5つの改正のポイント
下記の表は2007年改正の主なポイントです。単純に「女性を不利益に扱わないこと」というだけでなく、「男性差別も含んだ上で、本当の意味で性別による差別を行わない」「性別による直接的な差別のみならず、間接的な差別も禁止する」「男性に対するセクシュアルハラスメントも規制の対象にする」など、時代の流れによる労働環境や人権意識の変化を細かく捉えた改正になっています。
既に説明した通り、これら改正の頻度や内容を見ると、過去の労働環境がどのように変化し、また過去において女性がどのような問題に悩まされてきたのかがよく分かります。
今後女性社員の力を活用しようとしている経営者としては、単に法律を順守するだけでなく、過去から現在までの法律の変遷から、女性社員が何に悩み、どのような扱いを受けているのかというところにまで、目と心を向けておくべきでしょう。
2014年7月の施行規則改正
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結論からいうと、2014年7月1日の改正はあくまで「施行規則等の改正」にとどまっており、現行法との違いは非常に小さいものとなっています。分かりやすくいえば、「2007年の改正を踏まえた上で、それらの改正点の一部を拡充・訂正・削除して、より実態に則した内容に修正すること」となります。
以下に2014年7月1日改正の4つのポイントをまとめました。前述の通り、内容的にはほとんど変わりがないため、「2007年改正」の内容との差分のみを列挙して説明します。前段の「2007年改正」と比較しながら見てください。
4つの改正のポイント
(1)間接差別となり得る措置の範囲の見直し
間接差別のうち、前述の「間接差別となる恐れがある措置として省令に定める3つの措置の2」について、上の表のように「総合職の限定を削除」し、かつ「昇進・職種の変更を措置の対象に追加」されました。これによりすべての労働者が対象となり、かつ間接差別として規制対象となる事業主の行為が拡大されることになります。
(2)性別による差別事例の追加
性別を理由とする差別に該当するものとして、「結婚していること」を理由に「職種の変更」や「定年の定め」について男女で異なる取り扱いをしている事例が追加されます。(性差別指針の改正)
(3)セクシュアルハラスメントの予防・事後対応の徹底など
性の多様性を鑑み、セクシュアルハラスメント対策についてさらに拡充されました。具体的な変更点は前述の2つの表「●総合職からすべての労働者に変更」「●セクハラ対策は拡充」の通り。表中にある『』で囲ってある部分が、今改正で変更された点です。
(4)コース等別雇用管理についての指針の制定
「コース等で区分した雇用管理についての留意事項」(局長通達)を、より明確な記述とした『コース等で区分した雇用管理を行うに当たって事業主が留意すべき事項に関する指針』を制定。(コース等別雇用管理指針の制定)
2014年改正は内容的には2007年改正とほぼ同じですが、措置の範囲や対象事例などが拡大しています。細かい変更である分、事業者にはよりきめ細やかな対応と細心の注意が求められることになります。文字にすると非常に小さなポイントに見えるかもしれませんが、明文化されている以上、これらの変化は実態としては非常に大きなものだと認識しておかなければなりません。
これから新たな人事制度を構築しようとしている企業はもちろん、現在問題のない制度を活用している企業も、改正内容をしっかり確認し、漏れがないように注意してください。「知らなかった」では済まされないのが法律なのです。
※なお、最近の情報に関しては、厚生労働省のホームページをご確認ください