災害発生のリスクは地球上のすべての場所に存在する。中でも日本が自然災害の多い国であることは厳然たる事実だ。2016年だけでも震度6弱以上の地震が10回、震度1以上は、6000回以上も観測された(参考:気象庁 震度データベース検索)。日本の国土は、複雑に重なり合った複数のプレート(岩盤)上にある。これらの動きが地震の原因となる。プレートの活動により地下のマグマが上昇することから火山が生まれ、世界有数の火山列島が形成された。
国土の利用方法でも問題を抱えている。生活に適した平野部は国土の3割に満たず、7割以上は山地や丘陵だ。人口増加によりこれらの地域も宅地として開発が進んでいるが、地滑り、がけ崩れなど、土砂災害発生の危険につながる。また、日本の平野は多くが軟弱な地盤の上にあり、沈下や液状化といった災害に見舞われやすい。地震、火山の噴火、台風、豪雪――。日本は自然災害大国と呼ばれる。降りかかる災害からいかにして身を守るか、常に努力を続けてきた。
2011年3月11日に発生した東日本大震災では、地震に伴う津波が甚大な被害をもたらした。その際、「此処(ここ)より下に家を建てるな」という先人の警告が刻まれた岩手県・宮古市の石碑が、大きな話題になったことをご記憶の方も多いだろう。石碑は1933年の昭和三陸津波発生後に建てられたもので、当時の津波は石碑のある海抜60メートルの地点まで到達。100人以上が犠牲になった。「災害発生は止められなくても、過去に起きた災害を知れば被害は減らせる」ことが証明された。
過去1600年の災害が検索できる防科研データベース…
交通網が発達した近年は住民の移動も多く、自分が住んでいる地域に過去どんな災害があったのかを知る機会はほとんどない。そこで、国立研究開発法人防災科学技術研究所では2016年8月、過去約1600年間に発生した自然災害の事例を地図上に表示する「災害年表マップ」を公開した。
マップに収録されたデータは、自治体が発行する地域防災計画から集められた。西暦416年から2013年までの地震災害、火山災害、風水害、斜面災害、雪氷災害が対象だ。現在は発生地点が市区町村単位で表示され、被害額などの概要も記載されている。
対策は3ステップが原則
災害対策の基本は“身を守る”だ。どうすれば安全を確保できるかについては、いくつかのアプローチがある。まずは「予測」。残念ながら災害発生の日時を正確に予測するのは極めて困難だ。しかし、先に挙げた例にもあるように、過去のデータを検証することで危険性はある程度分かる。例えば、洪水や土砂災害が発生しやすい場所を把握しておけば、大雨の際には河川水位や雨量を予測して、事前にその地域に避難情報を出せる。
現在、各自治体では、地域の危険度を表示するハザードマップの作成に力を入れている。メールやSNSによる防災情報発信も積極的だ。国土交通省の「わがまちハザードマップ」は、全国の各自治体が発表したハザードマップを検索できるポータルサイトだ。
また、災害発生時の「対応」も重要である。現場の状況を速やかに把握して、何が起きているのか、今何をすべきかを正しく知る。これは被災者の安全確保に不可欠であり、復旧の進捗にも大きく影響する。災害発生時には、携帯電話など通常の通信手段が断たれるケースが多い。どのようにして関係者間のコミュニケーションを確保するかが、大きな課題といえるだろう。
さらに続くのが「復旧」だ。被災者の生活再建が少しでも早く実現できるよう努力するのはもちろん、災害発生時には道路やライフラインなどの物理的な復旧作業が優先されがちだ。事務的な支援は、後手に回される傾向がある。り災証明書発行や建物被害認定といった手続きに手間取って、不自由な生活が続いた例もあり、改善が求められている。
日本にとって災害対策は避けて通れない宿命的課題だ。過去の被災が経験となり、災害対策は着実に向上している。さらなる対策の進化を期待したい。