ビジネスにおいては、意思決定や情報交換のための会議が欠かせない。ただ、同じ事業所で働くメンバーだけが集まるのではなく、離れた拠点から集合する場合には、交通費がかかるだけなく、移動時間のロスが発生する。
そこで注目されているのが、カメラ・マイク・制御装置などをパッケージ化した専用システムの「テレビ会議システム」だ。最近はパソコンとインターネットを利用した「Web会議システム」も普及し始め、コスト面など導入のハードルがかなり下がっているようだ。会議を目的とした出張コスト削減の切り札として期待も高まっている。
テレビ会議システムは、テレビ放送が始まった1950年代から研究が進められてきた。当初はビジネスツールというよりも、近未来的なビジネススタイルの象徴として、開発が行われていた。それが、実用化され始めたのは1980年台後半。その後、ISDNのサービス普及によって、デジタル回線を使ったテレビ会議が少しずつ普及し始めた。
ただ、1カ所に集まらずに参加者の顔を見ながら情報交換できるテレビ会議システムのメリットを、多くの企業が感じていても、多額の初期費用がかかることなどがネックになりがちだった。一昔前は導入するのは一部の大企業に限られていたのが実情だったといえる。また、当時は導入しても通信品質に不満が生じるケースもあり、使いこなしている企業はそれほど多くはなかった。
その後、1990年代にインターネットが普及。テレビ会議用の専用回線ではなく、インターネットを利用したWeb会議と呼ばれるタイプが登場した。
専用システムを必要としないWeb会議なら導入しやすい
Web会議もテレビ会議と同じく、複数拠点間の双方向通信による情報交換会議を可能にするシステムだ。テレビ会議は出席者が互いの表情を高画質で見て話せるようにすることがメーンの目的。一方、Web会議は手軽さと資料や情報の共有に重点が置かれる。
Web会議は、パソコンにカメラとヘッドセットを接続するだけで簡単に利用可能だ。インターネットの接続環境があれば場所を問わず利用でき、導入のハードルは低い。システムを選ぶ際には、目的(開催する会議の規模、参加人数)、予算(インターネット回線、パソコン、カメラ、マイクスピーカーなど)、利用頻度などを総合的に捉え、最も効率良く使える製品を選ぶことが大切だ。
導入する際、必ず把握しておきたいのは開催するWeb会議の全体像。社内全体で導入するのか、あるいは部署単位で利用するのか、最大で何人のユーザーが会議に参加するのか、何か所の拠点を相互接続するのかで求められるスペックが変わってくる。現在提供されているサービスは用途によってさまざまなプランが用意されている。
トラブルが発生してもサポートしてくれるサービスがお勧め…
Web会議の導入では、セキュリティーの問題にも注意を払う必要がある。会話や資料などがすべてインターネット経由で通信されるので、盗聴や情報漏えいのリスクを常に認識しておくべきだ。
現在、提供されているWeb会議のシステムやサービスの中には無料で利用できるものもある。ただ、その中にはセキュリティー対策やサポート体制が十分ではないケースもある。ビジネスで利用する以上、信頼性の高いサービスであることが絶対条件だ。
インターネットの特性上、同じシステムでも接続する場所や端末によって通信品質が不安定になる場合もある。利用者によって映像・音声に関する受け取り方が変わってくるので、実用に耐えるものなのか、導入前に複数のサービスを実際に試用してみることも大切だ。
Web会議システムは各社から多様なサービスが出ている。ITサービス、機器を幅広く扱うシスコシステムズはWeb会議システムとして「WebEx」を提供している。ベンチャー企業であるブイキューブはミーティング用だけでなく、セミナー用やセールスサポート用など、目的別にWeb会議商品システムをラインアップしている。
ジャパンメディアシステムが提供する「LiveOn」は多くの導入実績を持ち、手軽に使えるWeb会議の普及に貢献している。また、個人向け無料通話ツールとして広く知られているSkype(スカイプ)も、ビジネス用途に特化した「Skype for Business」を開発し、本格的に競争に参入した。
電気通信事業者では、NTT西日本が「BizひかりクラウドWeb会議プラン」※を用意している。本サービスはビジネスで利用可能な高品質のWeb会議を提供するもので、NTTグループが蓄積した技術を生かしたクリアな音声が特長だ。
クラウド型サービスなので、サーバーの構築・管理は不要。メールによる招待やWebブラウザーでの利用が簡単な操作で可能になる。トラブル発生時にはオペレーターがリアルタイムで対応し、安心して利用できる環境を用意している。
Webページから会議を予約すると、参加者に招請メールを自動発送する機能も搭載している。また、会議録画機能による議事録やホワイトボード機能、資料・アプリケーション共有機能による資料配布など、会議を充実させるための各種機能を備える。このように、フェース・ツー・フェースのコミュニケーションができる以外のメリットが享受できる。
Web会議の有効活用でビジネスが変わる
Web会議システムの導入に当たっては、自社に合ったシステムを選ぶだけでなく、運用についても配慮する必要がある。Web会議は、原則としてオフィスに設置したパソコンを使う。1人で自席のデスクトップパソコンを利用する際には、周囲の環境に配慮してヘッドセットなどを活用すべきだ。複数人で利用する場合はノートパソコンにマイクスピーカーを接続することになるが、その際にも周囲に迷惑がかからない場所を選ぶべきだろう。また、会議の開催日時が確定している場合は、事前にWeb会議の接続先URLなどの必要な情報が記載された案内メールを参加者に送ることで、円滑に会議を開催することもできる。
Web会議システムは、ICT活用によるワークスタイル変革を推進するための手段として期待が高まっている。現在政府が提唱している「テレワーク」は、場所や時間にとらわれない新しい働き方を意味する。Web会議は、テレワークの効果を最大限に発揮するさまざまな特性を持っているといえるだろう。
これまで各拠点の担当者が本社に集まり開いていた会議をWeb上で行う場合、参加者の出張に伴うコストが削減されるだけではない。移動時間も減り、その分、ほかの仕事に従事できる時間が増えることになる。集まる必要がないため日程調整をしやすくなるので、会議の開催を早められる。その結果、情報交換や意思決定のスピードも上がることになる。
導入コストが低いWeb会議は、人材不足に悩む企業にふさわしいソリューションだ。ただでさえ忙しいキーマンが出張で全国を飛び回っていれば、大切な判断が遅れたり、商談が滞ったりする危険もある。Web会議の導入で必要最低限の出張だけに絞り、生み出した時間を有効活用するべきだ。Web会議は社内利用だけでなく、離れた取引先との打ち合わせなど社外との情報交換にも使える。会議での利用はもちろん、社員研修、カスタマーサポートといったさまざまな業務への活用も見据え、ビジネスの効率アップに取り組もう。
※「Bizひかりクラウド Web会議プラン」を利用するには、フレッツ 光ネクスト等、プロバイダー、「Bizひかりクラウド Web会議プラン」の契約・料金が必要
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