日本の企業社会にとって名刺交換はビジネスのスタートに欠かせない行為。ただ、これまで、せっかく収集した名刺はフォルダーやケースなどに納められて、個人のものとして扱われることがほとんどだった。
しかし、名刺交換は企業活動の中の業務の一環であり、その情報は企業のものと考えるべきだ。名刺情報は個人の財産ではなく、企業資産であり、それを社内で生かすことのメリットは計り知れない。しかし、現実には、社員一人ひとりが持っている名刺の情報を共有して企業資産として活用できている企業は少ないだろう。
名刺情報が企業資産として活用できていない理由の1つに、管理方法が確立されていないことがある。一般的に情報を企業資産として共有するためには、複数の社員が同じ方法で整理して、閲覧できるようにする必要がある。
個人ではなく企業として保有している取引先の情報は、請求や支払いの際に窓口になる担当者情報であるケースが多い。この担当者情報は請求先や支払先として業務システムに登録されている。しかし、その担当者が実務責任者や意思決定を行うキーパーソンとは限らない。
名刺情報の活用には意識改革が欠かせない…
将来を見通して業績を伸ばすために接触すべきなのは、こうした実務責任者やキーパーソンだ。もちろん、経理に使うシステムだけでなく、会社には顧客管理システム、営業支援システムと呼ばれる取引先の情報を管理するデータベースがある。ただ、それらも活用範囲が限られていることが多く、社内で活用できているケースは決して多いとはいえない。
名刺交換を行いせっかく手に入れた実務責任者やキーパーソンの情報が、蓄積や管理の方法が確立していないために、個人的な利用にとどまってしまう。この状態は企業にとって大きな損失だ。
名刺情報を企業資産にする第一歩は集約だ。そのためには、社員の意識を変えることが肝心だ。名刺情報は紙に印刷されたアナログ情報のため、集約するにはデータベースに入力する作業が生じる。その手間が面倒に思われてしまえば、スタートからつまずくのは明らかだ。「ただでさえ忙しいのに、余計な業務を増やして……」ではなく、「名刺情報は自分だけのものではなく、会社のもの」と意識させる必要がある。
名刺管理システムを円滑に運営するには
名刺管理システムの導入を成功させるためには、“簡単”に登録できる仕組みを用意して、名刺情報を活用するメリットを身近に感じてもうことがポイントになる。
簡単に登録する方法としては、名刺読み取り用のスキャナーを利用するのが一般的だったが、最近は名刺を撮影するとデジタル情報に変換してくれるスマートフォンアプリも登場している。既存の名刺情報を大量に入力する必要があるシステム導入当初は、登録作業を外部に委託し、その後は自分たちで登録していくという運用なら社員の負荷は軽くなる。
名刺管理システムの中には、ビジネスフォンと連動できるタイプもある。こうしたシステムなら、会社にかかってきた電話を外出先のスマートフォンに転送する際、事前に電話帳に登録していれば、どこからかかってきた電話かが表示される。外出先でも、誰からの電話かが分かった上で、電話に出られるのは営業担当者にとって大きなメリットになるはずだ。これなら名刺情報を集約するメリットを感じやすいだろう。
せっかく費用を投じて名刺情報をデータベース化したとしても、それを活用し切れなければ企業資産とはいえない。集約する仕組みができたら、今度はその情報を生かす仕組みを考えよう。そのためには、部署ごと、担当者ごとの業務範囲の見直しが必要になるかもしれない。名刺情報という眠った資産を掘り起こして活用するには、それくらい戦略的な姿勢が大切だ。