あなたの会社はホームページ(自社Webサイト)をお持ちだろうか?インターネットの普及に伴い、規模を問わずかなりの企業がすでにホームページを立ち上げている。インターネットがビジネスに不可欠の存在になりつつある現在、ホームページがないと機会損失につながりかねない状況だ。
自社のホームページを立ち上げる目的にまず挙げられるのは、「会社の看板」としての情報発信だ。会社概要や事業内容を誰でも閲覧できるように公開することは、企業の存在を広く社会に知らしめる「広報」の役割を果たす。もちろん、商品や技術の紹介といった情報の発信も重要な役割を持つ。
次には、取引や販売の促進、販路開拓といった業績拡大に向けた活用がある。代表的なのはホームページ上で売買を行うことだが、新規顧客からの問い合わせや商談の受け付けといった機能も考えられる。
企業サイトに見られる「格差」
こうした目的を夢見てホームページを立ち上げても、必ずしも有効に活用できないケースは珍しくない。昨年ホームページを立ち上げたとある会社もそうした1社だった。
その会社は食品の製造・販売を手がける従業員8人の小規模企業者だ。これまで、自社サイトを設けていなかったが、業容拡大を機にホームページを構築することにした。社内にはITに詳しいスタッフはおらず、知り合いの制作会社に構築を依頼した。
開設後1年ほど経過したが、「ホームページを見て」という新規取引につながる問い合わせはゼロ。制作会社から届くレポートによると、アクセス数は多くて1日数件という寂しい状況だった。これでは広報目的すら果たせていないように思える。社長は「うちは既存の取引先が中心の商売だから、これでいい」と話すが、せっかく費用をかけてホームページを構築した意味はない状態だ。
サイトでは会社概要や商品紹介など、ごく一般的な企業サイトのスタイルで、大きな問題があったわけではない。しかし、内容に個性がないのも事実だった。同社は以前から、社長を筆頭として商品開発に熱心に取り組んできた。しかし、サイトではそれがまったく分からなかった。
さらに致命的なのはホームページ自体の活気の無さだった。要因は、開設したものの更新が滞り、新規コンテンツの追加がなかった。トップページには「サイト開設のお知らせ」が表示されたまま。開設しても放っておかれるサイトには誰も関心を持たない。
実はこのような状態の企業サイトはかなりある。こうならないためには、どうすればいいだろうか。まずは個性を打ち出し、経営者自身がサイトの開設・運用に関心を持ち、自社のアピールを真剣に考えることが不可欠だ。商品開発にかける意気込みや、その結果生み出されたものが分かるコンテンツを用意するとよい。
そしてしっかり更新する。新しい情報を常に掲載し、企業の今の姿を反映させるのがポイントだ。従来は、更新にある程度のITスキルが必要で、外注すればそれなりのコストが生じた。だからIT人材や予算に乏しい中小企業では、必ずしも気軽にはできなかった。
ホームページ構築サービスが続々登場…
日本の企業のほとんどは中小企業だ。それだけに「活気があり個性的なホームページをできるだけ低コストで実現したい」というニーズは大きかった。こうした中小企業の悩みに応えるべく、ホームページの構築・運用を手がける各事業者は多様なバリエーションを用意し、かなり選択肢が広がった。ある程度の費用をかければ、運用も委託することで自社の人的資源を投入しなくても済む。運用は自社で行い、ランニングコストを節約する方法もある。
一般的なホームページ構築には、掲載するコンテンツ(文章、画像など)の作成、デザイン、プログラミング(HTML、JavaScriptなど)、データを置いておくサーバーの手配、ドメイン(インターネット上の住所)登録の手続きといったさまざまな作業が必要だ。まずは一連の作業を行った後、サーバーにアップロードして公開する。その後、随時内容を更新し、管理を続ける。これが運用だ。どこまでを自社で行うか、あるいは専門の制作会社に任せるか。それによってコストは当然変わる。
