シーピーユーは、営業組織に特化したコンサルティング会社です。同社のコンサルタント兼コーチングスタッフが企業に入り込み、徹底的に取り組みます。そして「売り上げが上がらなければ、料金は返金します」とうたっています。具体的には、ウェブ診断、営業職への面談で、まず営業組織の現状を正しく把握します。
その特徴は、ウェブ診断によって理解力・表現力などの基礎能力、応用能力、管理者適性能力などを調査し、各個人の能力特性、性格特性が分かるようにレポート化。また、モチベーションや情報共有など、マネジメント層と営業職の間にある課題が明らかになる組織アセスメントレポートを作成します。
さらに、営業職への面談で、現場の人が上司に言いづらいこと、改善すべきだと思っていながら放置していることなどを聞き、事実か意見かを判断して、実名・匿名を使い分けて経営者にレポートします。
とかく経営層は裸の王様になりがちです。しかし、現状を正しく把握せずにテクニックに走っても、仮に一時的によくなったとしても長続きはしません。徹底的に現実と向き合う必要があります。
現実を直視し、客観的に分析すると、そこには売り上げアップを阻止しているさまざまなロス、ミスが明らかになるはずです。そのロス、ミスを組織として取り除いていけば、組織営業力がアップし、売り上げも上がることになります。ロス、ミスの解消方法は、同社スタッフがコーチング手法を用いて経営層と決めていきます。
営業職が10人いたら、一般に、ハイパフォーマー:ミドルパフォーマー:ローパフォーマーは2:6:2に分かれます。シーピーユーの米田哲郎社長によると、組織としてロス、ミスの解消法が決まれば、上位レベルの営業職はそれに適応できます。問題は、それよりも下の人たちです。そこで同社のスタッフは、ミドルパフォーマーの下3人(10人中上から数えて6・7・8番目の人)を重点的にフォローアップします。営業同行をして、プロセス・行動・顧客接点を徹底的に見ていきます。
いわばこのレベルの人たちは“やればできる人”たちです。ただ、目標がしっかりと見えていなかったり、目標は見えていてもその道筋が分からなかったり、次の一歩に何をするのか分からなかったりしているだけ。それを1つひとつクリアにしていくのです。
「実は、通常のマネジメントが手を焼いているのがこのレベルの人たちで、なおかつ上昇幅の大きな人たち」と米田社長は言います。だからこそ、この層の営業力を強化することで、組織全体を大きく成長させることができるのです。
一方で、経営層に対しては次のように働きかけます。まずは、営業現場で起きている事実や、組織を根本的によくするための課題など、現実を知ってもらうことから始めます。次に、営業職が何かの成果を出すごとに「よくできた、すごい」と褒めるようにするのです。これは、営業職にとって成功体験になるだけでなく、経営層にとっても、部下の変化に気付いて褒めることが自身の成功体験になるからです。
このようにして、成功体験を1つひとつ積み重ねていって組織営業力をアップさせ、経営層とミドルローパフォーマーといった、上からと下からと挟み込んで引き上げるスタイルが、同社のコンサルティングの特徴です。
組織的営業力をアップさせるサービスをパッケージ化して提供
学生時代、日建リース工業創業者・関山正氏の自宅に書生の1人として住み込んでいた米田社長は、人間として大事なこと、独立してできることなど、一緒にご飯を食べながら関山氏が語ってくれることを毎日聞く中で「自分もいつかは独立しよう」と心に決めていきました。
大学卒業後、海外で働きたいと考えていたところ、知人の紹介でレーシングドライバー佐藤琢磨氏のマネジャーとして渡英することになります。佐藤氏がまだF3で走っていた頃で、ファンサイトを立ち上げたり、メディア対応をしたりといった仕事に米田社長は身を投じます。1年ほどして、佐藤氏はF1に上がることになり、米田社長はマネジャーを辞めて帰国しました。
