「聞いたことはあるけれどよく分からない」「IT関連の用語には気後れする」――。そんなIT初心者の社長も理解できるように、世間を騒がすIT用語を超絶簡単に解説する。今回のテーマは「UTM」だ。
「君のおかげでファイアウォール(第1回)、VPN(第2回)と何となく分かった気になったよ。要はいろんな情報セキュリティ対策が必要ということだろ」(社長)
「社長は理解が早くて素晴らしいですね」(総務兼IT担当者)
「で、具体的にはいくらかかるんだ? いろいろ買うと高いんだろ」
「実は、UTMなら安く済みそうなんですよ」
(社長、指で空にU、T、Mと書く)
「ああ! なるほど。それなら私らの世代でもよく知っているよ」
「そうでしたか。では話が早いです」
「外敵から守ってくれる、頼もしい存在だ」
「はい。情報セキュリティ対策を集中的に任せられるでしょう」
「しかし、3分間で決着できる問題なのかい?」
「え?? 何のことでしょう」
「君は何も分かっていないねえ、あのヒーローは3分間しか活動できないんだよ」
「まさか、UTMをUlTraManの略だと思われたんですか?! 地球の平和を守れても、企業のネットワークまで守れるかーい」
複数の情報セキュリティ機能を1つの機器で…
サイバー攻撃の脅威から社内ネットワークを守るには、何段階もの情報セキュリティ対策が求められます。とはいえ、いくつもの対策を個別に導入すると、コストも管理負担も大きくなってしまいがちです。そうならないために、複数の情報セキュリティ機能を1つの機器にまとめ、手間をかけないようにしたのがUTMです。
Q UTMとはどんなものですか
UTMは、Unified Threat Managementの略で、「統合脅威管理」と訳されます。異なる複数の情報セキュリティ機能が1つの機器に盛り込まれ、集中的に管理できます。
Q どんな情報セキュリティ対策ができますか
UTMは、基本的にインターネットと社内ネットワークの間に配置します。設置は簡単です。インターネットにつなげる通信機器(ルーターなど)に、LANケーブルでUTMをつなぎます。さらに、ハブと呼ばれるネットワークの中継機器を介して、社内の各種の情報機器をネットワークにつなぎます。これで社内ネットワークがUTMで守られるようになります。
UTM機器の中には多くの情報セキュリティ対策機能が入っており、インターネットからの通信内容をチェックするなど、安全な通信だけを通すフィルターのような役割を果たします。安全な通信は社内ネットワークに通しますが、ウイルスと思われる不審な通信は社内に入れないようにブロックします。
UTMに盛り込まれるさまざまな機能の例として、ファイアウォール、コンピューターウイルスを退治する「アンチウイルス」、迷惑メールを回避する「アンチスパム」、外部からの不正な侵入を防ぐ「IPS(不正侵入防御)」、インターネット経由の不適切なコンテンツを排除・遮断する「コンテンツフィルタリング」などの情報セキュリティソフトが盛り込まれています。1台のUTMを導入するだけで、こうした複数の情報セキュリティ対策が可能です。
Q 高価ではありませんか
情報セキュリティ対策ごとに複数の製品を導入しようとすると、それぞれのコストが積み重なりますが、UTMならば1つの機器で複数の情報セキュリティ対策に対応できます。複数の対策を導入するよりも、1台の機器で済むUTMのほうがコストを抑えられる可能性があります。また、1つの機器で複数の機能を集中的に管理できるUTMのほうが、手間がかからず人手にかけるコストの低減も期待できます。
Q 管理が大変ではありませんか
情報セキュリティ機能ごとに複数のハードウエアやソフトウエアを導入すると、それぞれを個別に管理する必要があります。例えば、機能ごとにそれを提供する事業者が違えば、操作の仕方や保守内容がそれぞれ異なります。その分、管理の手間が増えます。UTMのように1つの機器にまとまっていれば、操作の仕方も統一されていて、管理の手間も軽減するでしょう。保守契約も1本化できます。
Q 機器を購入しないで済む方法はありますか
事業者が提供しているクラウド型のUTMならば、自前で機器を購入しなくても、統合的な情報セキュリティ対策ができます。クラウドというのは、事業者が提供するサービスをネットワーク経由で利用できる仕組みです。情報セキュリティ機能の選択や設定は、パソコン画面上で行えます。
例えば、VPNとセットになったクラウド型UTMサービスもあります。UTMの機器を購入しなくても、サービスを契約するだけでUTMの機能を導入できます。運用もサービス提供事業者に丸ごと任せられるので、管理の負担はさらに軽減されます。
コストも手間もかけずに情報セキュリティ対策
「よし。UTMを導入すれば、情報セキュリティ対策の手間もコストも削減できそうだ」
「はい。社長にもUTMのメリットを理解いただけたようですね」
「では、UTMの導入は、君のほうで進めておいてくれたまえ。私は、そろそろ客先に出発しないといけないのでね。ショワ!」
「あ、社長。まだあのヒーローを引きずっているようですが……」