経営者のための女性力活用塾(第19回)女性労働者の保護その3「育児・介護休業法」(上)

人材活用

公開日:2018.04.18

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 女性労働者を保護する「法律」として、本項では「育児・介護休業法」を取り上げます。第15回第16回の「労働基準法」や第17回第18回の「雇用機会均等法」に比べると知名度が若干低いため、内容の理解が十分ではない経営者も少なくないでしょう。

 しかし育児・介護休業法は、これまで説明してきたマタニティー・ハラスメントや女性労働者の不満・本音の根幹部分にも密接に関わっている重要な法律です。今後、女性力活用を真剣に考えようとしている経営者にとっては、ある意味、他の法律以上に重要視すべき法律の1つだといえます。

育児・介護休業法の成立と変遷

 育児・介護休業法は、正式名称を「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」といい、これを略して育児・介護休業法、または(新旧の内容を厳密に区別する意味で)「改正育児・介護休業法」と呼びます。

 最初にこの法律が施行されたのは1992年4月1日。初登場時の「育児休業等に関する法律(育児休業法)」という名称からも分かるように、内容は「育児」に限定されていました。

 内容を簡単にまとめると「性差による役割分担意識をなくすべく、女性のみならず男性にも育児の権利を保障する」といった趣旨であり、ここからも1992年という時代でさえ、社会が法律に明文化する必要があるくらい女性差別的な慣習(「育児は女性がやるべきものだ」)に染まっていたと考えられます。

 素人目に見ても非常に不十分であることが分かる当初の育児・介護休業法は、当然のことながらすぐに改正されます。

 1995年、育児・介護休業法は大幅に改正され成立しました(施行は1999年)。名称も育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律に変更され、内容は「育児」だけでなく「介護」も含まれるようになりました。しかしこの時点でも、「介護休業については努力義務」とされており、実質的にはそれほど大きくは変わっていない内容でした。

 その後、世界的な「ワーク・ライフ・バランス」の認識の広がりを受けてか、仕事と家庭の両立と充実をめざすべく「時間外労働の制限」や「勤務時間短縮等措置の対象年齢引き上げ」などを盛り込んだ2001年改正、新たに「有期労働者等を含む休業対象者の拡大」「子の育休期間延長措置(1歳6カ月まで)」「子の看護休暇創設」などを盛り込んだ2004年改正(施行は2005年)、そして内容の一部施行・一部猶予が行われた2009年改正(施行は2010年以降)という変遷を経て、現在に至ります。

 このように、およそ20年の間にこれだけ多くの改正が行われたところからも、近代日本の女性力活用がいかに遅れていたか、あるいは日本が本当の意味でのグローバル社会に急いで追いつこうとしているかが分かります。

改正育児・介護休業法の主な内容

 次に、2012年の改正法を説明します。まずは改正された制度とその施行日をまとめた上の表を見てください。

 この表を見れば分かるように、最新の改正育児・介護休業法では、企業の従業員規模に応じて施行日に弾力性を持たせており、中小企業への配慮と大幅改正の重みが感じられる改正になっています。

 とはいえ2012年7月1日をもって全面施行されているため、2014年現在においては、事業規模にかかわらず改正内容に従わなければいけません。

育児・介護休業法の改正点…

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執筆=坂本 和弘

1975年栃木県生まれ。経営コンサルタント、経済ジャーナリスト。「社員の世代間ギャップ」「女性社員活用」「ゆとり教育世代教育」等、ジェネレーション&ジェンダー問題を中心に企業の人事・労務問題に取り組む。現場および経営レベル双方の視点での柔軟なコンサルティングを得意とする。

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