「経営のことならバッチリなんだけど、ITのことはサッパリ」というIT初心者の社長にも簡単に理解できるようにITキーワードを解説する本連載。今回のテーマはセキュリティ「パッチ」だ。
「社長、パッチを更新するようソフト会社から通知が来ています。社長のパソコンにもパッチを当ててもらえますか」(総務兼IT担当者)
「パッチだって? 君に言われなくてもパッチ(モモヒキ)をはいておるぞ。冬だけじゃなく夏も汗取りによいからな」
「そのパッチじゃありませんよ。パソコンのソフトの不具合を修正するパッチのことです。放っておくとウイルス感染の恐れもあるんです」
「はくパッチじゃなくて、ウイルスを防ぐパッチだって? 何だかややこしいな」
「だから、パッチを当てれば、セキュリティもバッチリなんです」
「そうか分かった、なるほどなるほど……パッチとかけて食当たりと解く」
「……その心は?」
「下にはく」
「社長、まったく分かっていないですね……」
セキュリティの“穴”を埋めるパッチ…
社内で利用されるパソコンには、ワープロや表計算などさまざまなソフトが入っています。ソフトを開発するときには見つからなかった不具合が発売後に生じ、セキュリティ上のリスクになることもあります。この不具合を修正するプログラムが「パッチ」です。
Q パッチとは何ですか
パッチとは「継ぎ当て」のことです。例えば、自転車のタイヤがパンクしたとき、チューブの穴を塞ぐために継ぎ当てる修理部品もパッチといいます。継ぎ当てが転じてIT分野では、パソコンの基本ソフト(OS)や業務ソフト(Officeなど)の不具合を修正するプログラムをパッチと呼びます。そして、修正(更新)プログラムの適用を「パッチを当てる」といいます。パッチを当てずに放っておくと、ウイルス感染などの被害を受ける恐れがあるのです。
Q ウイルス対策ソフトがあるのでパッチは不要ですよね
いいえ、必要です。パッチは基本ソフトや業務ソフトを修正するためのもので、ウイルス対策ソフトとは異なります。例えば、マイクロソフト社ではWindowsパソコンの基本ソフトの1つである「Windows 7」の更新プログラム(パッチ)を提供しています。2009年に提供開始されたWindows 7にいまだに不具合が見つかるのは、攻撃者がなんとかしてセキュリティ上の“穴”を見つけようとするからです。“穴”があれば、その不具合から攻撃を仕掛けられるのです。
もちろんウイルス対策ソフトも必要です。最新パッチを当てて“穴”を埋めるとともに、ウイルス対策ソフトやファイアウォールなどで攻撃を防ぎます。ちなみに、Windows 7は2020年1月に延長サポートが終了し、更新プログラムも提供されなくなるため、マイクロソフトでは早めの切り替えを推奨しています。
Q パッチの適用は面倒ではありませんか
パソコンを操作していると、プログラムの更新を促す通知が画面によく表示されます。手動で更新する場合、パソコン作業を中断して更新プログラムをダウンロードし、インストール後、再起動するといった手間が必要です。Windowsパソコンの場合、セキュリティの自動更新(Microsoft Update)が有効になっていれば、基本ソフト(Windows)と業務ソフト(Office)の更新プログラムが自動的にインストールされます。
また、業務ソフト(Office)などはクラウドサービスを利用する方法もあります。最新のバージョンやセキュリティ対策が適用されたクラウド上のソフトを利用でき、パッチを適用する負担が軽減されます。
ただし、自動更新もクラウドサービスも、すべてのソフトにパッチを当てられるわけではありません。後回しにせず小まめにパッチを当てる習慣を身に付けたいものです。
ついにセキュリティの必要性に目覚める
「社長、パッチを当てないとセキュリティが危なくなることを理解していただけましたか」
「パッチがそんなに大切だとは知らなかった。何だか、“目からウロコ”の話だった」
「社長も、これでセキュリティの必要性に目覚めるといいんですが」
「目覚めたぞ」
「ホントですか、ありがとうございます!」
「いやなに、昼のカツ丼大盛りのせいで眠たかったのだが、今の君の話で完全に目が覚めたよ。パッチだけに、パッチリとね」