「事業承継」社長の英断と引き際(第48回)3代にわたり、ものづくりの精神を引き継ぐ(後編)

事業承継

公開日:2023.01.26

  • PDF PDF
  • ボタンをクリックすることで、Myクリップ一覧ページに追加・削除できます。追加した記事は、「Myクリップ」メニューからいつでも読むことができます。なお、ご利用にはBiz Clipに会員登録(無料)してログインする必要があります。

堀田カーペット(ウールのウィルトンカーペットの製造・販売)

堀田繁光(ほった・しげみつ)
1951年生まれ、大阪府出身。大阪工業大学を卒業後、1973年に堀田カーペットに入社。1991年に社長に就任。2017年に長男の将矢氏に事業承継し、代表取締役会長となる

 事業承継のヒントを紹介する連載の第48回は、大阪府和泉市に本社を構える、堀田カーペットの2代目、堀田繁光会長。前編では、堀田会長自身の入社と父親からの事業承継、そして長男の将矢氏を承継者に決めるまでを振り返った。後編では、将矢氏が入社してから事業承継するまでのいきさつを紹介する。

 ウール素材のカーペットを製造する堀田カーペットは、1962年に堀田会長の父が大阪府和泉市でスタートした。1973年に堀田会長が入社し、経営に関与していく中で、下請け業務だけでなく、独自の製品を生み出し、ホテルや飛行機、自動車、人工芝、電車など、多様な分野に販路を拡大した。

 そんな堀田カーペットに長男の将矢氏が入社したのは2008年、29歳のときだった。入社前はトヨタ自動車で働いていた将矢氏。日本を代表する大企業から従業員30人の堀田カーペットに入社し、「会社の仕組みも、従業員のマインドも、何もかも違った。最初はギャップの大きさに苦しんだ」と話す。

ウール素材にこだわり、職人とともに事業を拡大させた

 「組織としての仕組みがないこと、制度が整っていないことを指摘しても、父も常務の叔父も、『うちは中小・零細やから』と言う。僕はそこに対してものすごく反発心がありました。今思えば未熟だったとしか思いませんが、当時は本気で『そんなのただの言い訳やろ』と思っていました」(将矢氏)。まだ若かった将矢氏は、当時、常にイライラしていた。「ただし、ケンカにはならないんですよ。僕が1人でイライラしていたんです」と振り返る。

 一方、堀田会長は、そんな将矢氏にいかにものづくりの根幹を伝えればよいか、苦心していた。「今でも忘れません。将矢が『そんなに時間かけずに、効率良く教えてくれ』と言ったんです。ものづくりは時間がかかるんです。そんな3回、5回やったところでできるようにはなりません。100回やって一つクリアする。そういう世界です」(堀田会長)

 「整った仕組みからは、新たなアイデアは生まれない」というのが、堀田会長の言い分だ。「どこにもないものを作る、発見する、隙間を見つける。その隙間を埋める商品を、自分の工場の中で作り出せるかどうか、見極める。それは、1回、2回チャレンジしたくらいでは判断できません。それなのに、効率良くと言われて、私は白けてしまったんです。覚悟だけはあるんだろうから、もう好きにしたらええがな、と思いました。自分でやってみたらいいんです。ただし、1年やってできなかったら、2年やる。それでもダメなら3年やってみる。しかし、若い人たちはすぐ諦めるんです。諦めていては新しいことはできません。これは言葉ではなかなか伝えられません」(堀田会長)

 このように堀田会長が悩む中で、将矢氏は自分なりの組織改革を進めていく。しかし、すぐにトヨタと同じ方法は通用しないと思い知る。「あるべき姿と現状を整理し、そのギャップを埋めるために何をやればいいか、会議を設定して話し合ったりしたんですが、何一つ改善されませんでした。そもそもマンパワーが足りないんです。わざわざギャップなんて見つけるまでもなく、課題は目の前にたくさん転がっていた。それに一つひとつ向き合っていくしかない、と気付きました」

カーペットの良さを世の中に伝える…

続きを読むにはログインが必要です

\ かんたん入力で登録完了 /

会員登録3つのメリット!!

  • 最新記事をメールでお知らせ!
  • すべての記事を最後まで読める!
  • ビジネステンプレートを無料ダウンロード!

執筆=尾越 まり恵

同志社大学文学部を卒業後、9年間リクルートメディアコミュニケーションズ(現:リクルートコミュニケーションズ)に勤務。2011年に退職、フリーに。現在、日経BP日経トップリーダー編集部委嘱ライター。

【T】

「事業承継」人気記事ランキング

連載バックナンバー

「事業承継」社長の英断と引き際

オンラインセミナー動画

配信期間

2024年11月28日(木)~2025年9月30日(火)

DX・業務効率化関連

【年末調整直前!】デジタル化による業務負担の軽減をめざそう