ビジネスを加速させるワークスタイル(第15回)
似ているようで違う、法人向け光回線の選び方
公開日:2017.05.30
挨拶の大事さはどの会社も知っているが、長続きさせるのは難しい。では、明るい挨拶が長続きしている会社はどこが違うのか。その取り組みを取材すると、挨拶を定着させるポイントが見えてきた。第2回は、粘り強く賛同者を増やしていく手法で定着を図ったヤッホーブルーイングに話を聞いた。
ヤッホーブルーイング(長野県軽井沢町)は、「よなよなエール」などのユニークな製品で知られるビールメーカー。小規模醸造で個性的な味を生み出すクラフトビールが注目される先駆けとなり、最近は年率30~40%のペースで売り上げを伸ばす。その原動力は、ニックネームで呼び合い、何でも話し合える社員が生むフレッシュなアイデアだ。
しかし、井手直行社長が就任した2008年は地ビールブームが去って数年後。一時的に業績は上向いたが、就任直後から再び低迷が始まった。09年の売上高伸び率は2%、10年は4%にとどまった。
社内の雰囲気は暗く、井手社長が「おはよう」と呼びかけても、ほとんど挨拶は返ってこなかった。「1日を元気に過ごすためには、まず朝一番の挨拶が元気でなくてはいけない。売り上げ低迷で落ち込んでいる社員たちの気持ちを上向かせるにはまず挨拶をしよう」。そう考えた井手社長は自ら率先して社員たちに挨拶することにした。
出勤時に社員に会うと「おはようございます!」。退勤時には「お先に失礼します!」と見本を見せ続け、社員の前で話す機会があれば「挨拶は大事だよ。朝から元気になろうよ」と説き続けた。
これを続けるうち、1人、また1人と挨拶をしてくれる社員が現れた。井手社長の言葉に促されて挨拶をしてみて気持ち良さが分かった社員は、そのうれしさを周りに話したくなる。こうして周りの社員を挨拶するように促す連鎖が生まれていった。
井手社長が挨拶の浸透を途中で諦めなかったのは、他の場面でも同じ体験をしていたからだ。
例えば、始業前の朝礼。井手社長が就任した当時の朝礼は、業務連絡以外は会話がなく、多くの社員は下を向いたまま。まるで「お通夜のような朝礼」だと感じた。
それでも、朝礼で社員が雑談をしてコミュニケーションを深めたほうが、良いアイデアが出る環境が生まれると信じ、毎日朝礼の時間を設け続けた。
繁忙期には社員の中から「この忙しいのに、朝礼の時間は無駄です」という反発が出ることもあったという。しかし、井手社長は諦めずに朝礼で雑談をし合うことがどれだけ大切なのかを説明し続けた。「朝礼で集まってくだらない話をするのは一見無駄なようだけど、そういう話ができる関係でなければ仕事の場面でシビアな話ができなくなる。社内のいろいろな人と相互理解を深めて互いの距離を縮めると、良い仕事ができるようになるよ」
とにかく朝礼を続けるうち、1人、また1人と朝礼で雑談してくれる社員が出てきた。
この経験から、社員の反発が大きくてもとにかく諦めずに説明を続け、賛同者が現れるようになるまで待てば社内を変えられることを井手社長は学んだ。
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執筆=宮坂 賢一/原 武雄
フリーライター
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