会議や稟議書などで次から次へと出てくるIT用語。意思決定や決裁のために覚えようとしても、なかなか覚えきれない……。そんなIT初心者の社長にも、分かりやすく理解できるようにITキーワードを解説する本連載。今回は、パソコン購入の決裁でも登場するかもしれないライフサイクルだ。
「社長、会社で使っているパソコンは導入から5年が過ぎました。ライフサイクルを考えてもそろそろリプレースしたほうがよいと思います」(総務兼IT担当者)
「何、ライフスタイルがどうしたって。ワシは早寝早起きと毎日の散歩が健康の秘けつじゃ。早朝散歩はいいぞ」(社長)
「申し訳ありません。社長のライフスタイルはどうでもいいんです。ライフサイクルはパソコンなど製品の“一生”を表す言葉です」
「パソコンを一生使うというということか。分からん。一生懸命、説明しなさい」
製品の“一生”を表すライフサイクル
ライフサイクルとは、製品・サービスの循環を示す言葉です。例えばパソコンメーカーの場合、製品の企画・設計から原材料の調達、生産、販売、サポート、生産終了まで、市場ニーズや技術革新などを見極めながら製品のライフサイクルを考えます。
一方、ユーザー側はパソコンの購入・調達から初期設定、利用・運用・トラブル対応、利用終了後の回収・廃棄まで、製品を安心して利用できる状態をライフサイクルとして捉えます。製品のライフサイクル全体を適切に管理するライフサイクルマネジメントという言葉もあります。
パソコンのライフサイクルのイメージ
Q パソコンのライフサイクルを重要視する理由は何でしょうか…
出社と在宅勤務を組み合わせたハイブリッドワークが広がるなど、働き方が多様化し、パソコンの利用環境が変化しています。パソコンを利用する場所もオフィス、自宅、外出先と幅広くなっています。
それぞれの環境でセキュリティを確保しながらパソコンの使い勝手を高めるためには、初期設定だけでなくきめ細かな運用が欠かせません。利用開始後の問い合わせや、故障したパソコンの交換といったトラブル対応を含め、パソコンの購入から廃棄までのライフサイクルを考え、管理する必要があります。
Q パソコンの他にもライフサイクル管理は必要ですか
会社支給のタブレットやスマホなどのIT機器でもライフサイクル管理が必要です。例えばタブレットやスマホを新機種にリプレースする際、それまで使っていた端末を回収・廃棄することになります。その際、ライフサイクル管理に基づいてタブレットやスマホの保存データを完全に消去しなければなりません。ライフサイクル管理にはセキュリティ対策の観点が不可欠です。
Q ライフサイクルを考える上で何か注意事項はありますか
さまざまな事業者がライフサイクルに関連するサービスを提供しています。自社に合ったサービスを選ぶといいでしょう。例えばIT資産を自社で持ちたくない場合、パソコンを月額払いで調達、利用できるサービスもあります。また、クラウドストレージを利用するサービスであれば、リプレース時の新規パソコンへのデータ移行が簡単です。パソコンにデータを保存しないのでセキュリティ対策にも効果的です。自社でパソコンをどのように使い、どのように管理すればいいのかをITサービス事業者に相談するといいでしょう。
ライフサイクルに合わせたリプレースを
「社長、ライフサイクルの意味を理解していただけましたか」(総務兼IT担当者)
「一生懸命、会社のために働いてきたパソコンがいずれ廃棄されるなんて、ライフサイクルはわが身のような思いだ。おんおん(泣)」(社長)
「社長はわが社のオーナーですから廃棄されることはありません。そんな泣き言でごまかして、パソコンのリプレースをしないつもりではないですか」
「そういえば最近ワシのパソコンの画面がすぐに固まるんじゃよ。この機会に君のパソコンとリプレースしてくれ」
「いや、リプレースはしません!はっ、しまった……」