ビジネスを加速させるワークスタイル(第15回)
似ているようで違う、法人向け光回線の選び方
公開日:2017.05.24
女性力活用を阻害する要因は、過去の慣習にとらわれた男性優位文化や男尊女卑の意識以外にもさまざまなものがあります。今回はその中でも比較的新しく、また女性の心身に非常に深刻な問題を引き起こす「マタニティー・ハラスメント(マタハラ)」について説明します。
マタニティー・ハラスメントとは、職場や会社内において妊娠・出産を理由として不当な扱いを受けたり、暴言を吐かれたりといった「妊娠・出産に関する職務的・精神的・肉体的なハラスメント」のことを指します。マタハラは、従来存在していた「セクシャル・ハラスメント(セクハラ)」「パワー・ハラスメント(パワハラ)」と並び、「職場の三大ハラスメント」と呼ばれており、近年その被害は急激に増加しています。
後述する「働く女性によるマタハラに関する意識調査」によれば、過去マタハラ被害に遭った女性の割合は25.6%でした。これはセクハラの17%を大きく上回る数値であり、働く女性の心身を大きく傷つける非常事態になっています。しかしマタハラの認知度はまだ低く、セクハラやパワハラに比べて法的整備が未熟な現在では、社会レベルでも個人レベルでもそれほど大きな問題として扱われていません。
前述の被害者の割合と後述する被害者データを見比べると、「潜在的な被害者および加害者」は他のハラスメントに比べて格段に多いものと考えられます。セクハラ対策に力を入れている企業は多いとは思いますが、マタハラはまだそれほど認知されていないため、当然その対策に本腰を入れる企業も多くはありません。
セクハラのように、社会問題として大きく取り上げられてから対策に乗り出したのでは遅過ぎます。女性活用を本気で考えている企業ならばこそ、後手後手の対策に苦しむ前に、今こそマタハラ対策に力を入れるべきだと考えます。
なお、「アルコール・ハラスメント(アルハラ)」も含めると、マタハラは4つ目のハラスメントということになりますが、アルハラは主に学生への注意喚起という意味合いが強いため、ここではアルハラは除外してあります。マタハラの具体例を以下の表にまとめました。
マタハラは比較的新しい概念のため、セクハラやパワハラのような明確な定義はまだありません。しかし、現在マタハラとして考えられている行為のほとんどは「男女雇用機会均等法」や「労働基準法」に違反しており、今後認知度が高まるにつれて訴訟問題や人権問題になる可能性は高いでしょう。
また、上司や同僚から上記のような行為を続けられたことにより、「流産」「死産」「母体異常」「先天性異常を持つ子の出産」「神経症や精神系疾患の発症」といった明確な悪影響が出た場合は、個人間での訴訟問題になることはもちろん、会社全体のイメージや業績を大きく左右する大問題に発展することも考えられます。そうならないためにも、経営者には、いまだ認知度・定着度の低い「マタハラ」への理解を深め、早いうちに全社的な知識の周知や対応策の準備などに取り掛かってほしいものです。
ただしそこで勘違いしてはいけないのは、「“会社を守るため”にマタハラ対策をする」ではなく、あくまで「“社員たる女性の権利や生命を守るため”にマタハラ対策をする」ということです。経営者がこの前提を履き違えている限り、何をしても大した成果はありませんし、そのような意識を持った経営者には誰も付いてはいきません。その点だけは常に肝に銘じておいてください。
\ かんたん入力で登録完了 /
執筆=坂本 和弘
1975年栃木県生まれ。経営コンサルタント、経済ジャーナリスト。「社員の世代間ギャップ」「女性社員活用」「ゆとり教育世代教育」等、ジェネレーション&ジェンダー問題を中心に企業の人事・労務問題に取り組む。現場および経営レベル双方の視点での柔軟なコンサルティングを得意とする。
【T】
経営者のための女性力活用塾