慢性的な人手不足に加え、2024年問題で浮き彫りになった長時間労働の是正などの対応が求められる現在、さらなる業務効率化や生産性向上は企業の大きな課題だ。「これまでもITを導入・活用して業務の効率化に取り組んできた。これ以上どんな手があるんだ」という経営者もいるかもしれない。各種の業務システムの最適化は欠かせない視点だが、これらに加えてコミュニケーションやコラボレーションの観点から業務効率化を考えてみることもポイントの1つだ。
ナレッジやアイデアをイノベーションに生かす
工場の生産工程を効率化する、営業活動を効率化する。生産工程では生産管理システム、営業活動では営業支援システムなどがあり、既に導入済みの企業もあるだろう。
この一方、システム化が難しいのがベテラン社員の知恵(ナレッジ)やノウハウだ。ベテラン社員の高齢化や退職前にナレッジやノウハウを社内で共有する。グループウエアの掲示板機能などを使って社員それぞれが持つナレッジを出しあい、情報交換、情報共有することで業務効率化のアイデアを得られる可能性もある。そうした社内のナレッジやアイデアを集めて製品・サービスのイノベーションにつなげることも可能だ。有能な人材が頭をひねって新製品を生み出すこともあるだろうが、斬新な製品・サービスはちょっとしたアイデアから生まれる。
例えば、販売担当者が顧客から「こんな製品があればいいのに」と要望があったことをチャットに載せる。それを見た社内のさまざまな部門の人がチャットでアイデアを寄せる。開発部門がそのアイデアを元に製品・サービス化するなど、社内のコミュニケーションによってイノベーションを起こすことも可能だ。
スモールスタートが可能なクラウドサービス…
昔は、資金力が豊富で積極的にコミュニケーション活性化のためのIT投資・設備投資が行える大手企業に比べ、中小規模の企業は設備投資に二の足を踏むケースも見受けられた。だが、近年は状況が変わってきた。システムを自前で構築・運用するオンプレミス型ではなく、スモールスタートが可能で、コミュニケーションの活性化に役立つさまざまなクラウドサービスが提供されているからだ。
クラウドストレージもその1つだ。社内に設置されたファイルサーバーに社外からアクセスする場合、VPNなどのセキュリティにも配慮する必要がある。そして、サーバーの保守・運用もしなければならない。クラウドストレージであればインターネット環境があればどこからでもアクセスできる。社内共有フォルダ―に営業資料や製品カタログなどを保管しておけば、営業担当者は顧客先からオンラインストレージにアクセスして必要な資料を提示するなど、きめ細かな顧客対応と業務効率化が可能だ。
企業のコミュニケーションツールとして導入が広がっているのがビジネスチャットだ。顧客・取引先はメール、社内の連絡はチャットというように使い分ける企業は多く、グループトークやボイスチャットなどでコミュニケーションの活性化が可能だ。ビジネスチャットでは、セキュリティに留意したい。管理者がユーザーの登録・削除、端末認証の許可を実施。許可されたユーザーと端末同士のみでチャットを取りでき、外部への誤送信などセキュリティリスクを低減できる。
新しいWi-FiやIP電話サービスへ設備を更新
社内コミュニケーションの活性化、デジタルを活用した業務効率の向上など、ビジネス活動を支えるのがネットワークインフラだ。近年はオフィスで決められた席のないフリーアドレスを採用する企業も増え、社内ネットワークインフラとしてWi-Fiの存在感が増している。
そして、コミュニケーションの快適さに関係するのが、Wi-Fiのタイプだ。古いタイプのWi-Fiをオフィスで使い続けると「なかなかつながらない」「通信が切れる」などのトラブルにもなりかねない。社内で顧客・取引先とオンライン会議を行っている際に通信が途切れるようでは問題だ。円滑な意思疎通を実現するためにも、設備投資の観点からWi-Fiを更新するという選択肢もぜひ検討したいところだ。例えば、Wi-Fi6(IEEE802.11ax)の場合、最大9.6Gbpsの通信が可能とされる。また、複数人が同時に接続しても安定した通信が行え、1台の無線アクセスポイントあたり100台(推奨)まで接続できるビジネスWi-Fiのプランもある。
その他、既存の電話設備の更新も検討したい。複数拠点を持つ企業の場合には、通信費がかさむこともあるからだ。コスト削減策として効果が期待できるのがIP電話。既存の電話番号の継続利用や全国一律の通話料、そして高品質の通話が可能といった特徴を有するサービスがある。また、かかってきた電話を指定の電話番号に転送する機能など豊富なオプションなどを持つものもある。
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