急務!法対応(第6回)残業代ゼロの高プロ制度を使いこなせるか

人手不足対策 働き方改革 法・制度対応

公開日:2018.12.26

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 日本は海外に比べて労働生産性が低い。経済協力開発機構(OECD)加盟35カ国中、20位でしかない。政府もこの点を問題視した。生産性を高め国際競争力を上げるための試みが、2019年4月から施行される働き方改革関連法に組み込まれた。「高度プロフェッショナル制度(高プロ制度)」(特定高度専門業務・成果型労働制)である。

高プロ制度の概要

 本制度は、労働基準法第41条の2に新設された。ただ、同条の規定は複雑かつ曖昧で、一読しただけでは内容の正確な把握が難しい。そこで、制度の概要と趣旨について、簡単に見ておく。

 本制度を一文で述べれば、(1)高度な専門的知識等を必要とする一定の業務に従事する一定範囲の労働者について、(2)使用者が健康確保措置を講じることを要件として、(3)制度導入に係る労使委員会の決議を行政官庁(労働基準監督署)に届け出た場合に、(4)対象労働者本人の同意を得て、(5)労働基準法第4章で定める労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定の適用を除外する、というものである。

 つまり、(2)から(4)の厳格な要件の下、一定の業務に従事する一定範囲の労働者について、労働時間の規制などといった労基法の規定を適用しないとするものだ。

 このような制度が導入されたのは、時間ではなく成果で評価される働き方を希望する労働者のニーズに応え、その意欲や能力を十分に発揮できるようにするためである。ただ、この制度が適用されると、労働時間、休日、深夜の割増賃金などの労働者保護に関する規定が適用されなくなる。そのため、対象となる労働者は、職務の範囲が明確で一定の年収要件を満たす者とし、また一定の手続きや健康確保措置を講じることを条件としている。

中小企業にもメリットがある高プロ制度

 高プロ制度は、専門職を対象に、労働時間に関係なく成果によって賃金を決める制度だ。制度のアウトラインは決まっているものの、いまだ確定はしていない。詳細は厚生労働省の省令によって定められる。同省から素案が出されているので、それに沿って概要を見てみよう。

 高プロ制度の対象となるのは、「金融商品開発」「金融ディーラー」「アナリスト」「コンサルタント」「研究開発」など、高度な専門的知識を必要とし、その性質上、従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められる職種だ。ただ、これらの職種に当てはまる働き手がすべて対象となるわけではない。

 例えば金融商品開発では、金融工学などの専門知識を用いて新商品の開発をしている場合は対象となる。単にデータ入力を行っている場合は除外される。研究開発でも、日々の作業スケジュールが指示される業務は対象外となる。それぞれの業種で、高度に専門的な業務を行っている場合のみに対象は限定される。また、年収の面でもガイドラインが示される。年間平均給与額の3倍を上回る水準の給与が要件。目安となるのは年収1075万円だ。

 まとめると、上記の5業種に携わり、「高度に専門的な業務を行う年収1075万円以上の労働者」が対象となる。

 この条件を見ると、大企業の専門職が中心になるように思える。しかし、中小企業でも、新規事業の創出にはプロフェッショナルが必須だ。特に、研究開発の分野では、高度な専門職が成否の鍵を握る。中堅中小企業のマネジメント層も、決して見逃せない制度だ。

成果を出すために無制限に働けるわけではない…

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