ホームページで他社との差異化を図りたい企業や、人材不足で構築・運用が困難な企業には、経験と技術力を持つ制作会社がすべての工程を請け負う形が適する。テルウェル西日本が提供する「ホームページ制作 オリジナルプラン」は、通常のホームページ制作に加え、データベースとの連携による高度なコンテンツ作成や、開設後の運用についてもプロの視点から企画提案し、安心して使えるサイト構築をめざすサービスだ。
一方、「できる作業は自前で行い、少しでも費用を抑えたい」と考える場合は、あらかじめ用意されたデザインの中から選ぶやり方がある。決められたルールに従って文章や画像を組み込んで、いわば“自動的”にホームページを作るCMS(コンテンツ管理システム)を活用する方法だ。決められたルールでサイトを作成・更新することで、1からデザインを作る手間を省き、コストダウンを図ったサービスだ。デジタルステージの「BiNDクラウド」は、専門知識がなくても簡単に作成・更新作業が行える独自のCMSを採用し、低コスト化を実現している。
市販のソフトウエアを使う方法もある。ジャストシステムの「ホームページ・ビルダー21」は、1996年に登場したホームページ作成ソフトだ。文字や画像を貼り付けるだけでホームページが作れる手軽さが特長だが、最新版ではCMS(コンテンツ・マネジメント・システム)にも対応するなど高機能化が進んだ。ただし、こうしたソフトを使う場合には、サーバーやドメインの手配は自身で行う必要がある。
「可能な限り自前で作業を行い、費用を抑えつつ、それなりのサポートもしてほしい」と考える企業もあるだろう。WEBマーケティング総合研究所の「あきばれホームページ」は、最初の作成のほとんどを同社が実施し、運用・更新は自身で行うタイプ。構築前に専門コンサルタントがヒアリングを行い、最適なプランを提案するほか、作成作業中、そして開設後の更新に関する問い合わせにも、電話やメールで対応するサービスが特長だ。
ホームページの更新や運営に関しては、多様なサービスがあるので、必要に応じて活用したい。例えば、中小企業のホームページの中には、担当者が退職したなどの理由で更新や運営に支障が出るケースも珍しくない。そうした場合には、アビリティコンサルタントの「ホームページ運用サポート」のようなサービスでカバーできる。同サービスは他社で制作したホームページの運用サポートや改修などを請け負っている。 人的資源に乏しい中小企業では、ホームページの管理・運営を1人で担当しなくてはならないこともある。その結果、運営コストは節約できていても、担当者が忙し過ぎて、更新どころか、間違いの修正さえままならない。オールシステムの「クイックレスポンス」ではそんなときに、画像差し替えや誤字修正といった細かな更新を、1カ所単位のスポット料金で提供する。
まずはパッケージ化されたサービスでスタート
ホームページを“機能”させるためには、更新がキモだと述べた。だから自社のリテラシーや人的資源の余裕を見てサービスを判断すべきなのは言うまでもない。また、オリジナリティーを求めると、自由度の高いサービスを選ぶことになるが、それが必ずしも「見やすさ、分かりやすさ」につながらないこともある。凝っていたりオシャレだったりするのに、何がどこにあるのか非常に分かりづらかったり、何が言いたいのか分からないホームページになってしまえば意味がない。
であれば、中小企業の場合、まずはある程度出来上がったスキーム、パッケージングされたサービスを活用したほうが賢い選択とはいえないか。なおかつコンシェルジュのように、何かしら相談に乗ってくれるサービスが付帯していれば、素人には思いつかない有益なアドバイスをもらえるかもしれない。
近い将来、さらに多くの会社が自社のホームページを保有する時代が来るはずだ。しかし、その内容が陳腐では、誰も訪れない“ゴーストタウン”をさらす結果となるだろう。これからホームページを立ち上げる会社はもちろん、すでに運用中の会社も、自社のホームページを見直し、顧客のニーズに応える内容になっているか確認してみるのをお勧めする。自治体や商工団体では補助金制度などを設けるなど、中小企業のホームページ構築を支援していることも併せてお知らせしておきたい。
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