、ハードウエアとテクノロジーのコストが高くなることが難点とされる。
2つめは「ほんたす」のような「セルフチェックアウト」方式だ。客がスマホやセルフレジ端末などで商品を選んだりコードを読み込んだりするなどで商品をカートに入れ、精算機やキャッシュレス決済などで精算を行う方式だ。こちらはジャストウォークアウトに比べてハードウエアやテクノロジーのコストが低く済むのが特徴といわれる。そして、3つめは、自販機コンビニなど、自動販売機を並べた店舗のこと。最近では飲料品以外にも食品や日用品など、幅広い商品を販売するものも多く、自販機が再注目されている。
無人店舗のメリットとしては、レジスタッフが不要となるなどでの省人化が実現できる点や、24時間営業可能な点、利用客の買い物が短時間で済ませられる点、そしてシステムにより顧客を特定し、店内行動や何を購入したかなど顧客のデータが把握でき、効果的な商品管理や顧客への情報提供につなげられる点が挙げられる。デメリットとしては、認証機器やセンサー、カメラ、キャッシュレス決済システムなど、必要な機器の設備コストが大きいことや、消費者が無人店舗や操作に慣れていないこと、防犯・万引き対策が必要なこと、商品の返品交換や停電、システムエラーなどに即座に対応しづらいことなどが挙げられる。
今後はどうなっていくのだろうか
無人店舗に関しては、海外で、先ほど先駆者として挙げたBingo BoxやAmazon Goが、必ずしも成功していない事実が気になる。というのも、Bingo Boxは大規模なリストラと閉店が進み、現在はわずかな店舗が残るのみと聞くし、Amazon Goは、街中の店舗はやめて郊外型に切り替えるなど、経営方針替えしたとのニュースもあるからだ。
他方、国内では無人店舗展開のニュースやその成功例を耳にすることは、コロナ禍が終息した今でも多いと感じる。24時間いつでも利用できたり、すみやかに買い物ができたりするのはライフスタイル的にもありがたい部分が多くある。日本での無人店舗の未来は明るいと感じる。
しかし、まだまだ人々は無人店舗に慣れておらず、利用にはなかなか勇気が要る。ITスキルの低い人や機械が苦手な人は、スマホや店内の端末を操作するのが面倒、という点もある。無人店舗を考えるのなら、どんな方式にするか、課題にどう対応するかなど、社内で知恵を絞るのはもちろんだが、さまざまなベンダーが無人店舗ソリューションを提供しているので、自社に合いそうなものを検索し、検討・相談するのも手だろう。システムや事情に詳しいベンダーとともに、自社に合ったシステム、顧客にやさしいシステムを模索していくのがおすすめだ。
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