「経営と違ってITのことはよく分からない」。そんなIT初心者の社長にも理解できるようにITキーワードを解説する本連載。今回のテーマは、社長も無関心ではいられない「DDoS(ディードス)攻撃」だ。
「社長、インターネットのニュースを見ていたら、DDoS攻撃が増えているんですって。知っています?」(総務兼IT担当者)
「そうか、大相撲も非難が多くて大変だな。ドスコイ!で解決、というわけにはいかんか」(社長)
「違いますよ。大相撲のドスコイではなくて、サイバー攻撃ですよ」
「相撲は引いたらいかん。押して押して、攻撃するのみだ」
「相撲じゃなくてシステムの話ですよ。DDoS攻撃を受けると、システムがダウンしてビジネスができなくなってしまうんです」
「何? 商売ができなくなるだって。じゃ、ドぅスればいいんだ」
企業活動を妨害するDDoS攻撃…
企業活動を脅かすサイバー攻撃の中でも、以前からあってなかなか防げないのがDDoS攻撃です。企業のホームページなどを攻撃してビジネス活動を妨害します。
毎年、情報セキュリティの脅威の動向を発表している情報処理推進機構(IPA)セキュリティセンターの「情報セキュリティ10大脅威」でも、サービス妨害攻撃(DDoS)がランクインしています。大相撲の番付と違って、脅威のランクは喜ばしいことではありません。それだけ危ないのがDDoS攻撃です。
Q DDoS攻撃とは何ですか
複数のパソコンを乗っ取った攻撃者が、各地に分散した多数のパソコンを踏み台にして、企業のホームページ(Webシステム)などを一斉に攻撃します。大量のデータを集中的にシステムに送り付けて、システムをダウンさせます。
攻撃元が分散しているので、分散型サービス妨害と呼ばれています。どこから攻撃されているのか分かりにくいのが特徴です。一方、特定のパソコンから攻撃してサービスを妨害する単独型は「DoS(ドス)攻撃」と呼ばれています。
Q DDoS攻撃の影響は?
今や企業活動はネットワーク環境なしには成り立ちません。ホームページから製品情報を発信したり、取引先との受発注に利用したりと、ネットワーク環境はビジネスに不可欠です。例えば、DDoS攻撃でWebシステムがダウンすれば、システムを復旧するまでの間、インターネットを利用した商取引が停止します。経済的な損失も免れません。
Q 攻撃者の狙いは何ですか
DDoS攻撃の目的は攻撃者の主義主張を訴えたり、社会的な混乱を引き起こしたりする狙いがあるといわれています。例えば、2017年6月にウクライナに大規模なサイバー攻撃があり、政府系機関や金融機関のコンピューターの一部がダウンしたほか、チェルノブイリ原発周辺の放射線自動監視システムの一部が使えなくなったとの報道もあります。最近は、金銭目的で攻撃を仕掛けるケースも出ており、油断できない状況です。
「当社は攻撃者から狙われるようなことはしていない」という経営者もいるかもしれません。直接、攻撃対象にはならなくても、例えば社名が攻撃対象と似ていたり、攻撃者に関連会社と思われたりすると、関係がなくても攻撃される可能性があります。また、社内のパソコンが気付かないうちに攻撃の踏み台にされて、自社が攻撃元となる恐れもあるのです。どんな企業もDDoS攻撃と無関係とはいえません。
DDoS攻撃を完全に防ぐのは難しいのが現状です。ネットワークのセキュリティ対策はもちろん、万一、Webシステムがダウンしてもビジネスを継続できるようにバックアップシステムを用意しておく対策も効果的です。
人ごとではないDDoS攻撃
「DDoS攻撃がわが社にも、社会にも大きな脅威となるのは何となく理解できた。わが社も最近はネット事業が伸びているようだし、人ごととはいえないな」
「社長にそうおっしゃっていただけると、説明のしがいがありました」
「早速対策を考えてくれたまえ。今日中だ」
「そんな無茶な! DDoS攻撃の前に仕事の過負荷で僕がダウンしたら、ドぅスるんですか」