ビジネス課題を創造的に解決するデザイン・シンキング(第5回)生活者の本音に迫り、新たな商品を開発した花王

スキルアップ

公開日:2017.05.09

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 デザイン・シンキングもしくはデザイン思考として知られる手法について、具体的な事例を基に解説する連載です。第5~6回で取り上げるのは花王です。同社はマーケッターや研究者のほか、デザイナーも一緒になってプロジェクトチームをつくり、今までにない視点で新たな商品開発に取り組んでいます。その具体的なケースとして女性向けプレミアム柔軟剤の開発事例を紹介します。

CASE STUDY 03 花王(前編)
女性向けプレミアム柔軟剤「フレアフレグランス IROKA」の開発

生活者を起点とした商品開発を推進

花王は2016年4月、女性向けプレミアム柔軟剤「フレアフレグランス IROKA」を発売した。女性が実際の生活シーンで見せる2面性に応じた結果、2つの商品を同時に開発・投入した。

花王が販売したプレミアム柔軟剤「フレアフレグランス IROKA」。左が「エアリー」で、右が「ドレス」。それぞれのシーンに応じて香りやデザインなどを変えたほか、本体と詰め替え用の容器でもデザインを変えている。エアリーは透明感あふれる無垢(むく)なイメージ。ドレスは華やかに魅せる優雅なイメージ

花王が販売したプレミアム柔軟剤「フレアフレグランス IROKA」。左が「エアリー」で、右が「ドレス」。それぞれのシーンに応じて香りやデザインなどを変えたほか、本体と詰め替え用の容器でもデザインを変えている。エアリーは透明感あふれる無垢(むく)なイメージ。ドレスは華やかに魅せる優雅なイメージ

花王 パッケージ作成センター部長(ファブリック&ホームケア担当)の椎木一郎氏

花王 パッケージ作成センター部長(ファブリック&ホームケア担当)の椎木一郎氏


 「我が社は2~3年前から全社を挙げてデザイン思考に取り組んでいる。生活者を起点とした商品開発を推進するため、マーケッターや研究者のほかデザイナーも一緒になってプロジェクトチームとなり、今までにない視点で生活者のニーズにアプローチしようとしている」

 こう語るのは、花王パッケージ作成センター部長(ファブリック&ホームケア担当)の椎木一郎氏だ。デザイナーも開発プロセスの上流工程から積極的に参画することで、より生活者の本音に迫り、新たな商品を開発するのが狙い。そうしたデザイン思考による開発成果の1つが、花王が2016年4月に発売した高級志向のプレミアム柔軟剤「フレアフレグランス IROKA」である。

 店頭価格が700円以上といわれるプレミアム柔軟剤の市場は2012年以降急拡大しており、花王の調査では2015年度には柔軟剤市場の約1割を占めるほど。各社から新製品が相次ぎ登場しており、特に柔軟剤の香りをどうするか、高級感を醸し出すにはどうアピールすべきかなど、他社との差異化が大きなテーマになっている。販売するドラッグストアの店頭でも激戦区といえる存在である。

 いずれもファッションやメークなどにこだわりを持ち、美への意識が高い20~30代の女性がターゲットだが、そうした市場に向けて花王が出した結論は、同じユーザーに向けて2種類のIROKAを同時に投入することだった。ユーザーのライフスタイルをデザイン思考の視点で分析したところ、ターゲットとなる女性のライフスタイルには、1人の同じユーザーでありながら、いわば日常性と非日常性の2つの顔があったからだ。

あえて2つの面から訴求する商品開発に取り組む…

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執筆=日経デザイン編集部 大山 繁樹

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