前回は、ゴールドスワンキャピタルの強みと流儀について紹介した。第3回は、地方不動産を扱う際に欠かせない、地元密着というキーワードについて解説する。
ゴールドスワンキャピタル(「地方不動産投資」で高収益投資市場を創出する事業)第3回
地元不動産会社から情報収集
伊藤邦生社長。地方にある優良な投資チャンスを探し、投資家に提供するビジネスモデルを構築、新たな投資機会を拡大中だ
勝ち組エリアを見極めた後は、そこで少しでも条件の良い物件を購入するために、地元の不動産売買の会社とのネットワークを構築していきます。関係性を深めることで、多くの物件情報が入ってくるようになります。
伊藤社長は創業前に個人で不動産投資を始めた時から、不動産会社とのネットワーク構築を心掛けてきました。密に連絡をしたり覚えてもらったりするための地道な努力を積み重ねた結果、現在、毎月100棟以上の物件情報が同社に寄せられています。これが同社のもう1つの強みである物件の「運営力」です。
実際にそのエリアを訪れたときは、まず立地の良い場所にある、できるだけ古い不動産会社を回ります。
「今でも覚えているのが、仙台の物件を探していたときのことです。ある古い不動産屋に入ったら、中に誰もいないんです。おかしいなと思ってよくのぞいてみると、奥の方でおじいちゃんが寝ていました。
「すみません」と起こして話をしたのですが「この前いい土地仕入れたんだよ」とアパートではなく土地を売ろうとする。土地の話から、今度は「このエリアはワシが開発したんだ」というような過去50年くらいのおじいちゃんの武勇伝を30分くらい聞きました。これは無理かなと思っていたときに「そういえばこの前銀行の人がこんなアパートがあるよと置いていったよ」と持ってきたのが、利回りのいい物件だったんです」
このように特に古い地元の不動産会社ほど、お宝物件が眠っていることがあるといいます。不動産会社の中でも優秀な営業担当者と仲良くなることも大事だといいます。優秀な賃貸仲介の営業担当者と仲良くなると、現地に出向かなくてもその人と話すだけで良い物件なのか悪い物件なのかの判断ができます。2~3人と仲良くなり意見を聞くようにすると、良い物件の場合は全員が同じ意見のことがほとんどだといいます。
物件を購入後、入居付け、いわゆる入居者を募集していく際には、今度は賃貸仲介の不動産会社とのネットワークが必要です。入居率が確保できなければ不動産投資は成功しません。…
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現地視察する前に、地方の不動産会社から寄せられる物件を確認するスタッフ[/caption]
地元不動産会社とのやり取りについて、伊藤社長が第一に心掛けていることが、最初に「満室経営をめざす」ことをハッキリ伝えることです。地方は「7~8割入居していればいい」と考える不動産会社も多く、そのような意識の場合、それ以上はあまり積極的に入居者を集めてもらえないのだそうです。
伊藤社長が賃貸仲介の不動産会社を回るときに必ず持って行く三種の神器があります。それは、「物件概要(広告)」「顔写真入りの名刺」「手土産」です。物件概要は営業担当者にその物件を知ってもらうために必ず必要ですが、さらに余裕があればパワーポイントなどで物件広告も作ります。その広告を店頭に張り出してもらえることがあるからです。
顔写真入り名刺は自分のことを覚えてもらうためです。
そして手土産はスカイツリーのお菓子など東京にちなんだものを持って行きます。お菓子をもらうと営業担当者も少なからず頑張ろうという意識になります。また、会社員の場合、地方に行けるのはどうしても土日になりますので、営業担当者が忙しくて出払っていることもあります。
お菓子を置いていけば、「○○物件の伊藤さんからです」と、会えなかった営業担当者にも印象付けることができるのです。このような細やかな気遣いにより、ゴールドスワングループの物件は高い入居率での賃貸経営が実現できているのです。
入居率0%の物件を約7カ月で満室に
エリア分析力、物件の運営力、そしてもう1つの同社の強みに物件の「再生力」が挙げられます。ただ物件を購入するだけでなく、入居率は低いけれど、再生の可能性のある物件をリフォームして、蘇らせ入居率を高めるのです。
2013年12月に同社が購入した三重県松坂市の物件を紹介しましょう。
これは、もともと名古屋の不動産ファンドが約3億5000万円で購入した物件だったそうです。しかし、伊藤社長がこの物件のことを知ったときには全87室が空室の状態でした。地元の不動産会社に話を聞いてみると、誰もが「こんな物件を買っては駄目だ」と言ったそうです。
しかし伊藤社長は、このエリアの市場規模や毎月の入退去の動き、物件を探している人の数、成約件数などを分析し、「松坂市だったらこの規模の物件は運営できるだろう」と考え、7000万円で購入を決めました。
何年も誰も住んでいなかったためボロボロになっていた全室を、3000万円掛けてフルリフォームしました。単に内装を奇麗にしただけではありません。間取りが1Kなので、単身者が入居したくなるようなデザインやインテリアを意識し、5パターンのデザイナーズルームを作りました。「松坂市にこんな部屋ないよ」という物件に生まれ変わり、その結果、全87室がほぼ満室の状態になりました。
緻密なエリアマーケット分析力、判断力と、入居者のニーズに合わせたフルリフォームにより、地元の大手不動産会社でさえちゅうちょした物件を、「勝ち組物件」へと蘇らせることができたのです。
同社が物件再生のときに大事にしているポイントは次の3つです。
1. 魅力的な建物・設備にする
2. 不動産会社にとって魅力的な物件にする
3. 入居者にとって魅力的な物件にする
これまでに同社が取引した物件は売買時の平均入居率は65%ですが、購入半年後の平均は91%となっています。
『なぜ新事業が起こせるのか?飛躍するベンチャー7社に学べ!』/森部好樹著