その後、米田社長は行動力とコミュニケーション力を買われ、2002年サッカーワールドカップ向けのスタッフとして電通に中途入社。ワールドカップ後は、雑誌局を経て、新規事業立ち上げの仕事に関わりました。リクルートと一緒に立ち上げた情報誌「R25」もその1つです。もとより、いずれは独立したいと考えていた米田社長ですから、さまざまな事業に積極的に携わっていきました。
こうして、11年にようやく独立を果たします。マンガを取り込んで動画にしたコンテンツを中国・韓国で配信するビジネスを立ち上げたのでした。ところが、日本でコンテンツを用意するまではうまくいくのですが、それを海外で配信する共同パートナーがきちんと機能しません。結局このビジネスは行き詰まり、半年でやめることに。1500万円以上を失うことになりました。この失敗を機に始めたのが、サラリーマン時代に培った組織づくりに関するコンサルティングです。米田社長は知り合いのベンチャー企業に「お手伝いできますよ」と声を掛けてコンサルタント的なことをタダでやっていきました。
タダとはいえ、手抜きはなしです。しかし、数カ月すると家族を養うお金もなくなり困り果てて「同じことをやりますから月額報酬契約にしてください」と伝えると、そのときお手伝いしていた13社中12社が契約してくれたそうです。「組織づくりとか、新規事業の立ち上げも体系化できればビジネスになる」ということを、米田社長が知った瞬間でした。
しばらくはベンチャー企業向けにコンサルティングをしていましたが、大企業に対して組織的営業力をアップさせるサービスをパッケージ化して提供する方向に次第にシフトします。そして、15年1月に大企業モデルの新会社シーピーユーを立ち上げます。
同社が対象とするのは主に大企業です。ベンチャー企業の場合は、いろいろなネットワークを持つ会社が条件となります。例えば、有力な顧問を抱えているとか、経営者や士業など。というのも、人脈をつくるのが最も重要と米田社長は考えるからです。
コンサルタントとして、たとえ自分1人の力で解決できない問題があったとしても、ネットワークを使って解決できるのであれば、仕事の幅が広がり、自分の価値を高めることができるからです。
自身の人脈づくりでも、経営者団体の事務局と仲良くなって人を紹介してもらったり、母校である栄光学園の同窓会の広報委員となったりして、政財界の著名OBと直接会えるように努めています。
お客さんの期待値を超え、満足を与える
「営業コンサルに入って営業職に伝える基本的なことは、顧客視点に立つこと、お客さんの期待値を超えることの2つ」と米田社長は言います。特にユニークなのは「今の行動は期待値を超えましたか」と、ことあるごとに聞くこと。そこから「期待値を超えるためにはこういう方法がありますよね」とコンサルでいくのか、「期待値を超えるためにどうしたらいいと思いますか」と相手に気付かせるコーチング手法でいくのかを、人とケースに応じて変えていくそうです。
「お客さんの期待値より1つでも上を行くことができれば、お客さんは満足します。その満足を何回もつくっていくことが営業で大切です」と米田社長は話します。
このことは、同社が顧客に提供するサービスについても同様です。そして、顧客の期待値を超え、満足してもらえれば、顧客は次の顧客を紹介してくれます。このような形の紹介営業で、売り上げを伸ばしているのです。
同社は今、新しいテーマとして経営者や従業員が健康になっていくサービス=「健康経営」に取り組んでいます。個人が日常的に姿勢や体を意識するようになれば、良い営業結果につながり、企業全体が変わっていくからです。ひいては、このような“カラダイノベーション”を起こして経済の活性化に貢献し、日本をもっと元気にしていきたいと考えています。
MORIBE's EYE
人材教育、コーチングの会社がたくさんある中で、この会社のユニークなのは、10人いれば下から3・4・5番の評価の人を上から2・3・4番に引っ張り上げること。さらにユニークなのは、最初に会社と約束した成果が出なければ、返金をすること。まさに背水の陣。だから、成功率100%。
※情報は記事執筆時点(2016年7月)のものですが、一部2017年9月に最新の情報に更新しました