企業側から顧客に連絡する際、電話をかけても出てもらえない、DMやメールを送信してもリアクションがないといった課題を抱える企業は多い。この課題を解決する手段として、民間企業だけでなく自治体にも活用が広がっているのがショートメッセージサービス(以下、SMS)だ。具体的にどのようなメリットがあるのか、詳しく見ていく。
圧倒的な接続率を誇るSMS
携帯電話の基本的なサービスの1つとして、多くの人に使われているSMS。メールのように長い文章は送れないが、相手の電話番号さえ分かっていれば送信できる。気軽なコミュニケーション手段として、現在広く利用される。
このSMSの用途が、個人ユーザー間だけでなく企業から顧客への連絡手段としても広まっているのをご存じだろうか。その理由は圧倒的な接続率だ。電話によるアウトバウンドコールでの接続率は約30~40%、郵便での反応率は約5%、メールの開封率は10~20%程度といわれる中、SMSの接続率は99%に達する。
接続率が圧倒的に高いのは、SMSを受信する携帯電話やスマートフォンが日常的に携帯するツールである点が挙げられる。SMSを着信したのが分かれば、たいてい内容に目を通してしまうからだ。
従来の連絡手段に対するSMSのアドバンテージ
接続率以外でも、SMSには他の連絡手段に対して大きなアドバンテージがある。電話の場合、知らない番号から発信された電話は受けない人が少なからずいる。連絡が取れなければ業務は滞留する。SMSであれば、たとえ手が離せなくても後から自分の都合がよい時間に確認できる。
次にDM(郵便物)と比較してみよう。郵便物はそもそも目を通したかどうかが分からない。相手に届くまでに日単位の時間もかかる。SMSはサービスによっては着信確認が可能となる。送信したメッセージは、ほぼリアルタイムで相手に届く。コストも圧倒的に安く済む。
それでは電子メールに対する優位性はなんだろうか。電子メールは他のメールに埋没してしまいがち、メールアドレスが変更されやすいといった弱点がある。最近は番号ポータビリティ制度で、ユーザーはキャリアを乗り換えても同じ番号を使い続けるケースが多い。一度、電話番号を取得すれば長期間にわたって連絡先として陳腐化しない。
幅広い用途で威力を発揮させるには…
SMSは接続率が高い特徴を生かし、料金支払いなどの督促や催告業務、書類不備や折り返し依頼などの業務連絡、訪問日や配送日のリマインダー連絡など、業種・業態にかかわらず有用性は実感されている。ある不動産管理業者では、家賃未納者にSMSで連絡したところ70%以上のレスポンスがあり、オペレーターの人員削減につながったという。また、督促業務において滞納者にコールバックを依頼したところ、DMでの連絡率は5%なのに対し、SMSでは40%以上のレスポンスが得られた。人材派遣会社では、派遣登録の休眠者に対する再アプローチにSMSを採用。電話連絡と比較して40%の費用削減を実現した。
最近では企業だけにとどまらない。自治体においても各種連絡業務にSMSを活用する動きが広まりつつある。各種税金や保険料の催告・督促だ。そのほか特定健康診査の利用促進や、粗大ゴミ収集日時の事前連絡や図書館における貸し出した本の返却の督促、申請書類の不備の通知とコールバック依頼など、自治体においてもさまざまな用途が想定される。
SMS送信サービス選びのポイント
この効果的なSMSを、携帯電話端末を利用せず個別・一斉に配信できるサービスも登場している。サービス選びで着目したいのは、SMS配信に国際ネットワーク上の海外サーバーを利用しているかどうかだ。海外サーバーを利用するサービスは、低価格で提供されるケースが多い半面、SMSの到達率が低い、盗聴やなりすまし、改ざんの危険性があるなど、セキュリティ上のリスクが払拭できない。宛先として使う電話番号も個人情報の1つだ。特にビジネスで活用する際には、リスクマネジメントを考えるべきだ。
また、この手のサービスでは、送信元番号はすべてアルファベット文字になる。電話番号に比べて分かりやすいようにも思える一方、なりすましの可能性もあり、思わぬトラブルにつながりかねない。 その点安心できるのが、国内主要携帯3キャリアとクローズドネットワークを構成し、セキュリティを高めた運用を行うサービスだ。
NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューションが提供する「空電(からでん)プッシュ」は、携帯3キャリアと直接ネットワークで結ばれ安全性が高く、強固なセキュリティ対策も実施されている。
空電プッシュは、SMSの「送信元電話番号」を固定できる。そのため、SMSの送信元番号を事前に告知すれば、当該電話番号以外からのSMSはなりすましの可能性がある旨の注意喚起が可能となる。
さらに、通常のASPサービスのようなメールだけの問い合わせ窓口だけでなく、24時間365日の電話対応、Webブラウザーを使った一斉送信に対応、APIを利用してシステム連携が実現できるなどの運用サポート面・機能面でのメリットも見逃せない。
同社は自治体向けのサービスとして「空電プッシュ for LGWAN」の特許を取得している。地方公共団体間を結ぶ行政機関専用のネットワーク「LGWAN」から直接SMSを送信できる。つまり、住民情報がインターネットを経由しない。地方公共団体情報システム機構(J-LIS)が展開するLGWAN-ASPのアプリケーションおよびコンテンツサービスに登録済みのため、すぐに利用できるのも利点だ。
民間企業と地方自治体のいずれにおいても、顧客や住民とのコミュニケーションには多大なコストと労力が発生する。これを軽減し、業務の効率化を図りたいと考えるのであれば、SMSは有効なツールになるのではないだろうか。