IT予算の稟議(りんぎ)・決裁にも関わるIT用語だが、なかなかなじめない。そんなIT初心者の社長にも、分かりやすく理解できるようにITキーワードを解説する本連載。今回は稟議書にも記載されているかもしれない「アクセスポイント」だ。
「社長、ハイブリッドワークから内勤に移行する社員も増え、オフィスでインターネットに接続するパソコンが増加しました。それにより通信速度が遅くなったので、アクセスポイントを新しい機種に変更してよろしいでしょうか」(総務兼IT担当者)
「サクセスポイント?成功するポイントのため方でもあるのか。私はこの前、ポイントでゴルフボールを交換したぞ」(社長)。
「サクセスでなくて、“アクセス”です。それに買い物でためるポイントでなく、オフィスで利用しているWi-Fi(無線LAN)に接続する機器のことです」
「Wi-Fiなら私も使っているが、アクセスポイントのことはよく知らないな。詳しく説明してくれないか?」
Wi-Fiに接続するアクセスポイント
今回紹介するアクセスポイントは、オフィスや店舗、自宅などに設置するWi-Fiの親機をさします。会社のフロアや廊下の天井、壁に設置された弁当箱サイズの機器を見たことがある人もいると思います。
アクセスポイントは有線ネットワークと端末の橋渡し的存在である
Q アクセスポイントの役割は何でしょうか。…
アクセスポイントは、ノートパソコンやタブレット、スマートフォンなどの端末をインターネットと無線でつなぐ橋渡しの役割を果たします。有線LAN(スイッチ)を介して社内ネットワークに接続したり、ルーターを介してインターネットに接続します。従って、アクセスポイントの数が多いほど、無線接続が可能な端末の台数が増えたり、無線の範囲が拡大することが期待できます。
小規模な事業所ではルーターとアクセスポイントが一体化したWi-Fiルーターが導入されることが多いですが、一度に接続できる端末の台数や電波を飛ばせる範囲に制約があります。そのため、一定以上の規模の企業では、ルーターとアクセスポイントを別々に導入するケースがほとんどです。
Q アクセスポイントはどのように選べばよいですか。
オフィスの場合、業務開始時などアクセスポイントにアクセスが集中する時間帯は通信速度が低下することがあります。また、テレワークやハイブリッドワークから出社勤務に戻す企業などでは接続台数が増えることも考えられます。そこで、一度に接続可能な台数や通信速度で機器を選ぶのがいいでしょう。高速無線通信規格のWi-Fi6に対応した機器であれば、大容量の動画ダウンロードや大人数のオンライン会議などでも快適に通信可能。同時接続台数が増えても通信遅延が起こりにくいのが特徴です。
Q アクセスポイント導入・利用の注意点はありますか。
まず、オフィスに何台のアクセスポイントが必要かの検討から始めます。Wi-Fiを快適に利用できる目安は、端末からアクセスポイントまでの距離が25m以内とされています。オフィスのフロア面積が広くユーザー数も多い場合、複数台のアクセスポイントが必要になる場合もあります。
また、複数台のアクセスポイントを設置する場合、電波の干渉を避けるように設置場所の事前調査も必要です。この他、セキュリティ対策やアクセスポイントのトラブル対応などを含め、ビジネス向けWi-Fiに精通した事業者に相談することをお勧めします。
「社長、アクセスポイントのことを理解していただけましたか。いい機会ですので、Wi-Fi6対応の機器に変えてみてはいかがでしょう」(総務兼IT担当者)
「確かにWi-Fiの通信環境が快適になれば、動画サイトのゴルフレッスンも遠慮なく閲覧できそうだな」(社長)
「いくら快適に通信できるといっても、勤務時間中に業務と関係のないサイトのアクセスは禁物ですよ。セキュリティだけでなく、ガバナンスの観点からも問題です」
「なんと!私が苦手とするガバナンスを持ち出すとは…この1件、君の点数(ポイント)稼ぎになったな」