警察庁の調べによると、日本の刑法犯認知件数は減少を続けている。2016年は100万件を下回り、99万6120件となった。2012年には140万件を超えたのを考えると、データ上では、この数年で治安のレベルが格段に向上している。ただ、減ったといっても年間99万件以上も発生している。備えは必要だ。
例えば2016年の侵入盗(空室への忍び込みによる窃盗)認知件数は7万6000件あまり。うち約半数が住宅対象だ。店舗、事務所、倉庫への侵入事件は、1日当たり約100件発生している。こうした職場の犯罪被害を防ぐ上で大きな弱点となるのが、営業時間外を無人化してしまうことだ。夜間や休日の店舗、事務所に侵入されれば、被害に気付かず、発見が遅れる可能性がある。
侵入盗の他にも、落書きやゴミの不法投棄、さらには店内での万引き対策など、職場で防犯が必要な領域は極めて多岐にわたる。経営者にとって、店舗、事務所、倉庫といった多様な職場を、こうした犯罪から守る取り組みは重要な課題だ。
犯罪に遭ってからでは遅い。まず、重要なのは犯罪を未然に防ぐことだ。そのためには、職場が防犯対策をしていると犯罪者に認知させるのが効果的である。防犯対策が手薄な施設は犯罪者からターゲットにされやすい。その施設が防犯対策をしていると分かれば手を出しにくいものである。
防犯対策のアピール…
具体的な防犯対策を考えてみよう。まず挙げられるのは出入り口に「暗がり」や「死角」を作らない。つまり、外部から出入り口がはっきりと見えるようにして、不審者がいたら通行人などが気付くようにしておくのだ。
犯人は、文字通り夜陰に紛れてターゲットに近づく。夜間用として人感センサーが付いたライトを出入り口に設置しておけば、「誰かに見られているかもしれない」という意識が生じ、侵入をある程度防げる。
第三者が不審者の存在を気付くようにするには、ピッキングしにくい鍵に替えたり、複数付けたりするのも有効だ。ピッキングに時間がかかれば、それだけ第三者の目に留まる可能性が高まる。
出入り口、もしくは侵入口となる恐れがある窓などに、監視カメラを設置するのも有効だ。カメラの“目”が常時監視して、記録しているのを示す。侵入者への警告になる。最近は技術の進歩により高画質、長時間録画が可能な製品が市販されている。用途や目的に見合った製品を比較検討してみよう。
監視カメラは出入り口だけでなく、施設内への設置も検討したい。万引きをはじめとする店内犯罪への対策だけでなく、侵入防止にもつながるからだ。侵入犯はなるべく滞在時間を減らすため、下調べに訪れ、金庫や価値の高い商品の所在、防犯システムの有無などを確認するケースも多い。そうした不審な動きをする人物がいないか確認できるようにしておけば、防犯的な価値が出る。
警備会社、カメラで防犯強化
こうした防犯対策を進める際、コストは無視できない要素だ。被害があるかどうか分からないのに、多額の費用を投じるのはよほど重要な施設以外は難しい。効果が高い防犯対策として、警備会社への依頼も考えられるが、防犯機器の購入・設置・レンタル料に加え、月々の料金が必要となる。こうした費用をかける価値があるかは経営判断となる。
監視カメラも、従来はそれなりに機器の価格が高かったため、気軽に導入するわけにはいかなかった。しかし、最近は、性能が向上しながら価格はかなり低下し、中小企業や個人事業者でも導入のハードルは下がっている。さまざまなタイプのカメラや録画機器を、多くの企業が取り扱っている。施設に合ったものを選ぼう。
ただ、ライトや監視カメラを設置して防犯対策を施し、それをアピールしても、犯罪に遭う可能性をまったく無くせるわけではないのも事実。それでも、犯罪に遭った際、監視カメラの映像は犯人の特定などの事件解決に役立つ。設置には大きな意味がある。
また、万一のリスクを考えると保険の活用も手だ。ただし、通常の店舗総合保険では、盗難補償は商品を補償範囲外にしているケースが多い。商品の盗難もカバーしたければ、特約を結ぶ必要があるので注意が必要だ。