2015年7月29日にリリースされた「Windows 10」を使っている人も多いだろう。WindowsはVista以降、7、8 (8.1) と数字でナンバリングされてきたが、9を飛び越して「10」とされた。マイクロソフトは「10」について「新世代のWindows、そしてあらゆるデバイスで包括的に動作する幅広いプラットフォームである」とし、「Windows 10はWindowsの最後のバージョン」と発言した。
Windows 10はデスクトップUIやスタートメニューの復活、音声認識アシスタント「Cortana」の搭載などが特徴、8年以上の間、親しまれてきた。ところがその後、マイクロソフトは「10が最後」発言を撤回、2021年10月5日、デザインが一新され新機能が追加された「Windows 11」をリリースした。
現在も「10」のユーザーが多いのは、「使い勝手がよく長く親しまれてきた」こともあるが、「最新OSであるWindows 11のシステム要件が厳しい」というのも大きな理由の1つだ。11のリリース時よりWindows 10ユーザーに向けて、11への無償アップグレードが提供されているが、その厳しいシステム要件ゆえに、11にアップグレードできないパソコンが多く取り残されている、というわけだ。筆者宅でもシステム要件が足りずに11にアップグレードできない3台のパソコンでWindows 10で使い続けている。
システム要件にかかわらず「使い慣れた10がいい」「アップグレードしたくない」などの理由で10を使い続けている場合ももちろんあり得る。ただし、どのOSにも終わりは来る。ぎりぎりで慌てるよりは余裕をもって移行するほうが賢いだろう。マイクロソフトは基本的に、製品発売後、最低5年間のメインストリームサポートと最低5年間の延長サポートを、合計で10年間提供する姿勢を示している。親しんだWindows 10の「期限」が来年に迫っている。では、その時が来るとどうなってしまうのだろうか――。
「オンラインの安全性」を得るためには「最新バージョンのWindowsへの更新」と書かれている。期限後はWindow 11でないと安全性が確保できない、ことになる。なお、たとえ最新のMicrosoft 365やMicrosoft Officeであっても、サポートを終了したWindows 10上であれば、それらもサポートされないので注意が必要だ。ところで、「オンラインの安全性」というのなら、「オフライン」なら良いのでは、と考えることもできるが、外部とUSBメモリなどでやり取りするデータやプログラムによるリスクなどを考えると、やめたほうが賢明だ。
ところで、Windows 10を使い続ける人が多ければ、XPのようにさらなるサポート延長措置が取られる、IEのように「起動しなくなる」、など何らかの対策を講ずる可能性もあるが、今のところリリースはない。今後10について何らかの方向転換の可能性も想定し、こまめに情報をチェックするのがよいだろう。
パソコンは機能するが、更新プログラムを受けらないリスクも
先ほどのページには「お使いのパソコンは引き続き機能しますが」とあれど、企業や事業所で使うパソコンとなれば、あらゆる可能性を想定しよう。Windows 11は「セキュリティ重視」である、と先ほども述べた。バージョンの低いパソコンをターゲットにされ、攻撃の踏み台にされる可能性もある。期限後は、特に企業において、Windows 10は使わない、使ってはいけない、と考えたほうが無難だ。
この問題に対しては早めに対策を行おう。まずは今のうちに、できるものはWindows 11にアップグレードする。可能性が少なくても、パソコンがアップグレードの要件を満たしているかどうか、マイクロソフトの「PC正常性チェック」ツールで確認しておこう。
「Windows 11のご紹介」ページを下までスクロール、「互換性の確認」欄にある「PC正常性チェックアプリのダウンロード」をクリックして、「Windows PC Health Check Setup」ファイルをダウンロード、引き続きインストールを行う。「PC正常性チェック」が起動したら「今すぐチェック」を押す。
アップグレードできると表示された場合は、今すぐ、もしくはなるべく早く行うのがよい。なぜなら「Windows 10のサポート期限に注意。2025年まで使うには?」で書いたように、マイクロソフトがいつまで無償アップグレードを提供するか正式にリリースされておらず、突然打ち切られる可能性もあるからだ。
「このPCは現在、Windows 11システム要件を満たしていません」といわれた場合は、内容をチェック、パーツの取り換えなどで対応できる場合はシステム要件を整えて再びチェックし、OKならアップグレードを行う。なお、ちまたにはWindows 11へアップグレードの「裏技」も見つかるが正攻法以外はやめておこう。なぜなら、Windows 11のシステム要件の厳しさの理由の1つが「より高次元のセキュリティへの対応」であるから、裏技でのアップグレードでは十分なセキュリティが確保できない可能性が高いからだ。
