何度聞いてもうまく理解できない、難解なIT用語。そんな困りごとを抱えたIT初心者の社長にも、分かりやすく理解できるようにITキーワードを解説する本連載。今回は漢字、それもきっと聞いたことのある「解像度」だ。
「社長、今後の業務効率アップのためにも解像度の高いスキャナーに買い換えたいので、決裁していただけませんか」(総務兼IT担当者)
「何、解像度だって。ワシの趣味は写真を撮ることじゃが、この間、解像度の高いデジタルカメラを買ったばかりだ。孫の写真もかわいく撮れる。今度、見せてやるぞ」(社長)。
「ありがとうございます!楽しみにしていま…、おっと話がそれるところだった。社長、違うんです。写真の話ではなくて、スキャナーの話題です。解像度の精度がOCR(光学的文字認識)にも関係し、業務効率にも影響するんです」
「解像度がOCRや業務効率とどう関係があるんだ。はっきり説明しなさい」
解像度の数値が大きいほど高精細
解像度とはデジタルデータ画像の密度を数値で表す言葉です。デジタルカメラで撮影した写真(画像データ)の解像度もその1つ。1インチ四方の範囲の中にどれだけ画像の点(ドット)が並んでいるのか、dpi(dot per inch)という単位で示します。例えば、100dpiは1インチの範囲に100個のドットが並んでおり、この数値が大きいほど高精細な画像になります。ただし、解像度が高くなるとスキャナーの処理時間がかかったり、保存するデータ量が大きくなったりするため、用途に応じた適切な解像度にするといいでしょう。
画像は複数のドットで構成されている
Q スキャナーと解像度は関係あるのですか。…
スキャナーは紙の帳票や写真を読み込んで画像データ(PDF、JPEGなど)にします。解像度が高いと高精細、つまり見た目で鮮明な画像になりますが、その分、保存するデータ量も大きくなります。近年はペーパーレス化や電子帳簿保存法への対応などで書類を電子化する機会が増えていることから、それらのデータを保存するストレージ容量の拡張が必要になる場合もあります。
Q スキャナーを利用する際の注意点は何でしょうか。
文書をスキャニングする際の解像度が低すぎると、出力された画像データが不鮮明で読み取れないことがあります。そこで、スキャニングする画像データの用途に応じた解像度設定が必要です。例えば、書類をPDF化して部署内で閲覧するのであれば300dpi程度、OCRで処理するのであれば400dpi程度とされています。画像データのサイズが大きくなりすぎるとOCRツールが処理できない場合もあるので注意しましょう。
Q OCRの使い方で留意することはありますか。
OCRは、スキャナーで読み取った画像データ(PDFファイルなど)の文字情報や、FAX文書を電子データ化します。その際、画像データの解像度が低いと文字がかすれて読み取りにくいことがあります。あるいは、手書き文字がくせ字だったり、文字が訂正されたりしていると、判別されない場合もあります。そこで、AIを使って高精度の文字認識が可能なクラウド型のAI OCRサービスがさまざまな事業者から提供されています。OCRで出力したデータの有効活用、業務効率化を含め、専門知識が豊富なIT事業者に相談するといいでしょう。
「社長、解像度の高いスキャナーに買い換える理由をきちんと理解していただけましたか。もう、デジタルカメラの解像度の自慢はしないでくださいね」(総務兼IT担当者)
「それより、OCRは文字がきれいでないと読み取りが難しいのか。君の手書き文字は、長年一緒にいるワシでも読めないことがあるからな」(社長)
「まさか私が出したスキャナー購入の稟議(りんぎ)書が読めないとか言って、決裁しないつもりですか」
「君のくせ字は読めないが、ワシの腹を読むのはうまいな」