デジタル化の時代にあってICTはビジネスを支える基盤となっている。拠点を拡大するにも、新規店舗をオープンするにもICT環境を整備し、ビジネスに取り組みやすい状況を用意することが求められる。また、従業員のやる気を引き出し、能力を発揮させるためにもICT環境整備は必須だろう。ここでは、企業競争力強化に直結するICT環境のポイントについて整理して考えてみたい。
働き方にあった環境の選択と利用しやすい環境構築から
ICT環境の整備といっても、どこからアプローチすれば良いのかと考える方も多いだろう。まず着目すべきは従業員たちの働き方だ。本社部門であればオフィスワークが中心となるし、営業部門であれば社外での活動が多く、製造部門や物流部門であれば工場や倉庫の中で動きながら業務をこなすことになる。
オフィスワークであれば、1人1台のパソコンが必要になり、通信ネットワークも必要だ。営業担当者に対してはノートパソコンとWi-Fiルーターの組み合わせが便利だろうし、工場や倉庫であれば無線通信ネットワークであるWi-Fi環境と直感的に指などで操作できるタブレットが使いやすいといった使い分けが求められる。
さらに業務に支障を来さないようにするには、必要かつ十分な台数のパソコンやタブレットなどはもちろん、作業をするデスクやノートパソコンを守るためのインナーケース、ストレスなくWi-Fiが使える高速で安定したビジネスWi-Fiや通信障害を起こさないアクセスポイントの配備などを考慮すべきだろう。
そして、社員の働き方に合わせた通信環境構築と必要十分なICT機器の導入という2つをクリアした後は、こうしたICT環境からメリットを引き出すための3つのポイントについて考えてみたい。
DX推進、セキュリティ、サポートでICT環境のメリットを引き出す…
ICT環境を整備すると同時にトライしたいのが、DX推進による業務効率化とコスト削減だ。その第一歩としてお勧めしたいのはクラウドサービスの導入だ。クラウドサービスを導入するだけで、大きな効果が見込める。例えば、データの保存先を社内にあるパソコンやファイルサーバーからクラウドストレージに置き換える。誰もがどこからでも同じストレージにアクセスできるようになり、情報共有や社内ナレッジの活用が加速する。ファイルのやり取りや企画書のバージョン違いによるミスなども削減できて、業務効率化にもつながる。
クラウドベースの会計システムの導入も効果が大きい。これまでシステムに手入力していた経費精算のための領収書も、スマホで撮影してAI OCRで読み取らせることで入力コストが削減できる。しかも経理担当者が自宅からクラウドサービスにアクセスして修正や確認を行え、経営者はどこにいてもリアルタイムに業績を把握できるようになる。
次に考えたいのが重要な情報を守るためのセキュリティ対策だ。クラウドサービスは提供している事業者がセキュリティ対応をしているが、それだけでは十分ではない。メールによる標的型攻撃を受けてパソコンが悪意を持ったプログラムであるマルウエアに感染して、社内ネットワークに広がることもある。
データを暗号化して身代金を要求するランサムウエア攻撃も話題だが、サプライチェーンの脆弱性を狙う攻撃、モバイルデバイスを狙った攻撃、サーバー障害につながるDDoS攻撃など、情報セキュリティ上の脅威は数多くある。これらへの対策を考えておくことは事業継続性を高めることにつながる。
最後は、万が一のトラブルへの備えだ。きちんとICT環境を整備してもトラブルが発生して使えない状況に陥ることは、ビジネス面での機会損失を招き、企業としての信用の低下や、従業員のモチベーションの低下にもつながりかねない。しかし、デバイスやアプリケーション、ネットワークにトラブルが発生することはある。企業規模が小さく、人材が不足する中小企業では、こうしたトラブルに対応することは難しい。障害の原因究明にはスキルが必要だし、対応のノウハウの蓄積もないという企業もあるだろう。こうした場合は、サポート専門の外部専門家に委託することが、転ばぬ先のつえの役割を果たす。
ICTは、企業競争力に直結するビジネスの道具である。働き方に合わせたICT環境の選択、ストレスなく利用できる環境の整備、業務の効率化とコスト削減につながるDX推進、安心して利用できる情報セキュリティ対策、トラブルに備えたサポート体制の5つのポイントを押さえてICT環境の整備に取り組んでほしい。
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