ビジネスを加速させるワークスタイル(第15回)
似ているようで違う、法人向け光回線の選び方
公開日:2017.11.15
前回「日本版ワーク・ライフ・バランス」で生産性向上が見られないという大きな問題が生じていることを紹介しました。ではなぜ日本版ワーク・ライフ・バランスに限って、このような問題が起きたのでしょうか?
先に説明した「日本の男性優位主義がまかり通った市場の特殊性」を除いて考えると、それは「政府の取り組み方の違い」に求められます。日本や欧州では、労働者の仕事と生活の両立を政府が積極的に推進しています。多くの税金を労働者の両立支援に用い、国を挙げて推し進めているのですから、その分企業への負担は相対的に低くなります。
対して米国では、両立支援に対する国の補助はそれほど高くありません。それは各企業に対する両立支援や制度整備にかかる責任やコストが相対的に高くなることを意味します。そのため米国の企業は「両立支援を充実させるためには、労働者に対して相応の会社利益を期待する」という考えで労働者たちに対峙します。能力不足や怠慢による解雇が当たり前の米国労働市場にあってこの姿勢は当然であり、労働者も当たり前のこととして受け入れました。
結果、女性労働者(当然男性社員も) は企業業績に貢献し、企業側は約束通り自社の責任において手厚い両立支援を行ったのです。その後は「就業環境整備→労働者の生産性の向上→(見返りとしての)就業環境整備→……」という、企業と労働者の双方が満足する好循環が出来上がりました。根幹は「女性の育児支援」でしたが、あくまでそれは「企業利益を上げるための手段」と位置付けていた米国らしい着地点だといえます。
この米国の例と日本を比較すると、日本版ワーク・ライフ・バランスの失敗の原因が見えてきます。他にも細かい要因はありますが、大きく分ければ下の表の3つが日本版ワーク・ライフ・バランスの失敗や「女性力活用の遅れ」の要因であると考えていいでしょう。
「ワーク・ライフ・バランス」はあくまで企業戦略の1 つであり、決して労働者利益のみを追求した福利厚生ではありません。厳しいようですが、望む成果を上げるためには「企業に貢献した労働者への見返りとしての福利厚生向上」という、労働者と企業の双方に権利と責任を負わせるような姿勢で対応することが求められます。
「ワーク・ライフ・バランス」はあくまで企業戦略の1 つであり、決して労働者利益のみを追求した福利厚生ではありません。厳しいようですが、望む成果を上げるためには「企業に貢献した労働者への見返りとしての福利厚生向上」という、労働者と企業の双方に権利と責任を負わせるような姿勢で対応することが求められます。
ただし、ご存じの通り、日本労働市場の「男性優位主義の市場」「終身雇用制の定着」「低賃金の非正規社員の増大」といった問題をなくすためには、ある程度企業利益を放棄し、女性労働者に手厚過ぎるくらいの福利厚生や利益確保を約束しないとフラットな市場にならないというジレンマもあり、一概に米国式が正しいとはいえないところに難しさがあります。
その点を考慮すると、ケース・バイ・ケースで対応するしかないといわざるを得ないところがもどかしいところですが、今後の女性力活用を考える上で、またさらにその先のグローバルビジネスを考える上で避けては通れない問題です。
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執筆=坂本 和弘
1975年栃木県生まれ。経営コンサルタント、経済ジャーナリスト。「社員の世代間ギャップ」「女性社員活用」「ゆとり教育世代教育」等、ジェネレーション&ジェンダー問題を中心に企業の人事・労務問題に取り組む。現場および経営レベル双方の視点での柔軟なコンサルティングを得意とする。
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経営者のための女性力活用塾