Windows 11の無償アップグレードの手順についてはマイクロソフト「Windows 11 無償アップグレード方法や条件を解説」ページ、もしくは「Windows 11が発売。無償アップグレードの方法」を参考にしよう。なお、通常のWindows Updateから行える場合もあるので、チェックしてみるのも手だ。
11にアップグレードできない場合は、新しいWindows 11搭載パソコンを入手するしかない。11のリリースから3年が経過しようとする現在、Windows 11搭載もしくはWindows 11にアップグレード可能なWindows 10搭載の中古パソコンもある。筆者も中古パソコンを安価に入手し、11にアップグレードして使っている。
Windows 10を期限ぎりぎりまで使うなら、最終バージョン「22H2」での運用が必須
Window 11搭載パソコンを入手した場合、Windows 10のパソコンが余るが、2025年10月14日のサービス終了までは活用できる。ただしこのサービス終了期日は、Windows 10の最新版であるバージョン「22H2」(最終版)にのみ適用するものなので注意が必要だ。
「Windows 10のサポート期限に注意。2025年まで使うには?」にも書いたが、「ライフサイクル Windows 10 Home and Pro」によれば、バージョン「22H2」は終了日が2025年10月14日だが、その前の「21H2」は2023年6月13日というように前バージョンへのサポートは終了しており、終了日まで使うなら「22H2」でなくてはならない。
Windows 10の「設定」を開き、「システム」→「詳細情報」をクリック、「Windowsの仕様」からチェックできる。この中の「バージョン」が「22H2」ならOKだ。それ以前のバージョンなら、すぐにWindows Updateなどから最新バージョンにアップデートしよう。万が一、アップデートができない場合は、情報システム担当やサポートに相談するなど、「22H2」にする方法を探ろう。できなければ、使用を中止するしかない。
期限までWindows 10を使う場合、安全に対して細心の注意が必要だ。自動更新は必ず行う、Windows Updateで「更新プログラムを確認」をこまめにチェックして更新があれば必ず行う。常用するアプリケーションや周辺機器のファームウエアなども常に最新に保つよう心がけよう。これは11であっても行うべきことだが、作りが古い10のほうが狙われる確率も高く、注意を怠らず管理するのがよい。
今後どうなる? 傾向と対策
Windows 10の終わりが見えた今、今後の取り回しをよく考えて、計画的にアップグレード/リプレイスを行っていくのが、賢いパソコンの運用だろう。なお、Windows 11のライフサイクルも「Windows 11 Home and Pro」にまとめられているので参考にしてほしい。これらの管理は、個人用のパソコンにおいては、必ず判断しなくてはならないことだ。もし判断できない場合は、パソコンに詳しい家族や友人、同僚などに相談するなどで対処するのが良いだろう。
ただし、会社のパソコン、もしくは仕事にも使うパソコンとなると事情が変わってくる。来年の10月を期限にWindows 10搭載パソコンが使えない、となると、策を練らなくてはならない。10と11では画面も操作も異なるため、操作に慣れないと業務もコミュニケーションも滞る、などの可能性もある。早めの切り替えが必要だ。
情報システム担当は通常、ITインフラの管理や保守・運用を行うが、一気に多くの台数の入れ替えを管理するのはかなりの負担となる可能性がある。特にこうしたOS移行の過渡期においては「操作がわからない」などの質問が多発し、担当者が「いくつ体があっても足りない」「他の業務が滞る」事態に陥ってしまう。
そうした問題の解決には、パソコンの管理や保守、ヘルプデスク、トラブル解決などパソコンの保守・運用を一体的に取り持つソリューションを探して委託するのが有効だ。さらには、パソコンやOS、ソフトウエアなどをまるごとリースやレンタルでまかなうこともできる。その上でパソコンの保守・運用もセットで委託できれば、情報システム担当や、パソコンに詳しいなどで頼られがちな社員の負担も減る。専用の窓口があるとなれば、社員も安心して質問や相談ができ、いいことづくめ、ともいえる。
パソコン関連のソリューションやサービスは、Web検索すればたくさん見つかるので、自社の環境や用途に合ったものを選ぼう。場合によってはベンダーなどに相談するのも手だ。状況に応じてグループウェアやAIチャット、社内wikiなど導入したいサービスとともに端末(パソコン)も、という形の導入もありだ。なお、やりようによっては、デスクトップからノートパソコンに移行しオフィスをフリーアドレス化する、タブレットやスマホなどの操作や管理が比較的やさしい端末を使うなどアイデアは広がる。先を見据えて広い視野と柔軟な思考で対応しよう。「ピンチ」を「チャンス」と考え、策を練った方向が、企業の大きな発展や社員の快適な環境づくりにつながる事態も大いにあり得る。常に前向きに進むべき道を探そう。
※掲載している情報は、記事執筆時点のものです