若手の社員にとって当たり前の言葉でも、「それ、何のこと」とはなかなか切り出せない、難解なIT用語。そんなIT初心者の社長にも、分かりやすく理解できるようにITキーワードを解説する本連載。今回は、便利なものの、セキュリティリスクにもなりかねない「Cookie」(クッキー)だ。
「社長、Cookieの設定を調べたいので、パソコンを見せてください」(総務兼IT担当者)
「何、クッキー?昨日、取引先の社長からいただいたクッキーのこと、何で君が知っているんだ。さては、机に隠しておいたのを見たんだな」(社長)
「社長が好きなお菓子のクッキーではありません。パソコンやスマホのWebブラウザーに保存される情報のことです。管理を怠るとIDやパスワードなどの個人情報が悪用されるリスクもあるんです」
「そんなに危ないものがなぜパソコンに保存されているんだ。そのCookieとやら、ワシにも分かるように説明しなさい」
便利だけど油断できないCookie
Webサイトを閲覧していると「Cookieの取得に同意しますか」といった質問がパソコンやスマホの画面に表示されることがあります。Cookieは、Webサーバーと連携してWebサイトの閲覧時にブラウザー(Microsoft EdgeやGoogle Chromeなど)に保存される情報のこと。例えばユーザーのID、パスワードや閲覧日時、閲覧回数などが保存されます。同じWebサイトへ再び訪問した際、ブラウザーに保存された情報がWebサーバーに送信され、その情報に基づいたWebページが表示されます。Cookieは閲覧時の利便性を高める一方、パソコンの共用や紛失によって個人情報が悪用される危険性もあり、注意が必要です。
Cookieのイメージ
Q Cookieの利点は何ですか…
例えば、会員登録が必要なWebサイトを閲覧する際、Cookieが有効になっていればID情報が端末に保存されるので、アクセスの度にID情報を入力することなく閲覧できます。また、ECサイトで商品を買い物かごに入れた状態でいったんそのサイトを離れ、同じサイトを再訪すると、WebサーバーがCookie情報を参照して買い物かごの内容を表示します。オンラインショッピングをスムーズに続けられることも、利点の一例です。
Q Cookieの課題はありますか
ユーザーが関心のある商品・サービスの広告をパソコンやスマホに表示するため、Cookieで取得された情報がマーケティングに使われることもあります。こうした表示を便利に感じる人がいる一方、その人の嗜好(しこう)や閲覧情報などのプライバシー侵害と捉える人もいます。そこで2022年4月に施行された改正個人情報保護法や、2023年6月に施行された改正電気通信事業法によって、Cookieでの個人情報取得や保存された個人情報の利用に対する規制が設けられました。
Q Cookie情報を扱うための注意点は何でしょうか
CookieにはID、パスワードの他にも、ECサイトで入力した発送先の住所や電話番号などの個人情報が保存されることもあります。万が一端末を紛失したり盗難に遭ったりした場合、Cookieに保存された情報が不正に利用される危険性があります。
また、パソコンの買い替えなどで端末を廃棄する際には、Cookie情報の削除が必須です。企業のパソコンの調達から廃棄まで一貫して任せられるサービスを利用するとセキュリティリスクの低減にもつながります。IT事業者に相談するとよいでしょう。
ごまかそうと思っても甘くはない?!
「社長、Cookieのことを分かっていただけましたか。もう、お菓子のクッキーと勘違いしないでくださいね」(総務兼IT担当者)
「君がワシのパソコンのCookieを調べれば、どのサイトを閲覧していたかも分かるというわけだな」(社長)
「そうです。業務時間中に温泉旅館の予約サイトを見ていたことも、一目瞭然です」
「あれは今度社員旅行で行こうと思って見ていただけじゃ。日頃の疲れを癒やすには温泉が一番だろう」
「社員旅行はこの前行ったばかりじゃないですか。社長、そんな甘い言葉でごまかすのはやめてください」
「くぅ……お菓子と違って君は甘くはないようじゃな」