注目のAIソリューション(第5回)「AI OCR」に安心の新プラン追加、セキュリティ強化も

自動化・AI

公開日:2021.08.04

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 ビジネスでは紙の書類が欠かせない。そうした業種、業態が少なからずある。中小規模の企業で多くの取引先とのやり取りが書面やFAXといったケースでは、まだまだ紙がビジネスの基礎として重要な役割を果たしている。

AIによるテキスト化は正確で使い勝手も良好

 物理的な紙面に記載された情報をデジタル化してあげれば、使い勝手は格段に向上する。それも、他のアプリケーションでも活用できる「テキストが抜き出せるデジタルデータ」に変換できれば、使い道はさらに広がる。そこで注目したいのが「AI OCR」だ。

 AI OCRは、AI(人工知能)の助けを借りたOCR(光学的文字認識)の技術や機能を表す。これまでの苦笑するような認識結果を覆すような認識精度の向上を、画像処理に強みを持つAIの活用で実現した。NTT西日本ではAI OCRサービス「おまかせAI OCR」を提供し、手軽で正確な紙情報のデジタル化を後押ししてきた。

 実際、その文字認識は、「おまかせAI OCR、設定してみた」や「おまかせAI OCR、文字認識を検証してみた」といった記事でも紹介したように、想像よりも簡単に高い精度で実現できている。人間の目で見て判読できないような難物はさすがのAIといっても読み取れないが、伝票や申込書、申請書など他人に読んでもらうのを前提に書かれた文字であれば、ほぼ間違いなく認識してくれるというのが、実際に触れた印象である。おまかせAI OCRは、そうした利便性と正確さから利用者を着実に増やしてきた。

手書き文字読み取り例(※)

※おまかせAI OCRを用いたNTT西日本による検証結果

 

上位2プラン追加。読み取り枠が足りない声に対応

 便利に使えて活用が進むおまかせAI OCRだが、利用の進展でちょっとした課題が見えてきた。おまかせAI OCRは、中小規模の事業所や企業でも手軽に使えるように、導入のハードルを下げて月額3万円(税込み3万3000円)での提供だった。このプランでは文字認識する「枠」として6000項目まで定額で利用できる権利を含んでいる。

 「枠」とは、例えば申込書で「住所」「氏名」「電話番号」などの各項目をOCRで読み取るときの単位。1枚の申込書で「住所」「氏名」「電話番号」「申し込み種別」を読み取ったら、4項目分の枠を使う。おまかせAI OCRは定額料金で6000項目まで読み取れるので、この例ならば1500枚まで対応できる。これを多いと感じるかどうかは、業務に関わる書類の枚数や読み取り枠に依存する。

 課題というのは、NTT西日本が提供するサービスの6000枠では、「ちょっと足りない」というユーザーが増えてきたこと。従来、おまかせAI OCRは単一のプランしか用意がなく、6000項目を超えて認識したいユーザーは、従量課金で1項目3円(税込み3.3円)を支払って使うか、他の選択肢を検討していた。そこでNTT西日本は、2021年5月に2つの新プランを追加し、大容量の認識にもリーズナブルなコストで対応できるようにサービスを拡充した。

 基本メニューとして、従来の月額3万円(税込み3万3000円)、6000項目を含む「プラン1」に加えて、月額10万円(税込み11万円)で6万項目の認識枠を含む「プラン2」、月額20万円(税込み22万円)で20万項目の認識枠を含む「プラン3」を追加したのがその詳細である。

 基本料金の上昇分よりも認識枠の増加の割合が大きく、認識枠当たりの単価が下がった形だ。また、定額での利用を含む認識枠を超過したときの従量料金も、プラン1の3円(税込み3.3円)/項目に対して、プラン2とプラン3では手書き文字などの認識の場合で1円(税込み1.1円)/項目に引き下げた。少量の認識から大量な認識まで、幅広く対応する料金プランが用意された。

IPアドレス制限オプションを追加しセキュリティを強化

 おまかせAI OCRは、大量の認識に対応する新プランの提供に加えて、セキュリティを強化する機能向上も実現している。それが、オプションで提供される「IPアドレス制限」の機能である。おまかせAI OCRはクラウド型のサービスとして提供するため、場所や端末を問わずに機能を利用できる利便性がある。半面、正規のサインイン情報を知っていれば、業務外での利用や外部からの情報へのアクセスを許してしまう可能性もゼロではなかった。

 そこで、IPアドレス制限機能を使って、あらかじめ許可したIPアドレスからの接続だけに利用を絞れるようにした。IPアドレスとは、インターネットLANに接続している端末を識別する番地のようなもの。グローバルIPアドレスと呼ぶインターネット接続用のIPアドレスは、世界で重複がなく唯一の番号を使う。そのため、「特定のグローバルIPアドレスだけに利用を許可する」設定をすれば、許可していない端末やネットワークからの利用を防げる。

特定のグローバルIPアドレスからしか接続できないように制限

 ビジネスで利用するとなると、AI OCRで読み取ったデータは重要な機密事項である場合も少なくない。情報漏えいや不正利用を防ぐ方法が加わり、より安全におまかせAI OCRを利用できるようになった。大量書類の認識への対応と併せて、ビジネスの現場でより便利に安全にAI OCRを活用できるようにするための要望に応えた新プラン、新オプションの提供といえる。拡張性やセキュリティに懸念があって、おまかせAI OCRの導入をためらっていた企業も、これなら安心して利用できるだろう。おまかせAI OCRによる紙書類のデジタル化の進展が、さらに拡大する可能性が見えてきたようだ。

※掲載している情報は、記事執筆時点のものです

執筆=岩元 直久

【M】

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